雨のジャパンカップを走ったタイヤセッティングにフォーカス。空気圧4.5は当たり前。4.0、そして3.5気圧の選手も。ディスクブレーキ/ワイドチューブレスタイヤ時代のセットアップを聞いて回った。



優勝したルイ・コスタのバイク。タイヤはコンチネンタルのGrand Prix 5000TT TR(28C)だ photo:So Isobe

世界トップ選手をして「テクニカル」と言わしめる、ジャパンカップの宇都宮森林公園特設コース。30回記念となった2023年大会は終始本降りの雨に見舞われ、タイトコーナーが続く古賀志林道のダウンヒルはレース展開を作るに十分な難易度に仕上がった。

ここでシクロワイアード取材班が注目したのが出場チームのタイヤセッティングだ。

パドックを見て回ると、複数チーム所属選手で構成される日本ナショナルチームを除く18チーム中、最も使用率が高かったのはヴィットリア(6チーム)で、続いてコンチネンタルが4チーム。パナレーサーが3チームで、ミシュランとピレリ、スペシャライズド、IRC、そしてハッチンソンがそれぞれ1チームずつ。道路の舗装事情も関係すると推測されるが、海外チームのスタンダードはチューブレスの28mm幅であり、国内チームよりもタイヤのワイド化は一歩進んでいる。

優勝したルイ・コスタ(ポルトガル)を含め、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティは全員がコンチネンタルの軽量モデルであるGrand Prix 5000TT TR(28、以下TT TR)を使う。帯同メカに聞いたところ、スタンダードモデルのGrand Prix 5000S TR(以下、S TR)を使わない理由は「耐パンク性能も良いし、何よりもパフォーマンスを優先すべきというチーム理念がある」から。帯同した西勉メカニックによれば、公称値183cm/体重69kgのコスタの空気圧は4.7〜4.9だという。

バーレーン・ヴィクトリアスはGrand Prix 5000S TRで揃えた photo:So Isobe

ハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア、バーレーン・ヴィクトリアス)は前4.2、後4.4 photo:So Isobe

エドワード・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)はヴィットリアのCORSA PRO(28)。気圧は前後3.5と非常に低い photo:So Isobe

一方同じコンチネンタルサポートチームながら、S TRで揃えたのがバーレーン・ヴィクトリアスだ。ツール・ド・フランスではほとんどの選手がTT TRだったが、聞けば「パンクリスクの増える雨の時にTT TRは使わない」とアンテルマルシェと異なる方向性。チームの中でも一際小柄(168cm/55kg)のハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア)の空気圧は28mm幅で前4.2、後4.4。

タイヤセッティングを聞いた中で、最も低圧だったのはエドワード・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)の前後3.5気圧だ。ジェイコはヴィットリアのCORSA PROを使い、全員が28mm幅。公表データによればダンバーは170cm/57kgだ。

スペシャライズドが雨レース用に供給するTURBO RapidAir WETタイヤ photo:So Isobe
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)はTURBO Cottonを選択 photo:So Isobe
TURBO RapidAir WETは今回一部選手が使用するに留まった photo:So Isobe



雨タイヤを用意していたのがスーダル・クイックステップだ。クリンチャーのTURBO Cotton(28mm)を使うが、雨レースではスペシャライズドが供給専用品として作るTURBO RapidAir WETを用意する。使用は選手の判断に委ねられており、今回のジャパンカップでの使用率は低め。大逃げでレースを沸かしたジュリアン・アラフィリップ(フランス)はTURBO Cottonを選択していた。

リドル・トレックは雨用にチューブラー(P ZERO RACE TUB SL/26mm)を用意した photo:So Isobe

コフィディスは選手全員がチューブラー。ミシュランPOWER CUPの25mmで統一した photo:So Isobe

ピレリとパートナーシップを組むリドル・トレックは普段チューブレス(P ZERO RACE TLR)を使うが、今回のジャパンカップでは半数以上がチューブラー(P ZERO RACE TUB SL/26mm)を採用。メカニックに聞いたところ「チューブラーの方が雨での安心感が高いから」との理由だ。

更にチューブレスタイヤ全盛期ながら出場選手全員がチューブラータイヤ(ミシュラン POWER CUP)で揃えていたのがコフィディス。「とにかく重量を軽く抑えたいから」とのことであり、タイヤ幅も25mm(メーカーラインナップには28mmも存在する)。組み合わせるコリマのホイールとの兼ね合いもあるとのことだが、来季はチューブレスで統一する予定、とも。

text:So.Isobe

最新ニュース(全ジャンル)