序盤で形成された逃げに乗り、ラスト2周で兄である元喜を振り切った山本大喜(JCL TEAM UKYO)。独走フィニッシュで悲願の日本チャンピオンに輝き、2位の岡篤志とワンツーフィニッシュを決めた。



新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)と畑中勇介(キナンレーシングチーム)が言葉を交わす photo:Satoru Kato

全日本選手権ロードレース2023男子エリートロードレース コースプロフィール image:JCF
2023年の全日本選手権ロードレースも最終日を迎え、4日間を締めくくる最終種目である男子エリートロードレースが行われた。その舞台となるのは曹洞宗の寺院である修善寺から西に10kmほどの山の中にある日本サイクルスポーツセンター。開始時刻の午前11時に合わせるように雲が消え、太陽が照りつけるなか130名の選手がスタートラインに集った。

平坦区間が一切ない、常に短い登りか下りで占められたコースは1周8km。20周回の合計は160kmで、獲得標高差は5,000mオーバーと世界的にも稀有なほど過酷なレイアウト。そんな約4時間半に及ぶサバイバルレースが午前11時、スタートを切られた。

午前11時 男子エリートのレースがスタート photo:Satoru Kato

複数の強力な選手を送り込んだキナンレーシングチーム、愛三工業レーシングチーム、JCL TEAM UKYO等が協調して逃げを牽引した photo: Yuichiro Hosoda

パレード走行かのような落ち着いたペースで1周目を終えた直後、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)によるアタックからレースが本格的に動き出す。これに岡篤志(JCL TEAM UKYO)や橋川丈(EFエデュケーション・NIPPO ディベロップメントチーム)などが反応し、山本元喜(キナンレーシングチーム)と「兄が行ったから僕も行った」と振り返る弟の山本大喜(JCL TEAM UKYO)が遅れて先頭集団に合流。8名がレース先頭に立った。

逃げグループを形成した8名
石上優大(愛三工業レーシングチーム)
渡邊翔太郎(愛三工業レーシングチーム)
橋川丈(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)
岡篤志(JCL TEAM UKYO)
山本大喜(JCL TEAM UKYO)
山本元喜(キナンレーシングチーム)
井上文成(シマノレーシング)
石井祥平(アーティファクトレーシングチーム)

JCL TEAM UKYOと愛三工業レーシングチームがそれぞれ2人を乗せ、ベルギー育ちの橋川丈も入った強力な逃げグループが誕生。しかしこれを容認したメイン集団では積極的に牽引するチームが現れず、周回を重ねるごとにその差は拡大していく。そして逃げグループのリードが5分に届いた6周目で「(集団に追走の)火をつけたかった」と語る新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)が飛び出し、これに宇都宮ブリッツェンが呼応。集団先頭に選手を送りタイムを縮めにかかった。

2号橋からの上りを進むメイン集団 photo: Yuichiro Hosoda

集団内で走る新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:Gakuto Fujiwara

一時、留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)と當原隼人(愛三工業レーシングチーム)がプロトンから飛び出し、合流を目指したものの不発に終わる。一方で同じ集団の後方では2日前の個人タイムトライアルを制した小石祐馬が2度のパンクに見舞われ、レースを棄権。JCL TEAM UKYOはレース前半でエースの1人を失うこととなった。

順調にローテーションを回す逃げグループからは、高い気温と湿度のせいか足を攣った橋川が遅れ、石井と井上、更に渡邊も脱落して4名となる。それを追うプロトンではエースかつキャプテンでもある谷順成のため、宇都宮ブリッツェンは小野寺玲、続いて沢田時が牽引。またシマノレーシングも前を牽いた甲斐もあり、13周目に入り先頭との差が3分を下回った。

13周目、新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)が集団をペースアップさせる photo:Satoru Kato

逃げに入った石上優大(愛三工業レーシングチーム) photo:Gakuto Fujiwara

メイン集団から追走に飛び出す留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム) photo:Satoru Kato

先頭を行くのは2018年のU23ロード日本王者である石上に、直近のツール・ド・熊野第1ステージでワンツーフィニッシュを飾った山本大喜と岡、そして2018年日本選手権覇者の山本元喜という4名。この強力な逃げグループはタイム差の縮小を知ったこともあり、14分台で推移していたラップタイムを13分台に乗せるスピードアップを敢行。再び3分まで拡がった差にプロトンでは金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)が頻りに先頭でペースアップを図った。

フィニッシュ直後の緩斜面に入る度に新城が速度を上げたものの、「(メイン集団は)僕を掴まえるだけで逃げまでは追おうとしなかった」と語るようにタイム差が2分を割ることはない。そして17周目(残り30km)に入ると15名程度に絞られた集団からは、門田祐輔(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)を残す留目がこの日2度目となるアタック。「(プロトンにいる)門田さんの方が脚を残していたので、僕は一か八かで仕掛けました」と振り返る留目だったが、先頭への合流には至らなかった。

急遽のメンバー入りした悪天候のジロ・デ・イタリアを完走し、アジア選手権ロードレースを経て出場した新城。本人も「決してフレッシュではなかった」と振り返るようにキレある加速は見られず、またその新城を警戒した集団の協調態勢も整わない。終盤にかけてタイム差は縮まったものの、残り2周回(残り16km)に入った時点で1分44秒。そのため勝負は先頭の4名に絞られた。

残り2周、コース最頂点への登りで山本大喜(JCL TEAM UKYO)がアタック photo:Satoru Kato

逃げる大喜を追う山本元喜(キナンレーシング) photo:Gakuto Fujiwara

ラスト2周目に入り、スタート/フィニッシュラインから1.5km地点にある1kmの登りで石上がアタック。しかしこの動きが岡に封じられると、「脚にまだまだ余裕があった」と語った大喜がカウンターで仕掛ける。すかさず兄の元喜が追いかけ、一度捉えたものの登り返しで大喜が再加速。元喜を引き離した。

この周回を13分18秒で駆け抜けた大喜は、後続と30秒差で最終ラップの鐘を聴く。一方で石上を置き去りにした岡は元喜に追いつき、JCL TEAM UKYOが必勝態勢を整える。そして最終周回でも13分28秒のハイペースを刻んだ大喜が、2日前の個人タイムトライアルに続き、チームに男子エリート2冠をもたらした。

残り2周、アタックを決めた山本大喜(JCL TEAM UKYO) photo:Satoru Kato

ガッツポーズと共にフィニッシュする山本大喜(JCL TEAM UKYO) photo:Satoru Kato

「全日本チャンピオンに相応しいレースをして勝ちたいと思っていました。一歩間違えれば勝ちを逃してしまう状況の中、(飛び出す)ベストなタイミングを窺っていました。その後は兄に負けても仕方がないという思いで全力で踏み込みました」と喜ぶ山本大喜が、悲願となる日本王者ジャージに袖を通した。

元喜のアタックに耐え、最後に抜き返した岡が2位に入ったためJCL TEAM UKYOはワンツーフィニッシュを達成。そして元喜が3位に入り、全日本選手権で初めて山本兄弟が揃って表彰台に上がった。

チームメイトの勝利に拍手を贈りながらゴールする岡篤志(JCL TEAM UKYO) photo: Yuichiro Hosoda

愛娘を抱いて表彰式 photo:Satoru Kato

「3、4年前までは”山本元喜の弟”と呼ばれていました。負けず嫌いな自分にとってそれが嫌で悔しかった。だからこれからは兄が”山本大喜の兄”と呼ばれるかも(笑)。とにかく兄に勝つことができて本当に嬉しかったです」と、優勝インタビューで笑いを誘った。

逃げ切りを許したメイン集団は門田が先頭でフィニッシュして5位。それに金子と2年前の日本王者である草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)が続き、2連覇を逃した新城が8位でレースを終えている。

兄弟で表彰台に登った山本元喜と大喜が父とともに一枚 photo:Gakuto Fujiwara

各選手のコメントは別記事で紹介します。
全日本選手権ロードレース2023 男子エリート結果
1位 山本大喜(JCL TEAM UKYO) 4:42:14
2位 岡篤志(JCL TEAM UKYO) +1:32
3位 山本元喜(キナンレーシングチーム) +1:37
4位 石上優大(愛三工業レーシングチーム) +2:52
5位 門田祐輔(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム) +3:02
6位 金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム) +3:05
7位 草場啓吾(愛三工業レーシングチーム) +3:50
8位 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) +3:51
9位 谷順成(宇都宮ブリッツェン) +4:45
10位 阿曽圭佑(ヴィクトワール広島) +5:09
11位 中井唯晶(シマノレーシング) +5:12
12位 武山晃輔(JCL TEAM UKYO) +5:16
13位 安原大貴(マトリックスパワータグ) +5:25
14位 留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム) +5:36
15位 織田聖(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム) +10:54
text:Sotaro.Arakawa
photo:Satoru Kato, Yuichiro Hosoda, Gakuto Fujiwara

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