オーストラリアでのシーズン開幕レースを締めくくるカデルエヴァンス・グレートオーシャン・ロードレースが1月30日に開催された。リドル・トレックが有利に進めたレースはピュアスプリンター不在のスプリントに持ち込まれ、テスファツィオンとのハンドル投げをローレンス・ピシー(ニュージーランド、グルパマFDJ)が制した。



地元勝利を狙うカレブ・ユアン(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) photo:CorVos

今年もオーストラリアで始まったワールドツアーの開幕レースは、ツアー・ダウンアンダーの舞台アデレードと主要都市シドニーの間にあるジーロングで幕を閉じる。2011年ツール・ド・フランスでオーストラリア人初の総合優勝に輝いたカデル・エヴァンスを称え、2015年よりスタートしたカデルエヴァンス・グレートオーシャン・ロードレース。コースは序盤から平坦路を進み、勝負所となるチャランブラクレセント(距離1.3km/平均7.2%/最大22%)を含む16.8kmコースを4周する。

UCIワールドツアーではあるもののワールドチームの出場は強制ではないため、スタート地点に並んだのは10のワールドチーム。そこにプロチームであるイスラエル・プレミアテックと地元コンチネンタルチームを加えた計13チーム、総勢88名の選手たちが発着地点であるジーロングを出発した。

序盤からARA・スキップキャピタルやチーム・ブリッジレーンの4名が逃げグループを形成した photo:CorVos

スタート直後から飛び出したのは、地元チームであるARA・スキップキャピタルと同じく地元チーム・ブリッジレーンの計3名。遅れてザック・マリッジ(オーストラリア、チーム・ブリッジレーン)が合流したため、先頭は18〜20歳の若手オーストラリア人選手4名が立つ。それをブレイク前夜のコービン・ストロング(ニュージーランド)を擁するイスラエルやアルケアB&Bホテルズが、メイン集団を先導して追いかけた。

一時は5分差を得た逃げグループだったが、16.8kmの周回コースが近づくにつれそのタイム差は減少していく。そして最初のチャランブラクレセント手前で、ブリッジレーンのマリッジとオーストラリアU23タイムトライアル王者のジャクソン・メドウェイが飛び出した。

プロトンを先導するイネオス・グレナディアーズ photo:CorVos

しばらくリードを保った先頭の2名だったが、イネオス・グレナディアーズやアスタナ・カザクスタンが追走に本腰を入れたため残り26kmで逃げは吸収。その直後にリドル・トレックからフアン・ロペス(スペイン)とバウケ・モレマ(オランダ)が続けざまにアタックしたものの、いずれもクリス・ハーパー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)が抑え込み、その後も決め手の欠くアタックが繰り返された。

最終周回に入ったプロトンはDSMフィルメニッヒ・ポストNLが先導すると落ち着きを取り戻し、そのまま最後のチャランブラクレセント(距離1.3km/平均7.2%/最大22%)へ。イスラエル・プレミアテックによるハイスピード牽引で人数が絞られた集団から、オーストラリア王者ルーク・プラップ(ジェイコ・アルウラー)を含む20名程度の先頭グループが形成された。

最終周回に入り、イスラエル・プレミアテックが積極的に集団を牽引する photo:CorVos

スプリントに長けたストロングがアシストを残すなか、単騎で集団スプリントを嫌うプラップやクイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)がアタックする。不発に終わったプラップに対しシモンズはリードを作り出したものの、残り1kmで捉えられ、勝負はクライマーやパンチャーによるスプリントに持ち込まれた。

モレマの虚を突くロングスプリントは決まらず、集団内で脚を溜めていたチームメイトのナトナエル・テスファツィオン(エリトリア)が持ち前のスピードを活かして先頭へ。ストロングやゲオルク・ツィマーマン(ドイツ、アンテルマルシェ・ワンティ)のスピードもテスファツィオンには届かないなか、その背後から飛び出したローレンス・ピシー(ニュージーランド、グルパマFDJ)がハンドルを投げを制した。

ハンドルを投げるローレンス・ピシー(ニュージーランド、グルパマFDJ)とナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、リドル・トレック) photo:CorVos

写真判定に持ち込まれる接戦を制したピシー。「残り1kmから集団に埋もれてしまった。だけど我慢が勝負の鍵であると今朝のミーティングで言われていたんだ。そして最後のスプリントはフルガスで行くだけだった。途中でアンテルマルシェの選手(ツィマーマン)が迫ってきたが、なんとか持ちこたえることができたよ」と、ワールドツアー初勝利を飾ったピシーは喜んだ。

ピシーは選手育成に定評のあるグルパマの下部チーム出身の21歳。プロデビューした昨年フランスのワンデーレースで初勝利を挙げ、ダウンアンダーでもトップ5に3度入る好調ぶりを見せていた。

今後のワールドツアーは、中東のアラブ首長国連邦で行われるUAEツアー(2月19~25日)を経て、オムロープ・ヘットニュースブラット(2月24日)からクラシックシーズンが幕を開ける。

ワールドツアー初勝利を飾ったローレンス・ピシー(ニュージーランド、グルパマFDJ) photo:CorVos
カデルエヴァンス・グレートオーシャン・ロードレース2024結果
1位 ローレンス・ピシー(ニュージーランド、グルパマFDJ) 4:17:40
2位 ナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、リドル・トレック)
3位 ゲオルク・ツィマーマン(ドイツ、アンテルマルシェ・ワンティ)
4位 コービン・ストロング(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック)
5位 ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)
6位 アクセル・マリオー(フランス、コフィディス)
7位 クリス・ハミルトン(オーストラリア、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)
8位 クリスティアン・スカローニ(イタリア、アスタナ・カザクスタン)
9位 ヨナス・ルッチ(ドイツ、EFエデュケーション・イージーポスト)
10位 ルイ・バレ(フランス、アルケアB&Bホテルズ)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos