イタリアのスポーツサイクリング用タイヤブランドであるヴィットリア。そのラインナップの中で、オールラウンドなコンディションに対応するクリンチャータイヤがRubino Pro(ルビノ プロ)シリーズだ。その中から今回は、スタンダードモデル、「ルビノ プロ 3」と、「ルビノ プロ スリック3」のインプレッションをお届けする。

ヴィットリア Rubino Pro3ヴィットリア Rubino Pro3
オールラウンド・タイヤとしてポピュラーなルビノシリーズは、通勤や通学などの普段使いからトレーニングライドなど、ハードなシチュエーションで走るアマチュアライダーのために開発されたタイヤだ。タフなライドのための耐久性をメインとしながらも、レースでの使用にも耐えうる性能が追求されている。

タイヤ自体はかなり硬い手触りだタイヤ自体はかなり硬い手触りだ ケーシングは頑丈で耐久性の高い合成繊維であるナイロン製。従来ナイロン製ケーシングは、ポリコットン製に比べて軽量ながら柔軟性が低いという欠点があった。しかしルビノプロシリーズは150TPIのナイロンケーシングが投入され、転がり抵抗値をポリコットンタイヤに近づけることに成功しているという。

コンパウンドはヴィットリアの中でもっとも耐久性が重視された「ARAMID endura 3Dコンパウンド」だ。耐久性が重視されるルビノシリーズは、共通してPuncture Resistant Belting (PRB) と呼ばれる耐パンクベルトを装備する。高密度のナイロンを使用した薄く軽量なレイヤーをトレッドの下に敷くことで、小石や鋭い破片による耐パンク性能を保持している。

今回テストを行なったプロ3とプロ スリック3の違いは、タイヤ表面のトレッドの差異によるものだ。

センターの両サイドには細かい凹凸のトレッドが与えられるセンターの両サイドには細かい凹凸のトレッドが与えられる ダイヤモンド状のノブを配し、オールラウンドな性能を求めたRubino Pro3ダイヤモンド状のノブを配し、オールラウンドな性能を求めたRubino Pro3


オールラウンドな性能を求めるプロ3には、タイヤセンターを囲む部分には細かいドットが設けられたPrisma C.O.M. Vector Designと呼ばれるトレッドが施された。伝統的なダイヤモンド形状のドットだが、タイヤサイドに向かうほど縦に細い形状とされ、転がり抵抗の低減、そして倒しこんだ際のグリップ性能を向上させ、等間隔に入れられたスリットにより、ウェット路面においての排水性を高めているという。

一方プロ スリック3はその名の通りフラットなトレッドが設けられ、なめらかでクリーンな路面でより速いスピードを実現した。しかしルビノシリーズの大きなテーマである耐久性の向上のため、センター部には硬め、その両サイドには柔らかめのコンパウンドを配置した。1.5インチのMTB用もラインナップしている。

ヴィットリア Rubino Pro Slick 3ヴィットリア Rubino Pro Slick 3

長い期間効率的に使えるタイヤとしてデザインされたヴィットリア・ルビノプロシリーズ。シクロワイアード編集部では23cモデルをお借りし、長期間に渡るテストを行なった。





―インプレッション

ルビノ プロ 3とルビノ プロ スリック3の重量は共にカタログ値で225gと、ヴィットリアの誇るレーシングクリンチャータイヤの最高峰「Open Corsa Evo SC」の210gに匹敵し、トレーニング用タイヤ「ザフィーロ」と比較して約100gも軽量だ。位置づけ的に4つあるラインナップ中上から3番目に当たるルビノシリーズだが、この重量はなかなか優秀で、タイヤ重量が大きく影響する走りの軽さにも期待ができる。

Rubino Pro3はウェットコンディションでも安心感があるRubino Pro3はウェットコンディションでも安心感がある photo:Shojiro.Nakabayasahi製品を箱から取り出して手にしてみた。今回テストを行なった「ルビノ プロ 3」と、「ルビノ プロ スリック」は共にトレッド部分の厚みがかなり取られており、触って見た感じはかなり硬めだ。ルビノ プロ 3はセンター部分を除いてダイヤモンド状のノブが与えられているが、この部分もしっかりと丈夫にできている。

ホイールへ装着する際は、若干硬めだったがタイヤレバーは不要で、出先のパンク修理でもストレスを感じない程度だと感じた。メーカー指定の適性空気圧は7~8.5bar(100~120psi)。乗り込みはルビノ プロ 3を長期間使い込んだ後、ルビノ プロ スリックをテスト。空気圧は7.5barを中心に調整を繰り返してテストを行なった。

まずはルビノ プロ 3。実際に走らせてみるとかなり走行感はかなり硬めと言って良いと感じる。路面の段差やひび割れの上を通過すると、しっかりと路面状況をハンドルやサドルに伝えてくる。

高めの空気圧だと少し跳ねるような感覚があったため、例えば舗装状態の良くない林道などへ走りに行く際は、若干低めのセットをした方が良いと感じた。タイヤそのものがかなりしっかりとしているため、適正空気圧よりも低くセットしても腰砕けになるようなことは無かった。

センター部分を除いて配されたノブは、ストレートでもコーナリング中でも路面に対して粘つくイメージだ。そのため少し走りは重たいが、排水能力を考えて設けられたスリットと合わせ、雨などコンディションの悪い場面では安心感がある。

そして特筆すべきはその耐久力の高さだろう。普段使いやイベントの取材までを通して1500kmほどを乗ったものの、タイヤ表面のバリが消えたのみで、擦り減りによるフラット面は現れていない。パンクはリムを打ってしまったことによる1回のみと耐パンク性能も優秀と言って良いと感じる。耐久性がとにかく高く、こまめなローテーションを必要としないので、メンテナンスにかける時間の無い忙しいサイクリストにはとても良いと思った。

そしてルビノ プロ スリック3。こちらは走りだしてすぐに体感できるほど走りの軽さが目立つ。トレッド以外の構造や仕様は同様のため硬い乗り味は共通ながら、そのせいもあってか転がり抵抗が少なく、コロコロと良く路面を転がる乾いた走り心地だ。

しなやかさは感じない反面、コーナリングで車体を倒し込んでいった際にもタイヤサイドが潰れず、直進時とほぼ同じ断面形状をキープしてくれるので安心感がある。ルビノ プロ 3はコーナリング中にノブが動いて粘るイメージがあったが、ルビノ プロ スリック3はスムーズに倒し込んでいけるのでラインがブレない。

タイヤが硬めの為、体重60kgの私には7barがちょうど良いように感じる。硬い乗り味のためグリップの限界も低めかと思ったが、かなり突っ込んでコーナーに進入しても良く粘りを見せてくれた。「スリック」という名称だが、センターの両サイドに設けられたごく細やかな凹凸トレッドが効いているのではないかと感じた。

軽い走行感が味わえるRubino Pro Slick 3軽い走行感が味わえるRubino Pro Slick 3 photo:Shojiro.Nakabayasahi

税込価格で4,410円というリーズナブルな価格であることを考えると、正直かなりオススメしたいタイヤだ。こちらはルビノ プロ 3ほどの長距離を乗り込んでいないため、耐久性はコメントしづらいものの、同じコンパウンドを採用しているため期待をしても良いだろう。

耐久性とリーズナブルなプライスが特徴のルビノシリーズ。ウェットやタフコンディションを通して乗るハードコアサイクリストならばルビノ プロ 3が圧倒的にオススメだ。一方で、週末ライダーや、軽い走り心地を味わいたい方にはルビノ プロ スリック3が適しているだろう。

ルビノシリーズには今回紹介した2種類の他に、サイドウォールに補強材を加えたルビノ プロ テック3もラインナップされ、ユーザーの好みに合ったチョイスができる。


text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano,Shojiro.Nakabayashi

最新ニュース(全ジャンル)