ヴィスマ・リースアバイクが新型ヘルメットを導入した初日の個人TTで、フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)が勝利。元世界王者ガンナのタイムを1秒上回った21歳が、総合優勝に向けこれ以上ない滑り出しを見せた。



新型ヘルメットで駆けたアッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:RCS

同時期開催のパリ〜ニースから一日遅れの3月4日(月)、ヨーロッパの春を代表するステージレース「ティレーノ〜アドリアティコ」が開幕した。レース名の通り西のティレニア海からイタリア半島を横断し、東のアドリア海を目指す7日間。個人タイムトライアルから平坦、丘陵、山岳と、バランスの良いステージ構成が魅力の大会だ。

今年のツール・ド・フランスで相まみえる「ビッグフォー(ヴィンゲゴー、ポガチャル、ログリッチ、エヴェネプール)」のうち、出場を選んだのはヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)のみ。だが総合勢にはフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)やエンリク・マス(スペイン、モビスター)などツールを目指す強力な選手が揃った。

区間9位(22秒遅れ)に終わったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

初日は例年と同じく個人タイムトライアルで争われ、10kmと短い距離に新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)を含む175名が出走した。コースは平坦で、5.4km地点にある中間計測地点で折り返し、来た道を戻って来る。現地時間12時35分のスタートから時が進むにつれて風が強まり雨という予報があったため、全体の3番手に早くもヴィンゲゴーがスタートした。

直前のグラン・カミーニョ(UCI2.1)で区間3勝&総合優勝と絶好調で臨んだヴィンゲゴー。スタート台に上がり注目されたのは今年レイザーから変更したジロのヘルメットで、空力性能の高めるため”おでこの方向に突き出す”特徴的な形で臨んだ結果、11分46秒でフィニッシュ。しかし、これを6番手出走のケヴィン・ゲニエッツ(ルクセンブルク、グルパマFDJ)が早くも4秒上回った。

トップタイムを叩き出し、初日勝者に輝いたフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

続いてソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が11分39秒とトップタイムを叩き出して以降、しばらくタイム更新が落ち着く。そして62番出走のフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)が、初めて平均時速52kmを超える11分24秒で10kmコースを駆け抜けた。

昨年ツール・ド・ロマンディとツール・ド・スイス(共にワールドツアー)のITTで2勝と、独走力にも長けているアユソ。そのタイムにはジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)は12秒と届かず、170番手で優勝候補であるフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)がスタートを切る。

5.4km地点にある中間計測地点をアユソから2秒遅れで通過したイタリアTT王者のガンナは、安定した走りで11分25秒というフィニッシュタイム。しかしアユソのタイムから1秒遅れだったため、長らくホットシートを温めていたアユソがティレーノ~アドリアティコの初日勝者に輝いた。

アユソのタイムに1秒届かなかったフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

リーダージャージを着用したフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) photo:RCS

「ガンナが僕の最大のライバルとなることを皆知っていた。最後までどちらが勝ったのかわからず、勝利を告げられた瞬間は特別な気持ちになったよ。他の総合勢のタイムは上回っていると思ったが、これほど良いタイムは予想外だった」と、元TT世界王者のガンナを下したアユソは語った。

ヴィスマに対し、こちらはルディの新型ヘルメットで駆けた新城は69位(47秒遅れ)でフィニッシュ。新城は翌日以降、総合エースのダミアーノ・カルーゾ(イタリア)とスプリンターのフィル・バウハウス(ドイツ)のアシストという重要な役割を担うこととなる。

69位(47秒遅れ)でフィニッシュした新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos

ティレーノ〜アドリアティコ2024第1ステージ結果
1位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) 11:24
2位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) +0:01
3位 ジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) +0:12
4位 イーサン・ヴァーノン(イギリス、イスラエル・プレミアテック) +0:13
5位 ヨセフ・チェルニー(チェコ、スーダル・クイックステップ) +0:15
6位 ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) +0:16
7位 アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:17
8位 ケヴィン・ゲニエッツ(ルクセンブルク、グルパマFDJ) +0:18
9位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +0:22
10位 ロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ) +0:23
個人総合成績
1位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) 11:24
2位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) +0:01
3位 ジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) +0:12
4位 イーサン・ヴァーノン(イギリス、イスラエル・プレミアテック) +0:13
5位 ヨセフ・チェルニー(チェコ、スーダル・クイックステップ) +0:15
6位 ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) +0:16
7位 アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:17
8位 ケヴィン・ゲニエッツ(ルクセンブルク、グルパマFDJ) +0:18
9位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +0:22
10位 ロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ)
その他の特別賞
ポイント賞 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)
ヤングライダー賞 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos