3年ぶりの開催に向けて準備が進むシマノ鈴鹿ロード。空白期間を埋めるように様々な新企画が動く同大会だが、中でも目玉となるのがリアルイベントと同時に開催される「バーチャルシマノ鈴鹿ロード」だ。バーチャル空間にシマノ鈴鹿のコースを完全再現したという新企画を一足先にお披露目するプレ大会に、高木編集部員が参加したレポートをお届けしよう。



実況を見ながら参戦するため、3つのスクリーンを用意実況を見ながら参戦するため、3つのスクリーンを用意 photo:Michinari TAKAGI
日本全国からのべ1万人を越える参加者を集めてきた、国内最大級のロードレースイベント「シマノ鈴鹿ロード」。コロナ禍の影響によって2019年を最後に、2年連続開催中止の憂き目を見てきた同大会だが、この2022年、ついに3年ぶりの復活を果たすことがアナウンスされている。

すでに申し込みも開始している同大会だが、3年のブランクを取り戻そうとするかのように多くの新たな取り組みを行うことが発表されている。その中でもユニークなのが「バーチャルシマノ鈴鹿ロード」だ。

それだけ聞くと、このコロナ禍で数多く行われてきたバーチャルレースイベントと変わらないように思うかもしれない。しかし、この「バーチャルシマノ鈴鹿ロード」がユニークなのは、リアルイベントと同時並行でバーチャルレースが開催されるという点だ。鈴鹿サーキットでスタートする種目と同じ種目が同時刻にバーチャル空間上でも行われるのだ。

シマノレーシングおよび国内UCIコンチネンタルチームが参戦シマノレーシングおよび国内UCIコンチネンタルチームが参戦 (c)シマノ自転車メディアも参加自転車メディアも参加 (c)シマノ

ROUVYのアプリを立ち上げ、イベントを選択し、コースデータのダウンロード、スマートトレーナーのペアリングなどを行うROUVYのアプリを立ち上げ、イベントを選択し、コースデータのダウンロード、スマートトレーナーのペアリングなどを行う photo:Michinari TAKAGI
加えて、今年のシマノ鈴鹿ロードでは全レースの模様がネットで中継・配信され、それは「バーチャルシマノ鈴鹿ロード」も例外ではないという。リアルとバーチャルを高度に融合するこの取り組みによって鈴鹿サーキットと自宅が繋がり、実際に会場に訪れる人とインドアライドに励む人が同じ時間を共有できるようになる。

そんな画期的な「バーチャルシマノ鈴鹿ロード」だが、初の試みということもあり、まずはリハーサルイベントとしてプレ大会がさる6月2日に開催された。エキシビジョンとして国内のプロチームから招待された選手らに加え、この新企画を体験するために数名のメディア関係者が出走することとなった。

イベントに参加するとスタートを待つ選手たちが集まっていたイベントに参加するとスタートを待つ選手たちが集まっていた photo:Michinari TAKAGI参戦チームはシマノレーシング、宇都宮ブリッツェン、チーム右京相模原、愛三工業レーシング、キナンレーシングチーム、マトリックスパワータグというプロチームの選手たち。メディア枠としては、サイクルスポーツとバイシクルクラブ、そしてシクロワイアードが招待された。

バーチャルシマノ鈴鹿ロードで採用されたアプリは「ROUVY(ルービー)」。実際に鈴鹿サーキットをシマノ鈴鹿ロード仕様に設営した状態で撮影したコースが画面に映し出され、選手たちはアバターとなってコース上を走る。パワーやタイム、順位などがリアルタイムで画面に表示され、リアルレースでサイクルコンピューターに表示されるようなデータは全て把握することができる。

カウントは3秒前からカウントは3秒前から photo:Michinari TAKAGI
「バーチャルシマノ鈴鹿ロード プレレース」がスタート「バーチャルシマノ鈴鹿ロード プレレース」がスタート photo:Michinari TAKAGI
スタート時刻は18時15分。それまでにROUVYのアプリを立ち上げ、スマートトレーナーや心拍計をペアリングする。参加したいイベントが画面に表示されるため、出場するレースを選択すれば出走できる。ただ一点注意点があり、コース動画を事前にダウンロードする必要があるため、本イベントに参加予定の方は余裕をもってダウンロードしておいた方が良いだろう。

レースの様子はシマノ鈴鹿ロードのYouTubeチャンネル上でライブ中継されていた。東京五輪や全日本選手権、インターハイ、インカレなどなど、多くのレース実況でおなじみの“DJがらぱ”こと芦田千里さんの実況、そして、シマノレーシング野寺秀徳監督の解説といった豪華なコンビで、バーチャル空間でのレース観戦ができるハイクオリティな中継だ。
堀孝明(宇都宮ブリッツェン)がファーストアタックを決める堀孝明(宇都宮ブリッツェン)がファーストアタックを決める photo:Michinari TAKAGI
シケインを抜けたところでレオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)が独走開始シケインを抜けたところでレオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)が独走開始 photo:Michinari TAKAGI
「バーチャルシマノ鈴鹿ロード プレレース」の舞台となるのは鈴鹿サーキットの国際レーシングコース。モータースポーツとは逆方向の周回となり、1周5.807㎞のコースを2周回する。スタート前に実際のレースと同じくウォーミングアップをしていると、アバターもそれに合わせて屈伸運動しているのがROUVYらしい。

レースがスタートすると、堀孝明(宇都宮ブリッツェン)が決めたファーストアタックに、私こと高木三千成(シクロワイアード)も食らいつく。しかしシケインを抜けたところでレオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)がこの2人を抜き去り、持ち前の独走力で単独先頭に。

ドラフティング効果もあり、集団が有利であるドラフティング効果もあり、集団が有利である photo:Michinari TAKAGI
2周目に突入2周目に突入 photo:Michinari TAKAGI
吉岡直哉(チーム右京相模原)と石橋学(チーム右京相模原)が第二グループ、そこに続くのが畑中勇介(キナンレーシングチーム)、渡邉歩(愛三工業レーシング)、宮崎泰史(宇都宮ブリッツェン)、小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)、高木がキンテロを追いかける展開となった。

2周目に入ってもキンテロの独走状態が続く。その後ろ、トップから53秒遅れの第二グループに畑中、吉岡、石橋の3名、そこから20秒遅れの第三グループに渡邊、高木の2名が入った。バーチャルレースとはいえしっかりドラフティング効果もあり、集団が有利なのはリアルレースと同じ。しっかり協調できれば後方集団も優勝の可能性がある。

渡邉歩(愛三工業レーシング)とローテーションをしながら、先頭を追走渡邉歩(愛三工業レーシング)とローテーションをしながら、先頭を追走 photo:Michinari TAKAGI
レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)が逃げ切りで優勝レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)が逃げ切りで優勝 photo:Michinari TAKAGI
しかし、多くの追走を振り切ったままキンテロが逃げ切り勝利。ROUVYのコース上に描画されたフィニッシュゲートを両手を掲げて通過し、「バーチャルシマノ鈴鹿ロード プレレース」の王者となった。2位争いはチーム右京相模原の石橋と吉岡のチームメイト対決を石橋が制し、3位に吉岡が入った。

私、高木は愛三工業レーシングの渡邊歩と5位スプリントを開始するも0.1秒差(!)で敗れてしまい6位でのゴールとなった。フィニッシュラインでバイクを投げ出す練習が足りなかったのが悔やまれるところだ。その後は続々と選手たちがゴールに駆け込んできた。

編集部員の高木は5位スプリントで渡邉歩(愛三工業レーシング)に敗れ、6位でゴールした編集部員の高木は5位スプリントで渡邉歩(愛三工業レーシング)に敗れ、6位でゴールした photo:Michinari TAKAGI
今回、「バーチャルシマノ鈴鹿ロードプレレース」に参加してみて感じたのは没入感の高さ。しっかり丁寧に撮影された動画をベースとしたROUVYのコースはアバターとの馴染みも良く、本当に鈴鹿サーキットを走っているかのような気分にさせられた。

ここに、リアルレースと同時にライブ中継される本イベントとなれば、その没入感は更に増すはず。これまで多くのバーチャルライドアプリを活用したイベントに参加してきたが、「バーチャルシマノ鈴鹿ロード」はそこに新たな地平を開拓する取り組みになるのではないだろうか。

バーチャルシマノ鈴鹿ロードに参戦したCW編集部員の高木三千成(シクロワイアード)バーチャルシマノ鈴鹿ロードに参戦したCW編集部員の高木三千成(シクロワイアード) photo:Michinari TAKAGI



なお、ROUVYでは既に今回使用された鈴鹿サーキットのコースは公開されており、走ることができる。バーチャルシマノ鈴鹿ロードの参加者は本番の試走として、そしてリアルシマノ鈴鹿ロードの参加者にとっても、コースプロフィールを覚えたりするために有用だろう。もちろん、鈴鹿サーキットを自転車で走る体験が出来るというだけでも面白いこと間違いなし。ぜひ一度走ってみては?

text:Michinari Takagi
edit:Naoki YASUOKA
バーチャルシマノ鈴鹿ロード プレレース リザルト
1位 レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ) 13:36
2位 石橋学(チーム右京相模原) +1:51
3位 吉岡直哉(チーム右京相模原) +1:51
4位 畑中勇介(キナンレーシングチーム) +2:11
5位 渡邉歩(愛三工業レーシング) +2:19
6位 高木三千成(シクロワイアード) +2:19
7位 宮崎泰史(宇都宮ブリッツェン) +2:56
8位 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +2:56
text&photo:Michinari TAKAGI

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