2023年から“世界のロードレースで活躍できる日本人プロ選手の輩出”を目的として活動する「ロード・トゥ・ラヴニール(RTA)」プロジェクト。五輪の日本代表ロード監督も務めた浅田顕氏が主導する本プロジェクトの特徴は「チームの垣根を超えた若手育成」、「あくまでも世界のロード界を目指す」点だ。つまり、日本のどのようなチーム、組織に属していても、ツール・ド・フランスを筆頭とする世界のロード界を目指す有望な選手であれば誰もがアクセスできるプロジェクトと云う事になる。

RTAでは既にU23版ツール・ド・フランス「ツール・ド・ラヴニール」への出場を2023年に果たしており、2024年度も同レースへの出場を準備中だ。そして、それと並行して日本各地でユースキャンプを実施し、都市圏以外の選手達に対しても世界への道を開いている。

第2回RTAユースキャンプin豊後大野に集った参加選手たち ©Road To l'Avenir

本記事では、2月下旬に大分県で開催された「第2回RTAユースキャンプ in 豊後大野」の模様を、RTAから届いたレポートよりお届けする。スケジュールの抜粋が主だが、ユースキャンプが密度の濃い内容となっていることがわかるはずだ。特にこれからロードレースに挑もうと言う若い選手達や、親御さんをはじめ、その後押しをしたいと考えている人達の参考になれば幸いだ。



ユースキャンプのテーマ:世界に向けた実践的なキャンプ

『世界での活躍』を主目的とするRTAによるユースキャンプのテーマは、具体的に「①どうやって世界レベルの実力を付け」、「②どのように世界でチャンスを掴むか」

ネットなどで様々な情報が溢れている昨今は、若手選手にとってもどれが正しい情報かの見極めが難しい部分があるが、RTAでは実際に海外の現場を渡り歩いてきた経験者たちによる講座・トレーニング指導を行っている。

本ユースキャンプ(RTA3)を含むRTAが掲げる「世界へのパスウェイ(道筋)」は、世界のスタンダードに即したものだ



第2回RTAユースキャンプin豊後大野」要綱

実施期間:2024年2月23日~25日
場所:大分県豊後大野市
主催:3SEEDS株式会社、株式会社シクリズムジャポン共催
協力:豊後大野市、大分県中央空港
特別協賛:井上ゴム工業株式会社、株式会社明治、株式会社オージーケーカブト、株式会社パールイズミ
参加選手:男子8名(うち1名は当日欠場)
カテゴリー分布:U15=2名、U17= 5名、U19= 1名
地域分布:福岡県2名、山口県3名、大分県1名、岡山県1名東京都1名

参加スタッフ:
・黒枝美樹:SPARKLE OITA RACING TEAM 監督/ゼネラルマネージャー
・半田子竜:SPARKLE OITA RACING TEAM選手
・渡邊歩:愛三工業レーシングチームアシスタント/日本スポーツ協会認定自転車コーチ
・浅田顕:RTAプロジェクトマネージャー/リオ&東京五輪男子ロードレース日本代表チーム監督
・柿木孝之(オンライン):BlueWYCH LLC.所属日本オリンピック協会自転車ロードジュニア担当コーチ
・影山絢子:RTAスタッフ・マルチサポート担当/元ナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点施設研究員

「第2回RTAユースキャンプ in 豊後大野」ビデオレポート


2月23日(金)第1日目

第2回を迎えたRTAユースキャンプin豊後大野がスタートしました。スタッフは準備のために前日から現地に入り、雨も上がった今朝8時より参加選手たちを迎え入れました。今回の対象となった選手は2024年度のU15及びU17選手で、九州以外では、山口県、岡山県、そして遠くは東京からの参加あり、初日から目を輝かせながら、講義と実技に集中してくれました。

<実施内容>
8:00 会場準備、選手受入開始サイクルパークおおの
9:00 開会式とオリエンテーション/黒枝美樹代表、浅田顕
9:15 講義安全講習/講師浅田顕
10:00 スパークル大分選手との交流会/スパークル大分レーシングチーム
10:30 実技講習グループロードトレーニング基礎技術/サイクルパークおおの周辺道路2h/講師浅田顕、ライディングコーチ渡辺歩、サポートライダー半田子竜
12:30 昼食道の駅豊後大野
13:30 実技講習走行基礎技術とチームローテーション/大分県中央空港2.5h/講師浅田顕、ライディングコーチ渡辺歩、サポートライダー半田子竜
16:00 まとめ
16:30 宿舎入り(箱崎旅館)、入浴、休憩
18:00 夕食
19:00 講義プロロードレーサーへの道/浅田顕
19:30 講義ジュニアカテゴリーの国際大会に向けて/柿木孝之先生
20:15 講義タイムトライアル/柿木孝之先生
21:15 まとめ、明日の予定説明
21:30 終了

集団走行の心得について、伴走車が付き添いながら指導が行われた ©Road To l'Avenir

柿木孝之氏がタイムトライアルの重要性や準備について選手達に教示した ©Road To l'Avenir
座学に臨む選手達 ©Road To l'Avenir


2月24日(土)第2日目:

気温は低いものの曇り空から雨が落ちてくることは無く本日もすべての予定を消化しました。1日目は技術系のトレーニングが中心でしたが、2日目は午前午後ともタイムトライアルで評価する緊張の日。食事とトレーニングについての講義も加え、大変充実した一日となりました。

<実施内容>
7:00 散歩とラジオ体操
7:30 朝食
8:50 清掃
9:00 講義「タイムトライアル準備」浅田顕/サイクルパークおおの
10:00 15㎞個人タイムトライアル準備と実施/大分県央空港
12:30 昼食
13:45 講義「ヒルクライム」浅田顕/サイクルパークおおの
14:30 ヒルクライム7km準備と実施
16:00 フィードバック/サイクルパークおおの
16:30 自転車整備(各自)
17:00 入浴
18:00 夕食
19:10 講義「成長期の食事」影山絢子先生
20:30 講義「トレーニングについて」浅田顕
21:30 明日のオリエンテーション終了

成長期の食事について講義を行った影山絢子氏 ©Road To l'Avenir

食事は栄養に配慮されたものが用意された ©Road To l'Avenir
数多くの上りが登場するロードレースでは、ヒルクライムのトレーニングも重要だ ©Road To l'Avenir


2月25日(日)第3日目

最終日の3日目は朝から冷たい小雨模様でしたが、ロードトレーニングの時間帯には低気温ながら雨も上がり、ハードなコースの75㎞ロードトレーニングを実施し今回のユースキャンプを締めくくりました。2泊3日とはいえ、若い選手たちにとってはかなりハードで充実した3日間であった事と思います。ここでの経験と学びをそれぞれの活動に生かして欲しいと思います。RTAもサポートを続けます。

<実施内容>
7:00 散歩とラジオ体操
7:30 朝食
8:50 清掃
9:00 講義「レース前の準備」渡辺歩/サイクルパークおおの
10:30 75kmロードトレーニング広域農道/フィードバック
13:30 昼食
14:30 講義閉講式サイクルパークおおの
15:00 解散

ロードレースは雨天でも行われるため、荒天でない限り練習が中止となることはない ©Road To l'Avenir




2回目のユースキャンプin豊後大野を終えて

■RTAマルチサポート影山絢子氏によるコメント

2泊3日の中で、トレーニングと座学など、選手たちは知識も経験も積み重ね、色んな事を吸収できたのではないかと考えます。同世代で頑張る選手たち同士の交流は、とてもお互いにとって刺激になるのではないかと思われます。ライバルでありながらも共にトレーニングしながらお互いに励まし合ったり助け合ったりそこから友情が生まれたりなど、選手たちにとっても良い機会になったのではないかと考えます。

今回の合宿では、栄養面でのサポートという役割で参加させていただき、選手たちと保護者の方々への食事に関する講義と選手への昼食の提供をさせていただきました。講義では、成長期の食事についてその重要性や食材選び、食事の基本型などについて説明し、選手や保護者の方々からは普段から抱いていた疑問や質問、ご意見などもいただきました。普段食事を準備する保護者の方々だけでなく、選手たちにとっても自分自身の食事について見直すきっかけになったのではないかと考えます。

成長期の食事の重要性について語られた影山絢子氏の講義 ©Road To l'Avenir

さらに、サイクルパークにて調理ができた事により、実際に選手たちにアスリートの基本型の食事で昼食を提供でき、知識として学ぶだけでなく体験するという機会となり、有意義な事だったと考えます。これから食事や補給食などを摂る際に、選手自らが何を食べるかという事を考える視点を養えたのではないかと思われます。

豊後大野市は豊かな自然環境と美味しい地元食材、優しい人柄が魅力だと感じました。その魅力を活かし、地域一体となってスポーツ選手を育てる活動が続くよう期待しております。豊後大野市のご活躍と共に若いアスリートたちが大きく成長できるよう願っています。

■今回特に目立った3人のエスポワール

「鹿児島のレースよりRTAユースキャンプを選びました」。2回目の参加となった井上悠喜君(15)は、昨年5月から比べると、取り組みへの意識と走力も大きな成長を見せてます。大分県央空港での個人タイムトライアルでは寒い中でもタイムを大きく更新し、ヒルクライムでも強かったです。4月からは名門自転車部のある高校に入学し実力をさらに上げて、将来は世界で活躍選手を目指すとコメントを残してくれました。

RTAユースキャンプ2回目の参加となった井上悠喜君 ©Road To l'Avenir

「夢はツール・ド・フランスで山岳ジャージを着ることです!」。岡山県から参加の吉本俊平君(15)はあいさつ代わりに公言してくれました。これからU17のカテゴリー2年目とU19で欧州レースと国内のトレーニングでどれだけ成長できるかが楽しみです。今回もタイムトライアルやヒルクライムでも最後まで素晴らしい頑張りを見せてくれました。

今年からU15カテゴリーになったばかりの石田龍臣君(13)は、4月から中学1年生。今回のユースキャンプに参加して貰うかどうか迷いましたが、実施内容を制限するという条件付きで参加して貰いました。強くなるための質問がとても多く、走りでも周囲の観察力と粘り強さで驚かせてくれました。急ぐことは禁物ですが、将来世界の舞台で走ってくれることをとても楽しみにしています。

岡山県から参加した吉本俊平君 ©Road To l'Avenir
U15カテゴリーなりたてで参加してくれた石田龍臣君 ©Road To l'Avenir


■おわりに/RTAプロジェクトマネージャー浅田顕

若い選手たちの強くなりたい気持ちに触れること、目に見える成長を目の当たりにすることは、何にも代えがたい喜びです。今回2回目の参加となった選手たちは大きく成長しており、初めての参加者も力と気持ちを緩めることなく3日間走って学んで笑ってくれました。中学生や高校生が休める3連休を選びながらも、残念ながら他の行事と重なったり受験で来られなかった中学3年生もいましたが、この活動を続けてゆく価値を再確認し、全国各地のブロックでタレント発掘事業と連動した形でのユースキャンプを開催してゆく気持ちを固めております。

社会が自転車での生涯スポーツを唱える一方、この競技の安全性改善努力とロードバイクの常識的な価格での提供がされない限り、これから自転車を始める子供たちは減り続けます。我々もロードレースの魅力や世界への道筋を示す一方で、その部分でも改善してゆくべきと強く感じております。今後ともご支援の程よろしくお願い申し上げます。

以上、RTAのレポートより。



4月下旬に島根県でRTAユースキャンプ開催、参加選手を募集中

「RTAユースキャンプ in MASUDA」 ©Road To l'Avenir

大分で開催された「RTAユースキャンプ」は、今後日本全国の各地域でも開催予定だ。直近では、4月27日(土)~29日(月・祝)に島根県益田市にて「RTAユースキャンプin MASUDA(中国ブロック)」が開催される事が決まっており、目下参加選手を募集中だ。

→「RTAユースキャンプin MASUDA」開催要項・参加申し込みページ

「ここが自分を変えるチャンスかもしれない」 ©Road To l'Avenir



近年、世界へと羽ばたく選手が減少傾向にある国内ロードレースシーン。その流れを変えるべく全国的な活動を続ける「RTA(ロード・トゥ・ラヴニール)」に引き続き注目したい。

協力:Road To l'Avenir、編集:Yuichiro Hosoda

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