エキップアサダが運営する「シクロパビリオン」の15周年記念イベントとして行われた日本・フランス交流サイクリング。定峰峠や堂平山など、花咲く奥武蔵グリーンラインの風景のなか50人が友好を深めながら走った。



フランス人含めて50人の参加者が集まった photo:Makoto.AYANO

ロードレースチーム「エキップアサダ」や日本ナショナルチームの監督として知られる浅田顕さん(シクリズムジャポン代表)が埼玉県東松山市で運営する総合サイクリングステーション「シクロパビリオン」。今年で創設15周年を迎え、その記念イベントとして「春の日仏交流サイクリング」が4月13日(土)に行われた。

浅田顕さん(シクリズムジャポン代表)

ライドの模様は写真で見てもらうとして、15周年を迎えたシクロパビリオンの今、そしてこのイベントの趣旨や背景、浅田さんとエキップアサダが目指すものをここでは紹介しよう。

サービスコースのガレージ内は広々している
ガレージ内にはチームやクラブの自転車が大量にストレージされる



今から15年前の2009年に総合サイクリングステーションとしてオープンした「シクロパビリオン」。シャワーや更衣室、ロッカーを備えた施設にレンタサイクルサービス、そしてインストラクターやメカに詳しいスタッフらが常駐し、近隣のサイクリングコースでライディングレッスンや企画ツーリングなどの走行イベントを行い、様々なサイクリングの拠点として機能してきた。同時にエキップアサダなどレーシングチームの拠点となり、サイクリングにまつわるインフラとハード&ソフトが一堂に集まる施設として運営されてきた。
(2009年のオープン時の記事はこちら

浅田さん、シクロクラブの平田さん、Velo Club de Tokyoのディミトリー・デルマスさん、フロラン・ダバディ―さん

浅田さんは「皆様のご愛顧とご支援により15周年を迎えることが出来ました。オープン当時からは時も流れ、常に変化への対応が迫られている中ではありますが、これからも変わらぬ想いで多くの皆様にサイクリングのすばらしさを体験していただくためのサイクルステーションとして、そして世界に届くロードレーサーの発掘育成活動のトレーニング拠点として、これからも情熱を持ってその役割を果たして参ります」と挨拶。

スタッフの香立さん、影山さん、市川さん
参加者の証は日仏国旗のステッカーだ



この日は50人以上の参加者が集まったが、その大半がフランス人。おもに東京都内に勤務する駐在ビジネスマンらで、いずれもサイクリングや自転車レース好きのサイクリスト。春の晴天の下、参加した50人が3つのグループに分かれて、近くの奥武蔵のサイクリングルートでのライドを楽しむというイベントだ。

奥武蔵を目指しシクロパビリオンから出発

東京を中心に活動するフランス人中心の「Vélo Club de Tokyo(ヴェロクラブ・ド・東京 instagram)」のメンバーなど、浅田さんと交流のあるサイクリストが参加し、おなじみフロラン・ダバディさんの姿も。ダバディさんはツール・ド・フランスの解説や東京五輪ではフランス国営放送のレポーターとして活躍したジャーナリスト。

目指すは奥武蔵グリーンライン。裾のフレンチカラーがおしゃれ
奥武蔵はつつじの花も満開だ



じつはこのイベント、浅田さんとダバディさん、ヴェロクラブ・ド・東京代表のディミトリー・デルマスさんが4年前から開催したいと話し合ってきたことが今回ようやく実現したとのこと。長く交流があり、エキップアサダは応援される関係だった。

サイクリストにおなじみ「落合の店」で補給します
桜と、これから登る奥武蔵の山々



フランス語で名付けられているとおり、エキップアサダのチーム活動はフランスが中心だ。「フランスに行くたびにフランス人に助けられてきたけど、今まで何も「お返し」ができていなかった。そこで日本にいるときにフランスの方々に対し何かできないかという思いで企画しました、と浅田さん。「まずはつながりの場を設けて、今後なにかのときにお役に立つことができればと」。

峠への道は桜が見事に咲いていた
秩父高原への尾根沿いの道



「欧州で見てきたような、ロードレースもサイクリングもひとつの街でお互い社交的に暮らす様な関係を築きたく、今回の日仏交流サイクリングを企画しました。”選手をスターとして崇めるような一方通行のファンベースを作ることが目標ではなく、エキップアサダに関わる方々が自分でも自転車を楽しめる”グループ感”を作りたい。仮にツール・ド・フランスに出るような選手がエキップアサダに居ても、誰もがその選手と気軽に話せる様な文化を目指したいんです」。

ダバディさんは「ツール・ド・フランスにつながる浅田さんのチームの活動を応援しています。浅田さんはいつもフランスのコミュニティのために尽くしてくれて、感謝しています」と話す。

秩父高原牧場の眺めは最高! photo:Makoto.AYANO

そして2年目を迎える浅田さんの推し進めるプロジェクト「ロード・トゥ・ラヴニール(RTA)」は、ひとつのチームという枠を超えた新しい挑戦だ。U23のツール・ド・フランスと言われるツール・ド・ラヴニールで戦える日本代表チームをつくるべく、選手発掘、育成からプロ輩出までの一連の活動に、未来のスターを支え、ロードサイクリング界を新たな高みへと導く活動を行うプロジェクト。

素晴らしい眺めの峠からのダウンヒル photo:Makoto.AYANO

このイベントは、エキップアサダとRTAにとって「再キックオフ」のイメージで開催されたという。RTAの2年の活動成果を振り返り、いよいよ欧州で活動する日本人育成チーム活動をプロジェクトの中心に置く計画だ。エキップアサダ本来の活動路線への復帰なるか?

そのためには、日本だけでなく一層のフランスの支援も必要。そのための関係づくりにこのイベントが役立つことを期待して、皆の願いが合致した。シクリズムジャポンはフランス商工会議所(CCIFJ)に加入したという。

堂平山の展望台に到着

堂平山の頂上からは360度見渡せる山岳のパノラマが楽しめた photo:Makoto AYANO

奥武蔵グリーンラインはカラフルな花盛り

ライドした4月は奥武蔵がちょうど花の咲き乱れる最高の季節。関東のサイクリングのメッカとも言えるエリアだが、都内在住のフランス人たちにとっては見知らぬ土地で、初めて走るという人がほとんど。厳しい上りを登った先の定峰峠や堂平山などでパノラマを楽しみ、グルメコースは地元のうどん屋さんで食事を楽しんだ。この日のいちばんのごちそうはおしゃべり。

グルメコースの皆さん。ときがわ町の古民家食堂で

かしこまった話でなくても、日本とフランスの自転車事情に話の花が咲き、他愛もない話で盛り上がる。思えばツール・ド・フランスさいたまクリテリウムも今年で10回目を迎える。自転車に対する理解度、リテラシーが高いフランス人。一緒に走れば仲良くなる。お互いをよく知り、関係を深めることが前に進む力になる。

ライドの後はシクロパビリオンで交流会だ

仲良くなればおしゃべりに花が咲く
デザートはフランス風マシュマロのお菓子が振る舞われた



このイベントの次回は未定だが、定期的に開催したいと関係者たちはさっそく盛り上がっている。

text&photo:Makoto AYANO