強豪スプリンターによるスピードバトルで決着したツール・ド・スイス第2ステージ。4月のロンドで脳震盪に見舞われ、戦線離脱していたビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)が復活勝利を飾った。



子ども用の自転車に乗り、花道を進むミヒャエル・シェアー(スイス、AG2Rシトロエン) photo:CorVos

スタート前に妻と息子と触れ合うシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) photo:CorVos
スイスの地でも高い人気を誇るワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos


ジル湖の周りを巡った前日に続き、ツール・ド・スイス第2ステージはゼンパハ湖周辺の平原を走る。173.7kmコースには序盤に3級山岳が2つ、終盤に2級山岳が1つ登場するものの、いずれも難易度は低い。ツール・ド・フランスを目指す多くのスプリンターがドーフィネではなくこちらを選んだため、白熱の集団スプリントが繰り広げられた。

スタート地点から数km離れたゲウーエンセ出身かつ、今年限りで現役を退くミヒャエル・シェアー(スイス、AG2Rシトロエン)の引退セレモニーが行われたこの日は、母国の英雄ファビアン・カンチェラーラの合図でスタートした。そしてそのシェアーとニコラス・ズコウスキー(カナダ、Q36.5プロサイクリングチーム)の2名がエスケープし、リーダーチームであるグルパマFDJがメイン集団の牽引を担った。

ミヒャエル・シェアー(スイス、AG2Rシトロエン)とズコウスキーの2人が逃げた photo:CorVos

グルパマFDJが先導したプロトン photo:Tour de Suisse

2つの3級山岳はズコウスキーがトップ通過し、スイスの時計メーカー「ティソ」がスポンサーする2つの中間スプリントはシェアーが先着する。逃げとプロトンは5分に満たないタイム差のままレースは進行し、晴天と集団スプリントを前に穏やかな雰囲気が漂うなか、残り31kmで大規模落車が発生した。

プロトンの半数近くを巻き込んだこの落車によって、総合優勝を目指すジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)やスプリンターのカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が遅れを取る。しかし集団がスピードを緩めたことによりプロトンはひと塊に戻り、ユンボ・ヴィスマの牽引によって逃げの2人が吸収された。

最大10ポイントが与えられる最後の中間スプリントをワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が先頭通過し、緊張感を高めながらプロトンはフィニッシュ地点の待つノットヴィルに到達。昨年プロ入りした20歳のパヴェル・ビットナー(チェコ、チームDSM)のためにトレインを牽引するロマン・バルデ(フランス)が先頭でフラムルージュ(1km)を通過し、大会2日目の勝者を決める集団スプリントが幕を開けた。

ファンアールトを抜き、先頭に立つビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) photo:CorVos

残り300mから先んじてスプリントを開始したのはファンアールトだった。その背後にアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)がついたものの、フェンスとイバン・ガルシア(スペイン、モビスター)に挟まれ行き場を失い、風を受けて踏み込むビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)がファンアールトに並ぶ。

フィニッシュ手前100mでギルマイがファンアールトを抜き、そのスピードにはデマールも届かない。その結果ギルマイが、エリトリア人として初となるツール・ド・スイスの区間優勝を手に入れた。

復活勝利を挙げたビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) photo:CorVos

数は少ないながらも熱狂的なエリトリア人ファンの祝福を受けるビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) photo:CorVos

昨年のヘント〜ウェヴェルヘム制覇とジロ・デ・イタリアの区間優勝で一躍トップ選手の仲間入りしたギルマイ。しかし今年は4月のロンド・ファン・フラーンデレンで落車し、脳震盪に見舞われ2ヶ月に渡りレースから離れていた。「(そのため)十分な練習を積むことができず、この勝利には驚いている」とギルマイは率直な感想を語る。「ツール・ド・スイスでエリトリア人が勝ったことはないことは知っていた。だから母国のファンの前で勝つことができ、本当に嬉しいよ」と、熱狂するエリトリア人のファンから祝福を受けたギルマイは喜んだ。

ツール・ド・スイスでエリトリア人初勝利を挙げたビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) photo:CorVos

2位にはデマールが入り、「混沌としたスプリントの中、スペースが見えたのでスプリントを開始した。だが早すぎたようだ」とレース後に語ったファンアールトが3位。好位置につけていたガルシアが7位に沈む一方で、現役最後のスイスとなるペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)が5位と高地トレーニングの成果を見せた。

翌日は一転して総合勢やクライマーに出番が回ってくる。スタートから約100km続く平坦路から1級山岳を登り、20kmのダウンヒルを経て最後は1級山岳ヴィラール・スル・オロン(距離10.7km/平均7.8%)を駆け上がる。
ツール・ド・スイス2023第2ステージ結果
1位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) 3:53:37
2位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)
3位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
4位 パヴェル・ビットナー(チェコ、チームDSM)
5位 ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)
6位 ヨルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ)
7位 イバン・ガルシア(スペイン、モビスター)
8位 アレクサンデル・アランブル(スペイン、モビスター)
9位 マイク・トゥーニッセン(オランダ、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)
10位 セドリック・ビューレンス(ベルギー、ロット・デスティニー)
個人総合成績
1位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) 4:07:08
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:05
3位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) +0:06
4位 マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) +0:11
5位 ヨハン・プリースパイタースン(デンマーク、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:17
6位 マティアス・スケルモース(デンマーク、トレック・セガフレード) +0:19
7位 シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:20
8位 マッテオ・ソブレロ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)
9位 カスパー・アスグリーン(デンマーク、スーダル・クイックステップ) +0:23
10位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) +0:25
その他の特別賞
ポイント賞 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
山岳賞 ニコラス・ズコウスキー(カナダ、Q36.5プロサイクリングチーム)
ヤングライダー賞 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
チーム総合成績 ロット・デスティニー
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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