追い風に吹かれたハイスピードな開幕2日間を終えて、パリ〜ニース3日目は向い風吹くスローな展開。それでも終盤に集団が割れるなど混沌とした展開の中、サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が集団スプリントを制した。


スプリンターチームを先頭に進むメイン集団スプリンターチームを先頭に進むメイン集団 photo:A.S.O.
パリ〜ニース2019第3ステージパリ〜ニース2019第3ステージ photo:A.S.O.パリ〜ニース第3ステージはサントル=ヴァル・ド・ロワール地域圏のセッポワからオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏のムーラン/イェウールまで南下する200km。前日まで強い北風が一帯に吹き付けていたがこの日の風向きは南風。つまり選手たちはほぼ一日中ずっと向い風の走り続けることになった。

アタックが生まれないまま、集団一つのまま差し掛かった第1中間スプリントを総合2位ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)が先頭通過。2018年のティレーノ〜アドリアティコ総合優勝者クウィアトコウスキーが順調にボーナスタイムを獲得すると、その後ようやく逃げが生まれる。

トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)やタオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)を含む逃げグループが形成されたものの、総合13位/25秒遅れのアントニー・テュルジス(フランス、ディレクトエネルジー)も逃げに乗ったためメイン集団はこの動きを容認せず。一旦引き戻された逃げグループの中から、ラムナス・ナヴァルダウスカス(リトアニア、デルコ・マルセイユプロヴァンス)が諦めずに逃げ、ここにチームメイトのアレッサンドロ・フェデーリ(イタリア)が追いついた。

チームメイト2人によるタンデム走行は、ユンボ・ヴィズマとロット・スーダル、ドゥクーニンク・クイックステップが率いるメイン集団から最大5分半のリードを得る。しかし、ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)が体調不良でリタイアを強いられる中、残り50km地点で逃げデュオのリードは1分を割り込んだ。

残り39km地点で早くも逃げが吸収されると、メイン集団はいつ風向きが変わってもいいようにナーバスな状態を保って曲がりくねった田舎道を進む。すると、フィニッシュまで32kmを残して、幅の狭いコースがさらに狭まった橋の上で大落車が発生。ここにサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)やミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)、マルク・ソレル(スペイン、モビスター)、イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)が巻き込まれたが、幸いいずれの選手も大怪我を負うことなく集団に復帰している。

逃げるデルコ・マルセイユプロヴァンスのアレッサンドロ・フェデーリ(イタリア)とラムナス・ナヴァルダウスカス(リトアニア)逃げるデルコ・マルセイユプロヴァンスのアレッサンドロ・フェデーリ(イタリア)とラムナス・ナヴァルダウスカス(リトアニア) photo:CorVos
オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏に向かって南下オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏に向かって南下 photo:CorVos
ドゥクーニンク・クイックステップとロット・スーダルがメイン集団を牽引ドゥクーニンク・クイックステップとロット・スーダルがメイン集団を牽引 photo:CorVos
ペースが上がり、メイン集団が長く伸びるペースが上がり、メイン集団が長く伸びる photo:CorVos
残り18km地点の第2中間スプリントではチームスカイがスピードを披露。ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)にリードアウトされたクウィアトコウスキーとエガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)がボーナスタイムを獲得している。

チームスカイの積極性はこの日も健在で、向い風が斜め横風に切り替わった残り6kmで再び攻撃を開始する。ロウの強力な引きによって65km/h近い高速巡航が始まるとメイン集団は瞬く間に一列棒状に。ロウが下がってからもクウィアトコウスキーがペースアップを継続し、ベルナルと協力してメイン集団を粉砕した。それまでのスローペースとは打って変わって、残り6km地点からフィニッシュまでの平均スピードは56km/hまで上がっている。

一時的にカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)やダミアン・ゴダン(フランス、ディレクトエネルジー)とともに5〜6名で抜け出したチームスカイコンビだったが、何としても集団スプリントに持ち込みたいグルパマFDJの追走によってメイン集団は一つに戻る。一つに戻ったもののメイン集団は縦に長く伸びたまま。残り2km地点でグルパマFDJが主導権を奪った。

必勝体制のアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)を退けて、最終的にマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)が抜群のリードアウトで先頭へ。その後ろからサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が加速する。

一気にトップスピード70km/hまで加速したベネットは、スリップストリームから抜け出たカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)に並ばせることなく突き進む。ハットトリックを諦めて脚を止めたディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)は、ベネットのガッツポーズを後ろから見届けることしかできなかった。

平均スピードが51.2km/hまで上がった前日の第2ステージとは異なり、この日の平均スピードは37.9km/hだった。

残り32km地点で発生した落車に巻き込まれたフィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)ら残り32km地点で発生した落車に巻き込まれたフィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)ら photo:CorVos
コースいっぱいに広がるスプリントでサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が先行コースいっぱいに広がるスプリントでサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が先行 photo:CorVos
集団スプリントを制したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)集団スプリントを制したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:A.S.O.

「寒さの影響で昨日までの2日間は身体が動かなかった。でも調子は良かったので、必ずチャンスはあると思っていたんだ」。ブエルタ・ア・サンフアンとUAEツアーの最終ステージで勝利を飾っている28歳が、パリ〜ニースにおけるスプリンターの実質的なラストチャンスを掴んだ。

「この大会最後のスプリントのチャンスに向けて、チームメイトたちは抜群の走りを見せてくれた。まさにチームの勝利。昨年は体調不良で途中リタイアしただけに、喜びは大きいし、トップスプリンターを破ったことを誇りに思うよ」と、ボーラ・ハンスグローエの中で今シーズン最も勝っているベネットは語った。

ステージ3連勝を逃しながらも、リーダージャージを守ったフルーネウェーヘンは「昨日のステージの影響が最後に出てしまった。チームメイトが今日も全力でサポートしてくれたので何としても勝ちたかったけど、勝つための力が残っていなかった。明日は厳しい戦いになるけど全力を尽くすのみだ」とコメント。翌日の第4ステージは、終盤にかけてカテゴリー1級〜2級の山岳が4つ連続する厳しいレイアウト。ピュアスプリンター向きではなくパンチャー向きのステージで総合争いが動き出す。

ステージ優勝を飾ったサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)ステージ優勝を飾ったサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:A.S.O.

パリ〜ニース2019第3ステージ結果
個人総合成績
1位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) 11:47:44
2位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 0:00:06
3位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 0:00:11
4位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:00:16
5位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) 0:00:17
6位 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) 0:00:20
7位 トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール) 0:00:21
8位 ルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ) 0:00:23
9位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)
10位 オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール) 0:00:24
ポイント賞
1位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) 32pts
2位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) 24pts
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 22pts
山岳賞
1位 ダミアン・ゴダン(フランス、ディレクトエネルジー) 12pts
2位 フロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 4pts
3位 イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・メリダ) 2pts
ヤングライダー賞
1位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) 11:48:01
2位 アントニー・テュルジス(フランス、ディレクトエネルジー) 0:00:08
3位 ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ)
チーム総合成績
1位 ユンボ・ヴィズマ 11:24:22
2位 ディレクトエネルジー 0:00:05
3位 グルパマFDJ
text:Kei Tsuji
photo:CorVos, A.S.O.

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