今年で第5回目を迎えるRapha野辺山高原シクロクロスレース。昨今のシクロクロスブームを牽引するビッグイベントが来る11月29日(土)30日(日)の2日間に渡り開催される。参戦・観戦両方の見どころを紹介しよう。



第5回目を迎えるRapha野辺山高原シクロクロスレース第5回目を迎えるRapha野辺山高原シクロクロスレース photo:Kei Tsuji
2010年に初開催、2011年にはUCI公認レース化、2012年には国内発のフライオーバーを設置するなど、毎年進化を続ける “Rapha野辺山高原シクロクロスレース”(以下、野辺山シクロクロス)。例年よりも2週間遅い11月29日・30日に開催される今大会の話題は、例年以上の豪華な出場選手。参戦面では、昨年に続いて参加人数の多い主要カテゴリーを2日で2回レース走ることが可能だ。

本州の中央、長野県南牧村の野辺山という立地には東西のシクロクロスレーサーたちが集う地の利がある。昨年大会では参加者のべ950人超、観戦も含めると2日間で1500名を動員する、国内でも有数規模のシクロクロス大会に成長。今年は参加エントリーでのべ1162名を集めており、観戦含め2,000名の動員を見込んでいるという。

野辺山シクロクロスが国内屈指の規模のシクロクロス大会として多くのライダー、観衆を集めるその理由を探ってみた。

誰もが楽しめるUCI規格のコースとレース

八ヶ岳を望む滝沢牧場がその舞台だ八ヶ岳を望む滝沢牧場がその舞台だ photo:Kei Tsujiエリート選手の走りを間近に観戦できるチャンスだエリート選手の走りを間近に観戦できるチャンスだ photo:Kei Tsuji野辺山シクロクロスの会場は野辺山にある滝沢牧場。普段は観光客で賑わう穏やかな牧場だが、11月には泥まみれのテクニカルなシクロクロスコースに変貌。安易な直線の設置や、複雑すぎないコーナーのレイアウト、そしてそびえ立つフライオーバー(立体交差)などのバランスのよい配分は、本場ヨーロッパ、そして急速なシーンの盛り上がりを見せるアメリカのコースを参考にしたものだ。海外のレースを自ら走るレースオーガナイザーの矢野大介氏が、そのエッセンスを随所に配した形だ。

野辺山シクロクロスと言えば「泥」野辺山シクロクロスと言えば「泥」 photo:Kei TsujiUCI公認レースを開催するということは、世界基準のレースを開催すること。全国、そして海外からも集う選手に応えるように「難しすぎない」絶妙のバランスとなっている。これは矢野氏の、「激坂を入れたり、急コーナーを取り入れることでコースの難易度を増すことは容易だが、シクロクロスはテクニックでこそ差がつくもの」という思想に基づいた設計となっている。

ハイスピードコーナーや、野辺山シクロクロスの象徴とも言える泥セクションの設置はその現れだ。もちろん、全体の競技レベルの向上に伴って将来的にはワールドカップ級の難コースも視野に入っているという。レースもまた、選手を育てる要素のひとつだという意識が見て取れる。

このテクニックを要求する泥コースは、逆を言えば誰でもが走りやすいコースということになる。シクロクロスシーンの底上げには「カテゴリー3、L2の参加が必須」と語る矢野氏の言葉通り、誰でも泥との戦いを、前走者との戦いを楽しむことができる。自らが苦戦した泥やコーナーを、UCIレーサーが華麗なテクニックを駆使してどう走るかを間近で見ることができるのも野辺山シクロクロスの魅力のひとつだろう。

それに、単純に泥にまみれて走ることは楽しい。大人になって泥まみれになる機会なんて、自転車に乗っていてもそうそうあるものではない。シクロクロスが、野辺山が、あなたを童心と闘争心の方へと回帰させてくれるのだ。

「フェス」の雰囲気と泥だらけの笑顔に注目

UCI公認のエリートカテゴリーのレースが開催される一方で、野辺山シクロクロス名物のシングルスピード選手権(SS)もまた、見逃せない。こちらは世界的な流行にのって、仮装大会と化している野辺山屈指のお笑いレース。みなさんご存知のキャラクターや泥に似つかわしくない正装、どうやって自転車に乗っているのか不明なハリボテまで、多種多様な仮装がコースを彩る。周回ごとに服装の変わる演出を仕込むライダーもいて、観戦も盛り上がるカテゴリーだ。

日本で一番面白い(?)シングルスピード選手権日本で一番面白い(?)シングルスピード選手権 photo:Kei Tsuji
キッズレースの充実ぶりはなかなかのもの。是非家族みんなで集いたいキッズレースの充実ぶりはなかなかのもの。是非家族みんなで集いたい photo:Kei TsujiSSがユニークなのは服装だけでない。ウェアブランドながらコアなハンドメイドバイクに造詣の深いRaphaが主催するとあって、SSの参加者の乗るバイクもユニークなものが多数。マニア垂涎のバイクから、世界で一台だけのオリジナルバイクまで、バイクファンにも見逃せないのがこのカテゴリーだ。昨年大会でのCWバイクレポートもご一読を。

キッズレースの充実ぶりにも注目だ。今年はキッズカテゴリーで70人を超えるエントリーを集めており、幼稚園対象のキンダーガーデンは当日エントリーも可能なのでお子様連れのライダーは一緒にレースを楽しめる。走られる方も、観戦のみの方も、ぜひゴール後の参加者の表情を見てほしい。レース中、苦悶の塊だったその表情には、この上ないほどの笑顔が咲いているはず。シクロクロスの魅力は、もうこの笑顔だけで充分伝わるはずだ。

こうした笑顔と情熱とで満たされる牧場の雰囲気は、ある種のアウトドア「フェス」を想起させる。各地でそうしたシクロクロスイベントが開催される中、標高1365m、八ヶ岳の麓という開放的なロケーションを誇る野辺山ではそれが強く実感されることだろう・

シクロクロスのトレンドがわかるブース出展と、観戦を楽しめるフードの充実

盆栽自転車店のイチオシはダブルチョコマフィン盆栽自転車店のイチオシはダブルチョコマフィン photo:Kei Tsuji関西クロスの出張ケータリングでおなじみのエスキーナ関西クロスの出張ケータリングでおなじみのエスキーナ photo:Kei Tsuji海外のシクロクロスレースを観たことのある方なら、観客が(雪が降っていても……)ビールジョッキを片手にフリット(フライドポテト)を頬張る姿が印象に残っているのではないだろうか。野辺山シクロクロスは、こうした「観客の流儀」にも積極的だ。今年出展する飲食ブースを少し覗いてみよう。

関西シクロクロスでもお馴染みのタベルナ・エスキーナや、名古屋のEarlybirds Breakfast、千駄ヶ谷の盆栽自転車店カフェやBUCYO COFFEEやCOFFEE COUNTYは各地のシクロクロスでその美味を提供しており、野辺山シクロクロスには昨年に続いての出展となる。洗練された洋菓子を創造するパティスリィドゥ・ボン・クーフゥはアスリート用の補給食を作り販売するという。

先鋭的なメーカーによる出展も見逃せない。今年の野辺山シクロクロスのフライオーバーをブラックに染めるトレック・ジャパンは、スヴェン・ネイスも駆るハイエンドバイクBoone(ブーン)の試乗車を準備しているという。カワシマサイクルサプライのブースでは、チャレンジのタイヤをライナップし、三船雅彦氏を招いての「タイヤの選び方講座」を両日開催予定。ジェイピースポーツグループのブースには、シクロクロスの本場ベルギーのブランド「リドレー」の各ライナップや、試乗車が準備され、オフロードで実際に走ることができる。SimWorksはCielo By ChrisKingやHunter Cyclesといった個性的なバイクの展示と、会場限定グッズの販売が予定されている。

モトクロスインターナショナルからはシクロクロスでも活躍しそうな45NRTHのウインターブーツやALL CITY、Surlyの試乗車を用意。チャンピオンシステムはシクロクロス用スキンスーツを展示し、パナレーサーからは話題のタイヤ「グラベルキング」が登場する。メインスポンサーのRaphaもウェアやアクセサリーの物販を行なう。毎年好評の大会Tシャツ(通称「泥T」)は完売必至のため、早めに求めたいところ。「シクロクロス×カウベル」の応援スタイルのトレンドを作った野辺山シクロクロスカウベルももちろん販売される。

豪華な出場選手 観戦だけでも価値ある大会へ

エリート男子、女子はUCI公認レースとなる野辺山シクロクロス。そこに集うライダーは、全日本選手権と遜色の無い国内屈指の選手たちだ。さらに、例年アメリカを中心に海外選手が参加しており、今年はイタリアからも強豪選手が出場する。

全日本チャンピオンの竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ)全日本チャンピオンの竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ) photo:Kei Tsuji宮内佐季子(Team CHAINRING)は悲願の優勝なるか宮内佐季子(Team CHAINRING)は悲願の優勝なるか photo:Hideaki TAKAGI

イタリアU23王者のジョエーレ・ベルトリーニ(セライタリア・グエルチョッティ)イタリアU23王者のジョエーレ・ベルトリーニ(セライタリア・グエルチョッティ) photo:Hideaki TAKAGI1週間前の関西CXマキノを圧勝したアリチェ・アルツッフィ(セライタリア・グエルチョッティ)1週間前の関西CXマキノを圧勝したアリチェ・アルツッフィ(セライタリア・グエルチョッティ) photo:Hideaki TAKAGI


急遽参戦が決まったティム・ジョンソン(Cannondale/Cyclocrossworld.com)急遽参戦が決まったティム・ジョンソン(Cannondale/Cyclocrossworld.com) photo:Kei Tsuji今大会の招待選手として、イタリアの男女U23シクロクロスナショナルチャンピオンが来日している。前週のUCIレース関西シクロクロスマキノでは揃って優勝を上げており、その実力を見せつけている。エリート男子で走るのはジョエーレ・ベルトリーニ(セライタリア・グエルチョッティ)、女子はアリチェ・アルツッフィ(セライタリア・グエルチョッティ)で、ともに19歳、20歳という若さだ。

迎え撃つのは、マキノをパスしてワールドカップ・コクサイデを走った竹之内悠( ベランクラシック・ドルチーニ)を筆頭に、マキノ2位の小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)、マキノは3位だったが今シーズン勝ち星を重ねている山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)ら日本勢。女性は全日本チャンピオンの宮内佐季子(Chainring)や豊岡英子(パナソニックレディース)が迎え撃つ。

さらに、注目の海外選手の参戦が決定した。アメリカのシクロクロススター、ティム・ジョンソン(Cannondale/Cyclocrossworld.com)と今年のシクロクロス東京を制したザック・マクドナルド(Cyclocross Project 2015)の実力者2名の参加により、UCIレースの行方は混沌としたものに。例年になるハイレベルな争いとなる男女UCIレースに注目だ。



高まるシクロクロスブーム Rapha Cycle Club Tokyoで開催されたトークショー

Rapha Cycle Club Tokyoで開催されたトークショーRapha Cycle Club Tokyoで開催されたトークショー
野辺山シクロクロスのオーガナイザーでもあるRapha Japanの矢野大介氏野辺山シクロクロスのオーガナイザーでもあるRapha Japanの矢野大介氏 さて、大会1週間前には高まるシクロクロス熱を受け、ラファサイクルクラブ東京で野辺山シクロクロス観戦講座が開催され、会場を埋め尽くすほどの来場者が集った。参加者にシクロクロスとは?その魅力は?を説明したのは、野辺山シクロクロスのオーガナイザーでもあるRapha Japanの矢野大介氏。そこに野辺山の最上位カテゴリーを走るブレナン・ウォットリ選手もゲスト参加した。

シクロクロスに興味をもつ方を対象としたこのセミナーだったが、聞けば来場者の9割ほどが未経験の方。昨今のシクロクロスブームがごく一部のエンスーのためだけではないのだな、と認識させられたのであった。


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