長野県大町市を中心に開催された「北アルプス山麓グランフォンド」。レポートの後篇は「山麓グランフォンド」の真髄を見せつけてくれる本格的な山岳地帯へと入っていきます。(前篇はこちら。)



本格的な山岳がいくつも現れる北アルプス山麓グランフォンド本格的な山岳がいくつも現れる北アルプス山麓グランフォンド
さて、「ぽかぽかランド美麻」を出るとすぐに登りが始まる。というより、エイドステーションの裏が既に山である。次のエイドステーションとなる美麻支所までは4km。たったの4kmだが、平均斜度7%の登り区間で、体感としては立派な峠だ。

ヒルクライムレースに出てくるような本格的な勾配の峠へと挑んでいく参加者たち。速いライダーであれば15分程度だろうか。勾配はきついものの距離が短いため、初心者でも40分程度頑張ればピークにある美麻支所エイドへとたどり着くことができる。

いくつものダイナミックなヒルクライムをこなしていくいくつものダイナミックなヒルクライムをこなしていく 地元のおばあちゃんが応援してくれる地元のおばあちゃんが応援してくれる

次々と参加者が美麻支所へ駆けこんでくる次々と参加者が美麻支所へ駆けこんでくる 美麻支所のエイドステーションでは漬物バイキングが美麻支所のエイドステーションでは漬物バイキングが

色鮮やかなプチトマトが並ぶ色鮮やかなプチトマトが並ぶ 山盛りになった漬物と野菜スティック山盛りになった漬物と野菜スティック


美麻支所エイドステーションでは名産の野菜や漬物のバイキングとおやきが用意されている。9月の信州とはいえ、まだまだ残暑は厳しいもの。汗が噴き出てくるくらいの気温のなか、ここまでたどり着いた身体は細胞レベルで塩気のきいた漬物を欲している。

列に並ぶ参加者たちの紙皿には山盛りに漬物と野菜スティックが盛りつけられ、流れ出たミネラルを補給していく。おやきも3種類が用意され、おかずが欲しい方には野沢菜と茄子、糖分を補給したい方向けにはあんこという、至れり尽くせりなおもてなし。

蕎麦畑が一面に広がる開けたスポット蕎麦畑が一面に広がる開けたスポット 途中には給水所も設置されていた途中には給水所も設置されていた もうひと踏ん張りですよもうひと踏ん張りですよ


美麻支所を出発しても、ヒルクライム区間はまだまだ続く。尾根筋沿いを下ってはまた登り、下っては登りを繰り返す。途中には給水地点も設けられており、脱水症状にならないような配慮も。実際、自動販売機なども見当たらないので、快晴の今日こそこの給水所はありがたかった。

鬱蒼と茂る森の中を走る涼やかな区間もあれば、一面に白い花を付ける蕎麦畑に囲まれて走る解放感に溢れた区間も。勾配の変化もダイナミックだが、風景の変化はそれ以上にダイナミックだ。車もめったに来ないし、まさに自転車天国。

そんな快適な山岳ライドを楽しみながら走っていくと、大峰高原エイドステーションが現れる。つやつやしたおにぎりにたっぷりのねぎ味噌ともろみ味噌をあわせていただき、激しいアップダウンで消費したエネルギーを一気に補給する。

おにぎりを握ってくれた女の子おにぎりを握ってくれた女の子 スイカとリンゴが並べられていたスイカとリンゴが並べられていた

おにぎりに、こんな風に味噌を付けていただきますおにぎりに、こんな風に味噌を付けていただきます ねぎ味噌ともろみ味噌の2種類が用意されたねぎ味噌ともろみ味噌の2種類が用意された


ほかにもスイカやリンゴなど、ジューシーなフルーツがもりだくさんの大峰高原エイド。糖分と水分が欠乏気味な後半戦へと向けて、これだけ補給ができれば心強い。エイドの先は大峰高原を下っていく。途中には樹齢250年を誇る「大峰高原七色大カエデ」が見守る中、一気に400mほども標高を下げていく。

高瀬川沿いの河川敷道路を一気に南下し、安曇追分駅のあたりまで走ってから、反転北上。重そうに頭を垂れる稲穂がぎっしりと実った収穫直前の田圃に挟まれて走っていく。風が吹き、揺らされる稲穂はまるで黄金の波。その波に乗りながら目指すは安曇野ちひろ公園だ。

高瀬川沿いの河川敷道路を行く高瀬川沿いの河川敷道路を行く 青空の下、大峰高原を走り抜ける青空の下、大峰高原を走り抜ける

北アルプスを望みながら走っていく北アルプスを望みながら走っていく
エイドステーションが展開された安曇野ちひろ公園。この一角には、絵本作家として著名ないわさきちひろを中心に、世界中の絵本画家の作品を展示している安曇野ちひろ美術館もある。高瀬川の支流である乳川(ちがわ)沿いに広がる芝生の公園は、ゴロゴロ寝そべっていたらそれだけで一日が終わるだろうな、と予感させるほど気持ち良さそうな風景。

なんとかそんなあまーい誘惑を振り切ってエイドのテントに近づくと、別の甘い誘惑が。こちらの松川エイドでは、信州が誇る葡萄である「ナガノパープル」、そして林檎の「サンつがる」、そしてブルーベリーがお出迎え。今年はフルーツの実りが早かったとのことで、「ナガノパープル」の提供の裏には担当者の情熱があるんだとか。

乳川沿いの裏道を走っていく乳川沿いの裏道を走っていく ちひろ公園の一角に設置された松川エイドちひろ公園の一角に設置された松川エイド

こちらはナガノパープルこちらはナガノパープル たくさん用意されていたサンつがるたくさん用意されていたサンつがる


ナガノパープルとは大粒の種なし葡萄で、皮まで食べられるという長野のオリジナル品種。食べやすく、手も汚さないし、しかもボリュームもたっぷりで美味しいという、まさに自転車イベントの補給食のために生まれてきたのでは?と思ってしまうほど、なんだか出来すぎな品種なのだ。

そんなフルーツを堪能したら、後は鹿島槍スポーツヴィレッジへと北上していく。ここから最終エイドとなる大町温泉郷までは緩い登り基調。とはいえ、大峰高原のアップダウンにくらべれば、平坦だといっても差支えはないほど。

交通量の少ない農道をつないで走っていき、100体の石仏がならぶ観音寺の参道を過ぎ、高瀬川を渡る大出橋を越え、7年に1度公開される秘仏「大姥尊像」が祀られる西正院大姥堂のあるT字路を右折したら、大町温泉郷はすぐそこだ。

タンデムライダーも何人かいましたタンデムライダーも何人かいました 石仏が見守る観音寺の参道石仏が見守る観音寺の参道

西正院を右折していく西正院を右折していく 最後の大町エイドで記念撮影最後の大町エイドで記念撮影

大町名物「おざんざ」大町名物「おざんざ」 地元の有名な洋菓子店アンマリーレ地元の有名な洋菓子店アンマリーレ


大町温泉郷エイドでは、この地方特有の名物、納豆菌で練ったうどん「おざんざ」、そして大町の洋菓子店アンマリーレのカップドーナツを頂くことに。最後のエイドでもしっかりとしたおもてなしが用意されているのは嬉しい限り。

ここからは鹿島槍スポーツヴィレッジまでのヒルクライム。ニホンザルがうろついていたりもする325号線の林道をえっちらおっちらと登っていく。途中には大物トラウトが釣れることで有名な管理釣り場、鹿島槍ガーデンで多くの釣り人が竿を振っているのを眺めたりしながら、ペダルに力を込める。

そば畑の中を一路ゴールへ向けて走っていくそば畑の中を一路ゴールへ向けて走っていく 最後の登り、あとひと踏ん張りですよ最後の登り、あとひと踏ん張りですよ

120km、無事にゴールしました!120km、無事にゴールしました!
325号を右折し、ゴール地点までが最後の踏ん張りどころ。約2km、平均勾配7%のヒルクライムがここまで走ってきたライダーたちに襲いかかる。九十九折れになる道を蛇行したり、押し歩いたりとそれぞれがなんとか登りきれば、感動のゴールだ。

心配された天気も最後まで晴れ、(厳密にいえば、最後尾でゴールした人は少し通り雨に降られる事なったが)北アルプスの山々の威容をその目で見、脚で感じることができた今年の北アルプス山麓グランフォンド。走り応えのあるコース、おもてなしの心が詰まったエイドステーションと、人気が出ない理由がない、そんな初秋の極上ライドを味わってみてほしい。



「来年は1000人参加の大会へ」西沢勇人さん(大会実行委員)

北アルプス山麓グランフォンドの大会実行委員、西沢勇人さん北アルプス山麓グランフォンドの大会実行委員、西沢勇人さん 一番の魅力である北アルプスの絶景を見ていただくことが出来て、嬉しく思っています。ここ数年、雨や曇りでアルプスの姿を見ていただくことができていなかったので、本当に良かったですね。開催日を変えては?という声も頂いているのですが、蕎麦畑と収穫直前の田圃が一度に見ることができるこの時期にぜひ皆さんに走っていただきたいんです。

また、安全面については昨年よりも強化していまして、サポートライダーやサポートカーを増員しました。トラブルへの対応速度が上がって、より安心して走れるような体制を築いていくことができたと思っています。来年は1,000人規模の大会となることを目指していきますので、ぜひ皆さんお誘いあわせのうえ来年もご参加ください。

text&photo:Naoki.YASUOKA

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