3月24日から30日までの1週間、スペイン北東部のカタルーニャ地方で第94回ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(UCIワールドツアー)が開催される。別府史之(トレックファクトリーレーシング)の他、グランツールを狙うオールラウンダーがこぞって出場するステージレースの見どころをチェックしておこう。



2つの山頂フィニッシュが第94代チャンピオンを導き出す

1911年に第1回大会が開催されたボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(カタルーニャ一周)は、世界でも有数の歴史を持つ1週間のステージレース。その歴史は、ブエルタ・ア・エスパーニャ(1935年〜)よりも古く、ツール・ド・フランス(1903年〜)とジロ・デ・イタリア(1909年〜)に次ぐ伝統を誇る。

カタルーニャ地方で開催されるステージレース「ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ」カタルーニャ地方で開催されるステージレース「ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ」 photo:Kei Tsuji
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2014第3ステージボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2014第3ステージ image:www.voltacatalunya.catカタルーニャは、2009年までジロ・デ・イタリアと同時期の5月下旬〜6月上旬に開催され、ツール・ド・フランスへの準備レースとして重宝された。しかしツアー・オブ・カリフォルニアが5月に開催時期を移した影響で、2010年、カタルーニャが3月開催に変更されている。

ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2014第4ステージボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2014第4ステージ image:www.voltacatalunya.cat独自の文化を持ち、またそれを主張するカタルーニャ地方は、バスク地方同様、スペインからの独立を訴える自治州の一つ。州都はスペイン第二の都市バルセロナ。一般的にカタルーニャ語が話されており、レースホームページもカタルーニャ語とカスティーリャ語(スペイン語)の2種類が用意されているほど。レース名の「ボルタ」はカタルーニャ語で、スペイン語の「ブエルタ」にあたる。

ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2014第7ステージボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2014第7ステージ image:www.voltacatalunya.catピレネー山脈と地中海に挟まれた山がちな地形を駆け抜ける1週間。スプリンター向きの平坦ステージは少なく、総合優勝を狙う選手にとっては気が抜けないステージが続くと言っていい。第1ステージと第2ステージはいずれもゴール手前に難易度の低い山岳が設定されたコースレイアウト。登りで縮小した集団スプリントに持ち込まれるだろう。

カタルーニャの総合争いは第3ステージと第4ステージでほぼ決まると言っていい。1級山岳コウベ峠(標高1031m)と超級山岳クレウエタ峠(標高1850m)を越えて、1級山岳ラ・モリーナ(標高1725m)まで駆け上がる第3ステージで、総合候補にセレクションがかかる。

そして1級と2級の山岳を4つ越えてから超級山岳バルテル2000(標高2200m・登坂距離12km・平均勾配7.8%)に向かう第4ステージで、リーダージャージは本命選手の手にわたるだろう。2200mという標高はこの時期にしては異例の高さだ。

ゴール直前に2級山岳が登場する最大218kmの第5ステージと、数少ないスプリンター向きの第6ステージを経て、最終日はバルセロナを見下ろす3級山岳モンジュイックの丘を8回駆け上がる周回コース。最後まで慌ただしく総合争いが繰り広げられるはずだ。



ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2014ステージリスト
3月24日(月)第1ステージ カレーリャ〜カレーリャ 169.7km
3月25日(火)第2ステージ マターロ〜ジローナ 168km
3月26日(水)第3ステージ バニョレス〜ラ・モリーナ 162.9km
3月27日(木)第4ステージ アルプ〜バルテル2000 166.4km
3月28日(金)第5ステージ カンプロドン〜バルス 218.2km
3月29日(土)第6ステージ エル・ベンドレル〜ビラノバ・イ・ラ・ジャルトル 172km
3月30日(日)第7ステージ バルセロナ〜バルセロナ 120.7km



フルーム、コンタドール、キンタナ、ロドリゲスらに注目の総合争い

2013年大会を制したダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)2013年大会を制したダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) photo:www.voltacatalunya.cat昨年カタルーニャ総合優勝を果たしたのは、第2ステージのゴール地点としても登場するジローナに拠点を構えるガーミン・シャープのダニエル・マーティン(アイルランド)だ。今年はライダー・ヘシェダル(カナダ)を引き連れての出場で、もちろん大会連覇を狙う。しかしマーティンの前には例年にも増して強力なライバルが立ちはだかる。

ティレーノ〜アドリアティコを制したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)ティレーノ〜アドリアティコを制したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:RCS Sport総合優勝候補に挙げられるのは、ティレーノ〜アドリアティコを制したばかりのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)や、地元カタルーニャ出身で総合優勝経験者のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らだ。

ツアー・オブ・オマーンを制したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)ツアー・オブ・オマーンを制したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele背中の痛みでティレーノ〜アドリアティコを欠場したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)は、強力な相棒リッチー・ポート(オーストラリア)と再びタッグを組む。フルームとコンタドールが顔を合わすのは今年初めて。ツール・ド・フランスを占う上でも注目の闘いになりそうだ。

ツール・ド・サンルイスを制したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) ツール・ド・サンルイスを制したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)  photo:Cor Vos昨年の大会で超級山岳バルテル2000を制したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)や、パリ〜ニース覇者のカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)、新天地でエースを担うリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)、そして日本でもお馴染みのジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)ら、コロンビアンクライマーも大集合。個人TTが設定されていないため、コロンビア勢が上位を独占する可能性もある。

BMCレーシングに移籍したサムエル・サンチェス(スペイン)はティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)とともに出場。イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデール)やクリストファー・ホーナー(アメリカ、ランプレ・メリダ)といったベテラン勢の他にも、隣国フランスを代表する若手クライマー達、ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)やケニー・エリッソンド(フランス、FRJ.fr)、ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)、ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)らも総合上位に絡んでくるはずだ。

ジロ・デ・イタリア出場を見据える別府史之(トレックファクトリーレーシング)は2012年以来となるカタルーニャ出場。山岳ステージでアレドンドやロベルト・キセロフスキー(クロアチア)らを、平坦ステージではジャコモ・ニッツォロ(イタリア)をアシストし、チャンスが有れば自ら動くことになるだろう。

カタルーニャに向けて乗り込む別府史之(トレックファクトリーレーシング)カタルーニャに向けて乗り込む別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji




text:Kei Tsuji
image:www.voltacatalunya.cat