ツール最初の山頂フィニッシュを制したタデイ・ポガチャルは、喜びではなく「安堵した」と笑顔を見せた。「どうやらパリまで激しい戦いが続くようだ」と語ったヴィンゲゴーなど、ツール6日目を終えた選手たちのコメントを紹介します。



区間優勝&総合2位&マイヨブラン(ヤングライダー賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)

表彰台でスロベニア国旗を指差すタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

レース直後インタビュー

僕自身これが昨日のリベンジだとは思っていない。だけど今日の勝利、また総合タイムを取り戻すことができて甘美な気持ちがするよ。それに少し安心したというのが本音だ。

―前日にヴィンゲゴーから1分近くタイムを失い、不安だったか?

もちろんだ。昨日のヴィンゲゴーによる走りは素晴らしく、今日もユンボ・ヴィスマがトゥールマレーで牽引を始めた瞬間、「昨日と同じく悲惨なことが起きてしまう。今日もダメだったら荷物をまとめて帰らないといけない」と不安に駆られた。だが幸運にも調子良くトゥールマレーを登ることができた。そして最後はタイミングを見計らってアタックした。いまは大きな安堵に満ちあふれている。

これがツールで10度目のステージ優勝だ。マーク(カヴェンディッシュ)!聞こえているか?君の記録に追いつくぞ!(笑)。現時点で(ヴィンゲゴーとは)完璧と呼ぶに近しいタイム差ではある。そして最終ステージに向けて激しい戦いが、この後も続いていくだろう。

―答えは明白かもしれないが、今日の勝利を誰に捧げたいか?

もちろん(パートナーである)ウルシュカ(ジガート)だ。昨日(ジロ・ドンネで落車し)既に家に帰った彼女は、僕に力を送ってくれた。だからこの勝利を彼女に贈りたい。

前日から一転、復活のショーを披露したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:A.S.O.

表彰式後インタビュー

今日は賢い走りができた。総合タイムを取り戻したことはもちろん、ステージ優勝が嬉しかった。まるで初めてツールを勝った3年前と同じぐらいね。それほどツールでの勝利は特別なものなんだ。

最終山岳では「頂上まで食らいついて諦めるな」と自分に言い聞かせた。そして気づいたら集団は僕とヨナス、ワウトの3人になっていた。(急勾配区間に入る)残り4kmからアタックすることを考えていたものの、チームカーから無線で「ヨナスについていって賢いレースをしろ」と指示があった。だが本当にスマートな走りをするならば、もっと手前でアタックするべきだった。

あの時点(残り2.7km地点)でのアタックが遅すぎたという後悔はない。それにもし早めに仕掛けていたとしても、最後の平坦区間かどこかで脚が終わっていただろう。昨日も同様だが、レース前の戦略ならばAからZまでたくさん用意することができる。だが状況は変化するし、展開の予測は難しい。それが自転車レースだ。

区間2位&マイヨジョーヌ ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)

フィニッシュ後、ファンアールトに感謝を伝えるヴィンゲゴー photo:CorVos

再びマイヨジョーヌに袖を通すことができ、とても嬉しいよ。もちろんステージ優勝ができれば最高だったものの、とても強かったタデイ(ポガチャル)にこそ今日の勝利は相応しい。昨日に続き、今日も彼(ポガチャル)の脚を試したかった。どうやら昨日よりも彼の調子は良かったみたいだね。

どうやらパリまで激しい戦いが続くみたいだし、それが楽しみだよ。

ポガチャルに引き離されながらもマイヨジョーヌを獲得したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

―君は昨年よりもパワーアップしているように見えるが、同様にポガチャルも力を増していると思うか?

どうだろうね。ただ、僕自身は自分が求めるレベルに達していると思う。ただツール・ド・フランスは長い道のりだ。何が起きてもおかしくない。また、僕には強いチームがいる。今日も彼らは素晴らしい走りを見せてくれた。だから心から感謝しないといけない。

区間3位 トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム)

調子は良かったのだが、ヴィンゲゴーとポガチャルのコンディションが少しだけその上を行っていた。チームと共に逃げたヨナス・グレゴーに感謝する。

1日でマイヨジョーヌを失ったジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)

ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

マイヨジョーヌを身に纏って走るツールは素晴らしく、その気持ちを表現する言葉が見つからないよ。今日の結果には概ね満足している。厳しい戦いになると分かっていたステージでもベストを尽くすことができた。あの2人(ポガチャルとヴィンゲゴー)に食らいつくことができず残念だが、彼らは別次元の戦いをしているんだ。だから総合3位という結果が単純に嬉しいよ。

それにまだ第6ステージだよ?まだまだ先は長く、昨日の勝利のおかげで最高の第1週目となった。もちろんマイヨジョーヌを失ったことは残念だが、ここまでレースを楽しんで走ることができている。

トゥールマレーでヴィンゲゴーを牽引したセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)

セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)の高速牽引に導かれるヴィンゲゴーとポガチャル photo:CorVos

ポガチャルは世界で一番の選手。だから僕たちは彼の復調に備えなければならず、もちろん前日と同じくポガチャルを引き離したかった。最初の登り(トゥールマレー)はヨナスに適していたのでそこからペースを上げ、最後の登りもそれまでのペース次第にはなるが、(ヴィンゲゴーならば)良い走りができると思っていた。

僕自身の調子は良いが、まだ第6ステージだ。既に厳しいツールになっているものの、このコンディションのままヨナスをアシストしていきたい。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.