ツール・ド・おきなわ市民マスターズ100kmを制した左迫間昭一(チームGINRIN熊本)のレポート。強力なライバルひとりを意識し、彼に勝つ方法を模索して走ったレース。早朝の200km練習を重ねてレースに臨み、ライバルに勝つことができた。



市民100kmマスターズ表彰  1位左迫間昭一(チームGINRIN熊本)、2位栗山和之(Soleil de l'est)、3位香川博(Route365)市民100kmマスターズ表彰 1位左迫間昭一(チームGINRIN熊本)、2位栗山和之(Soleil de l'est)、3位香川博(Route365)
「アマチュアロードレーサーの夢であるツール・ド・おきなわのチャンピオンジャージに袖を通す!」という目標に、毎年恒例の参戦。登坂は専門では無いため、毎年100kmにエントリー。今年はコロナで待ってたら41歳になってしまったので市民マスターズ100kmに参戦しました。

100kmは今年で5回目。過去の成績は....

2015年 4位:羽地で集団崩壊。沖縄輪業国富さん、パラボラ加藤くんと3人で先頭集団追うが届かず。
2016年 16位:おきなわを登りレースだと勘違いして練習メニュー失敗。練習方法を学ぶ。
2017年 2位:大落車からなんとか復帰。スプリントでタマサイクルの藤田さん(藤田晃三選手の息子さん)に負け。
2019年 9位:逃げに気が付かず、レース終了。

エントリーリストには圧倒的強さのYouTuber「パックさん」=栗山和之(Soleil de l'est)の名が。彼のYouTubeの走行動画を見ると分かるが、過去の100kmレースでは登坂一本引きで集団をバラバラにしている。E1のヒルクライムは入賞の常連で、2022年JBCFクライムリーダーとかやばすぎる。登坂は自分よりも圧倒的強さで、その代わりスプリント力が無い。自分が登坂がダメでスプリント力があるという、全く逆の脚質の戦い。もちろん、お互い脚質も分かっているから作戦も分かりきっている。で、戦う前から既に情報戦が始まっていた。

パックさんによる前回大会と今季のCTL比較パックさんによる前回大会と今季のCTL比較 パックさんの過去大会のTSS。そして宣戦布告パックさんの過去大会のTSS。そして宣戦布告


ちょっと待って。CTL60台であの強さなのかい!笑。今年は自分と同じCTL130程度。トレーニングしていると分かるが、CTL60と130のコンディションは雲泥の差である。これは間違いなく、自分との一騎打ちになると予測…。こちらのコンディションは上の中。

おきなわまでのフィットネスレベルの推移おきなわまでのフィットネスレベルの推移 【フィットネス】
7月にコロナに感染。一度持ち直すも、倦怠感が続き思うように練習出来ず。やっと上がり始めた10月頭に風邪を引き、無理して練習したのでぶり返してしまい、調子ガタ落ち。練習会でも途中で千切れる事態になり、「ああ、今年のおきなわはダメだな」となっていました。

そんな中、チームメイトのキムタクが企画した"早朝3時集合、200km走って9時までに帰宅する"という、ストイックで家庭に優しい練習会が定着していた。この練習会に参加する為には、"前日の高強度チーム練習会を100km走って疲労が抜けない状態"で、2時に起床する必要がある。それなのに、集まってくれた変態チームメイトには感謝しかありません。この練習会が始まったのが9月末、このルーチンを6回頑張りました。

【200km練】
ひょんなことから始まってしまった200km練。練習内容も過去の経験を活かし、ロング耐性→短時間・高強度と、レースが近づくにつれ皆でメニューを変えて調整しました。おきなわは登りレースのようでいて、実は短時間の練習がすごく重要なんです。

おきなわに着いたらさっそくの沖縄そばはお約束おきなわに着いたらさっそくの沖縄そばはお約束 レース前夜のカーボローディングはひたすらパスタレース前夜のカーボローディングはひたすらパスタ


疲労度もギリギリを攻めており、ハイリスクゾーンに突入しまくり。風邪だけには最大限の注意を払いました。レース1週間前に長男が発熱した時は「終わったな」と覚悟しましたが、自分だけ別の部屋で隔離して就寝させてもらったりと、家族や妻に迷惑も掛けましたが「頑張ってるからいいよ」と協力してくれた妻には感謝しかありません。やはり、レースで良い結果を出す為には家族の理解も必要なんだなと思います。

というワケで1ヶ月2,055kmNP209Wという高強度、突貫で仕上げたスペックは168cm体重61.5kg、CTL129、FTP280W(4.55倍)程度。前日の5分ベンチマークでは350W(5.7倍)と目標より20W低く、チーム練も過去2ヶ月で最後すべて千切れており、完走なし。笑
チーム内でも強さ7番目ぐらいで、特に登坂がダメ。チーム内ランク的には7番目くらいの強さであった。

レース前日。レースバイクの準備はできた(左がマイバイク)レース前日。レースバイクの準備はできた(左がマイバイク)
レース機材
トレックMADONE SLR(リムブレーキモデル)
ホイール:カンパニョーロBORA WTO60
タイヤ:GP5000TLR フロント6bar、リア6.5bar

補給
ボトル3本(結果的には2.5本)
羊羹6個(結果的には5個)

天候
最高気温28℃、曇り、路面は部分的にウエット

レース

会場ではまずパックさんにご挨拶。パワーデータ等色々と聞き出しに成功し、既に勝負は始まっている。

■奥の上り
レースが始まったのは「奥」からだ。前方は元気だが先頭で入り、下りながらパワーを抑えて登り、下り終わりには先頭に出る。テンションが上がりがちだが、こういう無駄な動きが後半ガクっと来るので、抑えて丁寧に走る。10:14 248W。

■与那までの海岸線
ここは落車しないよう最大限の警戒で走る。謎に後方を振り向く選手や、ふらつく選手には近づかない。いつでも逃げれる左端か右端を走る。ここでも無駄に加速する選手がいたが、パックさん相手にその動きは正気ではない。もちろんその選手はその後見ることは無かった。

■与那の坂〜普久川ダム
いよいよこのレースのターニングポイントであるフンガワ登坂へ。パックさんの位置を確認しながら前方で位置。案の定パックさんが後方からペース上げてきたので、すかさずツキイチで後ろを取る。このまま頂上まで耐えれれば勝機あり!と、事前に呼吸も整えて準備する。

フンガワはただの登坂ではなく、短い坂が連続で続くような登坂。ここでは短いインターバル練習が効いてくる。基本パックさんが登坂箇所のみペース上げるが、更に1604花田さんがペース上げてくる。まじか、強い…。

短い登坂を6倍以上で入って5倍で終わり、250W程度で回復を繰り返す。完全インターバルなのでパックさんも表情が少ししんどい? いつもよりもインターバル感が強かったため、ヒルクライムが強い選手もどんどん脱落していく。自分は回復しつつの登坂想定練習をしていたため呼吸が思ってたより楽で、調整がかなり上手く行ってることを実感。
ただし、完全に呼吸側のリミッター切れてて、その分脚にかなり負担がキテる感がある。「このパターンは攣るやつだ…」なるべく低いパワーで登るよう集中する。

17:37 280W(4.55倍)。4.55倍は間違いなく一番低いパワーで走れているはず。

おそらく、パックさんはここで自分を千切ろうと思っていたはずなので、千切れないかつ、KOMさえ取れればかなり精神的大ダメージを与えれるはず! 脚がキテるが気合い入れて踏む。パックさんも負けじともがく。なんとかKOMを取得した。
パックさんに「今日、勝てないかも」と思わせたに違いない。(性格が悪い)

登り切ると3名に。パックさん、1603の香川さんと私。

■フンガワ下り
コケないように安全に下る。が、後ろが見えない。詰めるので後続が踏んでくれたらもうけものである。下りきり付近で1604花田さんブリッジで4名の集団に。花田さん、香川さんはキツそうだ。

■学校坂
パックさんが6倍入りで容赦なくペース作る。「もう少し落として下さい」と悲鳴が聞こえるが容赦ない。香川さんがキツそうでローテを回せず、ここからツキイチになる。
学校坂入り 5:44 303W、学校坂全体 16:25 251W

■アップダウン区間
3名で淡々とローテ。あまり踏みすぎないように、先頭出た時は270W程度。攣りの兆候ありで、先頭はあまり引かず。
「ああ、これでも練習強度不足だったのか…。どんだけだよ」と、落胆しながら走っていたのを覚えている。バレるとまずいので元気そうに振る舞う。笑

■有銘の登り
たしかここでパックさんが上げてきて、二人とも千切れる。入り500Wぐらいで入り、6倍程度で淡々と。ぐはー、まじか。そして怪しかった脚がいよいよ攣り始める。ヤバいぞこれは。 4:15 304W

ペースを落として欲しい時は会話するというテクはニシムと走っている時に習得した。
「二人切れたんですけど…。」と言えば、パックさんは「ここからなら後続に追いつかないでしょ」と。男前だ。二人が入賞出来るように本気出してなかったらしい。孫悟空かよ。まじか。ここから一騎打ちとなる。まずい…。

■嘉陽の坂
完全に千切りにかかってる。登坂後半500W近く、ここで両四頭筋が攣りで一瞬ロックしてしまい、少し遅れる。
ここで「あ、今日負けた」と思う。遅れてるのがバレるとまずい…。なんとか耐えて涼しい顔をする。何か良い作戦はないのか。56秒 376W

羽地ダムを登るパックさんこと栗山和之(Soleil de l'est) に食らいついていく羽地ダムを登るパックさんこと栗山和之(Soleil de l'est) に食らいついていく
■大浦湾の登り入り口までの平坦
もうかなりマズイ。バレないように脚に水を掛けたり伸ばしたりしても攣る。仕方がないので「後続が追いついてもスプリントで勝てるので前引きません」という猛烈ハッタリ宣言し、ツキイチ作戦に変更。パックさんが前引けと言うが断固と前に出ない。回復しないとまずい…。

しばらくすると「カメラ回してるからねー」と言われローテに入る。Yotube登録者1.6万人、めちゃくちゃアンチ増えるやつ・笑。でも、前に出ても250W以上は出さず回復に務める。このあたりでパックさんに諦めムードがあり、いままでやらなかった登坂でローテを催促してきた! ワンチャン出てきた。作戦が効いてる!

その後、140Wぐらいのサイクリングペースで羽地へ。これがかなり回復できた。レースで脚攣っても、しばらくサイクリングすると回復するテク。

■羽地の登坂
パックさん「ここで千切れなかったら負けということで分かりやすいですね」と、勝負宣言。こちらは余裕無く、入りから「ここから前は引きません」と、ギリギリまで攣った脚の回復を。おそらく、こちらがこういう状況という事は想像すらしていないはず。

羽地の登坂も最低限のパワーで、ダンシングで誤魔化しながらツキイチ。おそらく前は5倍以上だが、こちらは280W程度。

トンネルへの登りでようやく勝ちが見えてくる。最後のゆるい坂で上げられるが、斜度が低いツキイチなのでこちらはそこまでパワー出ておらず。これを斜度がキツイところでやられるとマズかった。

■市街地への下りからゴールスプリントへ
「ここはゆっくり下りましょう」と、めちゃくちゃ安全に下る。もはやパックさんは「負けましたー」というムード。

ストレート入りでパックさんが踏む。全然踏めなくて少し遅れる。スプリントで負けそうである・笑。いや、ここで負けたら笑えんて。お見合いスプリントになるとマズいが、最後のもがきでパックさん上げてくれる。これはイケるやつなのか!?

市民レース100kmマスターズ  左追間昭一が栗山和之を下して優勝市民レース100kmマスターズ 左追間昭一が栗山和之を下して優勝 photo:Satoru Kato
最後のスプリント。あかーん。踏めなくて800Wしか出ず。が、ゴール前にしっかり踏ませたのでなんとか捲っての勝利。

ゴールは何も考えていなかった。控えめに手を広げてゴール。相手が圧倒的すぎて申し訳ない勝利。
パックさん、お手合わせありがとうございました。あまりの力差に対抗できず、ほぼ心理戦という…。上手いこと持っていけた勝利。

熊本に帰って妻に写真を見せると、ポーズがダサくて嫁さんに爆笑され、崩れ落ちる。いや、みんなゴールポーズの練習とかするんですか? したこと無いんですけど。

レースを終え、パックさんこと栗山和之さん(Soleil de l'est)と肩を組んで「ノーサイド」レースを終え、パックさんこと栗山和之さん(Soleil de l'est)と肩を組んで「ノーサイド」
5回目で悲願の勝利! 公式に表彰式がなかったのでセルフ表彰式でパックさんと写真を撮った。表彰ではノーサイドだ。

レース翌日、チャンピオンジャージとKOM賞でいただいた沖縄特産品レース翌日、チャンピオンジャージとKOM賞でいただいた沖縄特産品 一緒に練習を頑張ったチームメイトは不本意な結果だっただけに手放しで喜べないけど、熊本帰ってから実感が。「おお、チャンピオンジャージが家にある…」。

走行データ
【パワーゾーン】
2時間48分 ave35.6km/h NP243W ゾーン7 21分55秒
平地サイクリング、登坂だけ高強度。100kmオープンよりもマスターズの方が速いという結果に。

コロナ禍の中開催していただいた主催の皆様、練習してくれたチームメイト、そして家族。ありがとうございました。


text:左迫間昭一(チームGINRIN熊本)

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