11月8日(日)に行われたツール・ド・ソウル(UCI 1.2)に西日本学生選抜チームとマトリックスパワータグが参加した。日本選手は辻善光(マトリックス)の8位が最高だった。京都産業大学、環太平洋大学、中京大学の学連選手によるチクロ・イプシロン-西日本学生選抜チームを率いた山岸正教監督によるレポートをお届けしよう。

インチョン国際空港到着インチョン国際空港到着 photo:Masanori.YAMAGISHIチクロ・イプシロン-西日本学生選抜チームでの参加
ツール・ド・ソウル2009(UCI1-2アジアツアー)
11月8日(日)に韓国ソウル市において100kmのロードレースが開催されました。大会はUCI公認の1-2。
開催の決定が遅れたため多くのチームがツール・ド・おきなわに参加決定済みで、日本からの参加チームが少なく、アジアスポーツコミュニケーションズ株式会社様よりお話を頂くこととなりました。コーディネートは京都産業大学自転車競技部監督の秋田謙氏によるもの。

秋田氏曰く『参加決定から選手選考までの時間があまりに少なかったのが残念だ。もっと多くの大学の学生にこのような大きな舞台を経験してもらい、そこで得たものを自分達のチームにフィードバックし、西日本の大学生の競技レベル向上につなげられればいいと思う。
今回は8月の美麻ロードのメンバーにしか声をかけることが出来なかった。そして彼らも既にレースにエントリーしている状況だった。もっと多くの大学と連絡を取り合いこういった事に興味のある選手をピックアップしておくべきだった。選手個人ももっと私にアピールしてくれればいいと思う』

この道が翌日には封鎖されるのだこの道が翌日には封鎖されるのだ photo:Masanori.YAMAGISHIそうして、10月に行われた西日本トラック新人戦スプリント優勝の山森とポイントレース優勝の小村、9月に行われた立命館クリテリウム優勝の中根に、京産大から廣浦・湊の2選手。スタッフに京産大コーチの私、山岸と濱野が選出されました。

UCIレースに参加するにあたって大きく三つの準備が必要でした。一つ目はレーサージャージーの統一。
今回の学生達の活動に対し京都府長岡京市にある競技用自転車専門チクロ・イプシロン様よりウエアーを提供していただきました。深く感謝申し上げます。

二つ目は国際ライセンスの取得。時間がなかった為、各都道府県連盟と日本自転車競技連盟(以下JCF)様に尽力いただきました。

三つ目はUCIレターと言われる、日本の選手が海外で活動することをJCFが承認したという書類の申請。
これには各選手が所属するチームの責任者・各都道府県連盟の責任者・JCFの協力が必要で、各団体の方々に大変お世話になりました。 こうして、”チクロ・イプシロン-西日本学生選抜”チームを結成することができました。
左から山森、湊、廣浦、中根、小村左から山森、湊、廣浦、中根、小村 photo:Masanori.YAMAGISHI選手
山森 雅也 京都産業大学/京都
湊 淳二  京都産業大学/兵庫
廣浦 典也 京都産業大学/京都
小村 知之 環太平洋大学/青森
中根 英登 中京大学/愛知
スタッフ:濱野 大介 京都産業大学
監督:山岸 正教 京都産業大学

レースレポート
11月6日(金)の夜、韓国・インチョン国際空港に降り立った。他の海外招待チームと共にバスでソウル市内のホテルまで移動しチェックインや簡単な事務手続きなどを済ませる。その後、別便のトラックで届いた自転車を組立て明日からのレースデイに備える事にした。

11月7日(土)、朝食をとり選手たちは自転車に乗りに行く。同じ日本から参加しているマトリックス・パワータグチームの選手達と一緒に走らせてもらうことにした。レースコースの下見も兼ねて走りに行きたいところだが、明日のレースは高速道路がメインなので下見のしようがない。コースレイアウトにこだわらずに交通量の少ない郊外へ向かうコースを探し走る事にした。

昼からはライセンスコントロールや監督会議などが行われ、レースの危険箇所や細かな点の説明が行われた。そして、最後にチームカーの抽選があり、我々は23チーム中4番目という好順番を引き当てた。この位置ならチームカーの車内からレースの動きを少しは見る事が出来そうだ。

最前列に並ぶ、小村(左)中根(右)最前列に並ぶ、小村(左)中根(右) photo:Masanori.YAMAGISHIレース当日の11月8日(日)、選手たちは朝5時に朝食をとり準備にかかる。スタッフの山岸と濱野は6時半からタイヤの空気入れなどを済ませ選手が部屋から出てくるのを待った。前日夜中から振り出した雨は止むどころか強さを増しており、少し空気圧も低めに設定しておく。

雨で準備が遅れ、約5分ほど遅れてからパレードスタートが始まった。そのスタートと共に高々と花火が上がった。この悪条件の中でも精一杯全力で走り、次へと繋がるような走りを選手には期待して私達はチームカーに乗り込んだ。

パレードスタートは6キロ地点までであったが、コース上にタイヤがすっぽりとはまる縦の溝がありその場所で多くの選手が落車に巻き込まれる事態がおきる。落車をした選手の集団復帰を待つ為にパレードスタートは15キロ地点まで延長される措置がとられた。この落車に中根も含まれていたが、それほど遅れる事無く集団復帰を果たしていた。

ドシャ降りの中レースは進むドシャ降りの中レースは進む photo:Masanori.YAMAGISHI8時30分、漢南大橋でリアルスタートの赤旗が振られる。単独のアタックが繰り広げられるが、なかなか決まる事がない。片道4車線の高速道路でまっすぐの平坦基調のコースで飛び出すのは難しいようだ。そんな中、中根は彼の信条である“アタックで逃げる”事に集中し他の選手の動きをチェックするなど積極的な走りをしていた。

スタートから42キロ地点に設定されたホットスプリント地点をドイツのNutrixxion Sparkasseチームが1、3位。地元Geumsan Countyチームが2位で通過する。

レースが始まり1時間半、JO Ho Sung選手が単独でアタック。その3分後に5名、その2分後に6名、更に5名が先頭に追いつき集団から30秒差で17名の逃げグループが出来上がった。残念ながらこの中に我々のチーム員は入っていない。

残り6キロ、高速から一般道へ降りる残り6キロ、高速から一般道へ降りる photo:Masanori.YAMAGISHI有力チームはメンバーを先頭集団に送り込んだ為にメイン集団の動きは消極的になり、逃げグループとのタイム差はどんどんと開いていき1分40秒まで広がった。逃げグループから1名が脱落した後、勝負は16名によるゴールスプリントに持ち込まれそうだ。この逃げグループの中に日本人は辻善光(マトリックスパワータグ)だけだ。

最後のゴールスプリントではレースを序盤からコントロールし逃げグループに3名の選手を送り込んだNutrixxion Sparkasseチームが1名を牽引役として使い必勝体制を整えたが、最終的にゴールスプリントを制したのはJO Ho Sung選手であった。
逃げグループを作るキッカケとなるアタックを決め、最終的に優勝を果たすという素晴らしい走りに監督をはじめ地元関係者も大喜びであった。

ゴール後の選手たちゴール後の選手たち photo:Masanori.YAMAGISHI2分に差が開いたメイン集団ではゴールまで5キロ地点での落車に廣浦が巻き込まれるもののすぐに集団復帰してゴールを果たす。
109名出走の内、完走は100名であった。ゴール後、降っていた雨は嘘のように上がり空には青空が広がっていた。

結果とこれから
我々、チクロ・イプシロン-西日本学生選抜チームの結果は、山森 24位、廣浦 28位、小村 35位、中根 44位、湊 60位という結果でした。

優勝したJO Ho Sung選手優勝したJO Ho Sung選手 photo:Masanori.YAMAGISHI逃げグループに乗れなかったという事は仕方がないにせよ、ペースが落ちた集団でただゴールを目指していたのでは得られるものはないはずです。集団内にいるメンバーと協力しあって逃げグループなどを追いかけるように意志の疎通を図るなど、積極的に動いていく必要があると感じました。

オフシーズン間近のこの時期にハイレベルなレースを経験させる事によって、来シーズン更に高いモチベーションで競技に取り組んでくれる事の動機付けとなってもらいたいと考えています。

この大会は今年から始まった新しいレースではありますが、UCIの1-2アジアツアーに属する非常にグレードの高いレースです。
来年以降もこのような大会に参加するチャンスを頂ければ、さらなる体制を整え臨みたいです。
最後になりましたが、日本自転車競技連盟の大脇恒夫氏、ならびに西日本学生自転車競技連盟理事の石井章氏・アジアスポーツコミュニケーションズ株式会社による多大な尽力に感謝申し上げます。

text&photo:京都産業大学自転車競技部コーチ 山岸正教


多方面で活躍の京都産業大学勢
西日本の学連登録大学チームは強い選手はいるものの、人数などはどうしても中小が多い。これら大学を横断的に編成する今回の体制は歓迎されるものだ。今回は京都産業大学自転車競技部関係者が中心となり行動した。
本レポート執筆者で今回監督をした山岸正教氏は、京都産業大学自転車競技部OBでコーチをしており、現役のS級競輪選手である。ソウル入りの3日前まで松坂の競走に出場していた。そして11月21日(土)に京都・向日町競輪場で予定しているウィーラースクールの発起人でもある。
また、同大の岡豊洋はTREK MARCOPOPLO CYCLINGTEAMでこのツール・ド・ソウルに出場した。
さらに同日程で行われたツール・ド・おきなわでは、現役生の木守望がマトリックスパワータグのメンバーとして出場し初日のTTを18位で好走。OBの清水良行(UTSUNOMIYA BLITZEN)は総合4位の好結果を残している。