前日の失速により大会連覇が潰えたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が、1級山岳フィニッシュのブエルタ第14ステージで復活勝利。危なげなく総合首位キープに成功したセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)は、最終的なマイヨロホ獲得に向けまた一歩前進している。



9月9日(土)第14ステージ
ソヴテール・ド・ベアム〜ララ・ベラグア 156.2km(山岳/山頂フィニッシュ)


マイヨブランコを着るアユソ photo:CorVos
大歓声を受ける地元出身のバルト photo:CorVos


スタート前に笑顔も見せたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

9月9日(土)第14ステージ ソヴテール=ド=ベアム〜ララ・ベラグア  156.2km image:A.S.O.
前日に超級山岳トゥールマレーを登り詰めた選手たちは、この日もフランス・ピレネーの山々を登る。出発地点であるソヴテール・ド・ベアムから平坦路を進み、最初の超級山岳(距離11.1km/平均8.7%)でスプリンターはお役御免。その後約1,000mの標高を下ってから休む間もなく超級山岳ラッラウ峠(距離14.9km/平均8%)を登坂する。

スペインに戻ってきた選手たちは下りと平坦区間で息を整え、いよいよ1級山岳ベラグア峠(距離9.5km/平均6.3%)に臨む。大きな差が生まれるような登りではないが、前日のクイーンステージでの疲労に加え、総獲得標高差3,700mでは選手たちのスタミナが試された。

シリル・バルト(フランス、ブルゴスBH)の故郷であるスタート地点に姿を見せたのは、前日にタイムを失い、総合争いから脱落したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)を含む156名の選手たち。午後13時17分にスタートが切られると、前日とは打って代わって逃げを目指す選手たちのアタックが勃発。そのほぼ全ての動きにベルギー王者ジャージを纏ったエヴェネプールが反応した。

序盤から積極的に逃げを狙ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

エヴェネプールやグローブスを含む24名の逃げ集団が形成された photo:CorVos

そしてスタート後、約34km地点で逃げが成立。その中にはエヴェネプールはもちろん、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)やロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ)などの有力クライマーが入り、ポイント賞ジャージを着るカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)の姿も。また3つのカテゴリー山岳を越えるステージのため、山岳賞獲得を目論むマイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ)も逃げに乗った。

その後も逃げ集団への合流を試みる選手が現れたものの、ユンボ・ヴィスマがメイン集団先頭に蓋をしたため、平均スピードが50km/hを超える慌ただしい展開が落ち着く。そして早速プロトンから4分20秒のリードを得た逃げ集団は、この日最初の超級山岳ウルセール峠(距離11.1km/平均8.7%)に突入した。

登り始めからエヴェネプールが先頭でペースを作り、途中チームメイトであるマティア・カッタネオ(イタリア)の力を借りながらペースを上げていく。そして山岳ポイントを狙うストーラーの加速も虚しく、それを上回るスピードで駆け上がったエヴェネプールが先頭で頂上を通過。それにバルデが追従し、大所帯だったレース先頭が2名になった。

最初の1級山岳で飛び出し、先頭に立ったエヴェネプールとバルデ photo:CorVos

一方、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が早々に遅れたプロトンではUAEチームエミレーツが先頭に出てペースを作る。これに前日の勝利に貢献したウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が遅れ、メカトラに見舞われたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)がアッティラ・ヴァルテル(ハンガリー)のアシストを受けて集団復帰を果たした。

下りの得意なバルデとエヴェネプールは、ローテーションを回しながら後続との差を拡げていく。途中、沿道のファンから受け取った水をバルデがエヴェネプールにかけてあげるシーンもありがなら、2人は超級山岳ラッラウ峠(距離14.9km/平均8%)を登坂。エヴェネプールが頂上を先頭通過する頃に、逃げ集団とは1分45秒差、プロトンとは5分28秒差まで拡がった。

セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)とヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)と前日のトップスリーが目を光らせるなか、ラッラウ峠の登坂でフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)が仕掛ける。しかし総合でも1〜3位までを独占するユンボの3名を振り切ることはできず、沈静化したプロトンをロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が先導を担った。

ラッラウ峠で攻勢に出たUAEチームエミレーツ photo:CorVos

ローテーションを回しながらフィニッシュを目指すエヴェネプールとバルデ photo:CorVos

沈静化したプロトンをロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が先導する photo:CorVos

そしていよいよエヴェネプールとバルデが1級山岳ベラグア峠(距離9.5km/平均6.3%)に突入する。その登りでペースを作るエヴェネプールはバルデに先頭交代を促すことなく、淡々と残り距離を消化。そして勾配が緩やかになる直前の残り4km地点で、加速したエヴェネプールがバルデを引き離した。

単独でフラムルージュ(残り1km)を通過し、無線でチームに感謝を伝えたエヴェネプールは踏み脚を緩めることなく最終ストレートに到達。そして何度も信じられないと頭を振った前世界王者は、ファンの大歓声に応えるガッツポーズと共にフィニッシュを通過。総合連覇を逃しながらも、24時間後に復活勝利を飾ったエヴェネプールが、大粒の涙で喜びを表した。

1級山岳ベラグア峠を登坂するエヴェネプールとバルデ photo:CorVos

バルデを引き離し、復活勝利を掴んだレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

劇的な復活勝利を飾ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

「昨日は難しい日となり、昨夜はよく眠ることができなかった。ネガティブな考えにも思い悩まされたが、今日はベストを尽くすことだけを考えた。今日のコースを試走をしていたので登りは把握しており、ロマン(バルデ)も協力してくれた。区間2勝目は本当に嬉しいよ」と第3ステージに続く勝利に加え、山岳賞ジャージを獲得したエヴェネプールは喜んだ。

一方で、エヴェネプールたちから8分遅れで最終山岳に入ったプロトンはミケル・ランダ(スペイン)の総合ジャンプアップを目ラウバーレーン・ヴィクトリアスがコントロールする。しかし総合上位勢による目立ったアタックがないまま、総合8位のアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)を先頭に集団がひと塊のままフィニッシュ。そのためクスとユンボ・ヴィスマが、最終的なマイヨロホ獲得に向けてまた一歩前進した。

マイヨロホの保持を喜ぶクスとプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

危なげなくマイヨロホを守ったセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

ブエルタ・ア・エスパーニャ2023第14ステージ結果
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 4:13:38
2位 ロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ) +1:12
3位 レナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー、ロット・デスティニー) +6:33
4位 ジョナタン・カストロビエホ(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) +6:35
5位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ) +7:24
6位 ダビ・デラクルス(スペイン、アスタナ・カザフスタン) +8:21
7位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) +8:22
8位 セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)
9位 ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)
10位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)
12位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)
15位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) 51:04:54
2位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) +1:37
3位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) +1:44
4位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) +2:37
5位 エンリク・マス(スペイン、モビスター) +3:06
6位 マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) +3:10
7位 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) +4:12
8位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) +5:02
9位 キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) +5:30
10位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +8:39
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) 203pts
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 116pts
3位 マライン・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト) 85pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 63pts
2位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ) 39pts
3位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) 36pts
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) 51:07:31
2位 キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) +2:53
3位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +6:02
チーム総合成績
1位 ユンボ・ヴィスマ 152:42:43
2位 UAEチームエミレーツ +10:27
3位 ボーラ・ハンスグローエ +20:20
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos

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