3月23日から29日までの7日間にわたって、スペイン北東部のカタルーニャ州で第95回ボルタ・ア・カタルーニャ(UCIワールドツアー)が開催される。別府史之(トレックファクトリーレーシング)も出場する1週間のステージレースで、ハイレベルな総合争いが繰り広げられることになりそうだ。



標高1725mの1級山岳フィニッシュで総合争いは決着

ボルタ・ア・カタルーニャ2015第3ステージボルタ・ア・カタルーニャ2015第3ステージ image:Volta a Catalunya1911年に第1回大会が開催されたボルタ・ア・カタルーニャ(カタルーニャ一周)は、世界でも有数の歴史を持つ1週間のステージレース。その歴史は、ブエルタ・ア・エスパーニャ(1935年〜)よりも古く、ツール・ド・フランス(1903年〜)とジロ・デ・イタリア(1909年〜)と肩を並べるほど。

ボルタ・ア・カタルーニャ2015第4ステージボルタ・ア・カタルーニャ2015第4ステージ image:Volta a Catalunya2009年までジロ・デ・イタリアと同時期の5月下旬〜6月上旬に開催されたボルタ・ア・カタルーニャは、ツール・ド・フランスへの準備レースとして重宝された。しかしツアー・オブ・カリフォルニアが5月に開催時期を移した影響で、2010年、カタルーニャが3月開催に変更。それでもグランツールを見据える選手たちが集まるレースに変わりはない。

ボルタ・ア・カタルーニャ2015第5ステージボルタ・ア・カタルーニャ2015第5ステージ image:Volta a Catalunya独自の文化を持ち、またそれを主張するカタルーニャ地方は、バスク地方同様スペインからの独立を訴える自治州の一つ。州都はスペイン第二の都市バルセロナ。

一般的にカタルーニャ語が話されており、レースホームページもカタルーニャ語とカスティーリャ語(スペイン語)の2種類が用意されているほど。レース名の「ボルタ」はカタルーニャ語でスペイン語の「ブエルタ」を意味する。

ピレネー山脈と地中海に挟まれた山がちな地形を駆け抜ける1週間。総合優勝を狙う選手にとっては気が抜けない山岳ステージが多めに設定されている。初日から1級山岳コルフォルミク(平均勾配5.2%・登坂距離9km)がステージ中盤にされるなど、スプリンター向きのステージは少ない。

多くのアメリカやオーストラリア人選手が住むジローナを発着する第3ステージで総合争いは動き出す。合計5つのカテゴリー山岳が設定されており、1級山岳アンヘルス峠(平均勾配5.5%・登坂距離6km)が2度登場。しかも最後の1級山岳アンヘルス峠はフィニッシュまで13kmしか離れておらず、登りと下りで総合順位は大きく入れ替わる。

そしてカタルーニャのクイーンステージが標高1725mの1級山岳ラ・モリーナにフィニッシュする第4ステージだ。1級山岳ブラコンス峠(平均勾配4.9%・登坂距離10.5km)と1級山岳コウベ峠(平均勾配5.5%・登坂距離10km)を越え、さらに標高1916mの超級山岳クレウエタ峠(平均勾配4.5%・登坂距離21km)にアタック。一旦標高1070mまで下がり、1級山岳ラ・モリーナ(平均勾配5.8%・登坂距離5.6km)を駆け上がってフィニッシュを迎える。

フィニッシュ10km手前で2級山岳リーリャ峠(平均勾配4.8%・登坂距離4.1km)を越える第5ステージと、数少ないスプリンター向きの第6ステージを経て、最終日はバルセロナを見下ろす3級山岳モンジュイックの丘(平均勾配5.7km・登坂距離2km)を8回駆け上がる周回コース。最後まで慌ただしく総合争いが繰り広げられるはずだ。



ピレネー山脈を舞台に繰り広げられる総合争いピレネー山脈を舞台に繰り広げられる総合争い photo:Tim de Waele


ボルタ・ア・カタルーニャ2015ステージリスト
3月23日(月)第1ステージ カレーリャ〜カレーリャ  185km
3月24日(火)第2ステージ マタロ〜オロト 192km
3月25日(水)第3ステージ ジローナ〜ジローナ 157km
3月26日(木)第4ステージ トーナ〜ラ・モリーナ 188km
3月27日(金)第5ステージ アルプス〜バルス 195km
3月28日(土)第6ステージ セルベラ〜ポルトアベントゥーラ 194km
3月29日(日)第7ステージ バルセロナ〜バルセロナ 127km



コンタドールとフルーム激突 世界トップレベルの総合争い

アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:CorVos低温や季節外れの降雪など悪天候のイメージがつきまとうボルタ・ア・カタルーニャ。そのためトップレーサーは出場を敬遠しがちだが、第95回大会ではアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)とクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)の二大グランツールレーサーが出場する。

クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleコンタドールは2014年大会で総合2位に入っているものの、まだ総合優勝の経験はない。今シーズンはティレーノ〜アドリアティコで総合5位。ジロ&ツールのダブルツールを目指すコンタドールはここで調子を上げておきたい。アシストとしてイヴァン・バッソ(イタリア)やラファル・マイカ(ポーランド)、ロベルト・キセロフスキー(クロアチア)がコンタドールの脇を固める。

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waeleフルームはパリ〜ニース覇者リッチー・ポート(オーストラリア)と揃っての出場。コンディションによっては、ジロ狙いのポートが総合エースを担うことも考えられる。フルーム&ポートのコンビを支えるのはニコラス・ロッシュ(アイルランド)やレオポルド・ケーニッヒ(チェコ)ら強力なアシストたちだ。

ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) photo:Tim de Waeleコンタドールとフルームは2月のブエルタ・ア・アンダルシアで一戦を交えており、結果はフルームが2秒差の総合優勝。1ヶ月ぶりに激突することになる。

2010年と2014年に総合優勝している地元カタルーニャ出身のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)はウィルス性の胃腸の疾患によって欠場することが決まっている。スペイン勢としては2009年大会総合優勝者のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)や、ツアー・オブ・オマーンを制したラファエル・バルス(スペイン、ランプレ・メリダ)の名前が挙がる。

ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)はサムエル・サンチェス(スペイン)とタッグを組む。AG2Rラモンディアールはロメン・バルデ(フランス)、カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア)のクライマー3人組がエースだ。

そのほか、ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)やリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)、2013年大会の覇者ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)らも総合上位に絡んでくるだろう。

平坦ステージではツール・ド・ランカウイでポイント賞を獲得したカレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)やルーカ・メスゲツ(スロベニア、ジャイアント・アルペシン)、マッテオ・ペルッキ(イタリア、IAMサイクリング)、ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)らにチャンスが回ってくる。

トレックファクトリーレーシングの別府史之は2年連続5回目の出場。ジロ出場を見据える別府はアイマル・スベルディア(スペイン)やリカルド・ゾイドル(オーストリア)の山岳アシストとして走る。

text:Kei Tsuji