全長221.5kmコースの最後に待っていた急勾配の登りフィニッシュ。タイミング良く抜け出したカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)が、世界チャンピオンとの一騎打ちで勝利した。ステージ2連勝のベタンクールは総合首位に立っている。



メイン集団をコントロールするチームスカイメイン集団をコントロールするチームスカイ photo:Tim de Waele


パリ〜ニース2014第6ステージパリ〜ニース2014第6ステージ image:A.S.O.地中海が近づいてきた。フランスの南端に位置するプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏を駆ける221.5kmの長い一日。前半からアップダウンの連続で、残り60kmから立て続けに2級、3級、1級の山岳が登場する。締めくくりは平均勾配が10%近い2級山岳の山頂フィニッシュだ。

逃げグループに合流したトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)逃げグループに合流したトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) photo:Tim de Waele総合争いにおけるこの重要な山岳ステージでイェンス・ケウケレール(ベルギー、オリカ・グリーンエッジ)やアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール)を含む10名が先行する。総合上位の選手も含まれたため、チームスカイはこの逃げに大きなリードを与えない。タイム差は3分前後を推移しながら後半の山岳地帯へと向かう。

先頭グループから飛び出して単独で逃げるシルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)先頭グループから飛び出して単独で逃げるシルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング) photo:Tim de Waeleやがて後半最初の難所である2級山岳テュイリエール峠に差し掛かると、メイン集団からシルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)とトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)がアタックを仕掛け、そのまま先頭に合流。シャヴァネルが山岳賞ジャージキープのために動いた。

テクニカルな下りで飛び出したドリス・デヴェナインス(ベルギー、ジャイアント・シマノ)とダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)テクニカルな下りで飛び出したドリス・デヴェナインス(ベルギー、ジャイアント・シマノ)とダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール) photo:Tim de Waele逃げグループから飛び出す積極的な走りで、シャヴァネルは合計8ポイント加算に成功。しかしゴール19km手前の1級山岳ブリガイユ峠(登坂距離8.2km/平均勾配5.9%)でシャヴァネルは吸収される。ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)を含め、多くのスプリンターがここで脱落した。

スプリントを繰り広げるカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)とルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)スプリントを繰り広げるカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)とルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) photo:Tim de Waeleチームスカイとアスタナがペースを作るメイン集団からは、ホセ・セルパ(コロンビア、ランプレ・メリダ)やアレクシ・ヴュイエルモーズ(フランス、AG2Rラモンディアール)が立て続けにアタックを仕掛けたが決まらない。弟アンディが早々に脱落する中、兄のフランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)もアタックに加わった。

登りスプリントを制したカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)登りスプリントを制したカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waele決定的なアタックを欠いたまま1級山岳ブリガイユ峠の頂上をクリアすると、テクニカルな下りでドリス・デヴェナインス(ベルギー、ジャイアント・シマノ)とダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)が先行。遅れてヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)も抜群のダウンヒル能力を活かしてアタックしたが決まらない。登りと下りで35名ほどに絞られた集団が、AG2Rラモンディアールに率いられる形で最後の2級山岳に差し掛かった。

リーダージャージを獲得したカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)リーダージャージを獲得したカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waele残り1.5kmから始まる高低差129mの2級山岳。この急勾配の登りでヴュイエルモーズやアルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)らがアタックを仕掛けると、ニーバリが力なく遅れて行く。トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)のアタックに、リーダージャージのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)も遅れ気味に。

残り1kmを切って先行したのはヴュイエルモーズとスラグテルの2人。しかし先頭を走るヴュイエルモーズがヘアピンカーブで落車し、すぐ後ろを走っていたスラグテルがチェーン脱落でストップ。トラブルに見舞われたこの2人に代わって、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)が先頭に立つ。これをベタンクールが追撃した。

世界チャンピオンのコスタと、前日にステージ優勝を飾ったばかりのベタンクールによるスプリント。軽量なベタンクールのパンチ力に、アルカンシェルが敗れ去った。

ベタンクールが2日連続ステージ優勝。ボーナスタイム10秒を獲得したベタンクールは、3秒差のステージ4位に入ったトーマスから総合リーダーの座を同時に奪うことに成功した。第6ステージを終えて、ベタンクールはトーマスを8秒、コスタを18秒引き離している。

「距離は長かったものの、今日のフィニッシュは自分向きだった。この先のステージでトーマスが危険な存在になると思うけど、AG2Rラモンディアールの強力なサポートで総合首位を守りきれると思う」と、自信満々のコメントを残すベタンクール。キンタナやウラン、エナオモントーヤ、アレドンドらとともに、コロンビアを代表する選手として、グランツールでも注目の存在だ。

「ここ数年でコロンビア出身ライダーが、出身地から遠く離れたヨーロッパで成績を出している。自分は野心溢れるライダーだ。初出場のツール・ド・フランスでは様々な困難に出会うことになると思うけど、昨年ジロでそうしたように、しっかりと準備して挑みたい」。

選手コメントはレース公式サイトより。



パリ〜ニース2014第6ステージ結果
1位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
3位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
5位 アルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)
6位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)
7位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
8位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)
9位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)
10位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)
5h12'11"

+03"


+07"



+11"



個人総合成績
1位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)
2位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
3位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
4位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
6位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
7位 アルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)
8位 ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
9位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)
10位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)
27h04'48"
+08"
+18"
+22"
+24"
+25"
+27"
+29"
+31"



ポイント賞
ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)

山岳賞
シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)

ヤングライダー賞
カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)

チーム総合成績
モビスター

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele