国営アルプスあづみの公園のMTBパークにて、スペシャライズドアンバサダーの「やっちゃん」こと丸山八智代さんによるMTBスクールが開催された。初心者に向けて、MTBの基本の「キ」からレクチャーしてくれた一日をレポートしよう。



快晴のアルプスあづみの公園MTBコース。朝から多くの人が訪れた快晴のアルプスあづみの公園MTBコース。朝から多くの人が訪れた
キッズたちが楽しめるコースも園内には用意されているキッズたちが楽しめるコースも園内には用意されている レンタルバイクも充実しているレンタルバイクも充実している


グラベルカテゴリーの隆盛もあり、自然の中で楽しめるアクティヴィティとして注目を集めるオフロードライド。その中でも、王道中の王道となるのがMTBだろう。だが、舗装路よりも圧倒的に不安定な路面状況のトレイルで、不安なく遊ぶためには、ある程度の知識と技術が求められるのもまた事実。

楽しそうだからとMTBを買ってみたはいいものの、結局オフロードが怖くて舗装路しか走っていない、という人も多いハズ。あるいは、一度走ってみたけども怖い思いをした、というような方もいるだろう。

やっちゃん先生と顔合わせ。一日よろしくお願いします。やっちゃん先生と顔合わせ。一日よろしくお願いします。
最初のレクチャーはスキルアップエリアへ自転車を押し歩く瞬間から始まっている最初のレクチャーはスキルアップエリアへ自転車を押し歩く瞬間から始まっている
そんなMTB初心者のために、MTBの基本的な扱い方や走り方をレクチャーしてくれるセミナーが、今回レポートする"Enjoy the MTBエクスペリエンス"だ。講師を務めてくれるのは「やっちゃん」の愛称で知られる丸山八智代さん。

会場となるのは、長野県大町市にある国営アルプスあづみの公園のMTBパーク。大小のパンプトラックをはじめとしたスキルアップエリアに加え、初心者向けのダブルトラックのツーリングコースから本格的なシングルトラックまで整備された施設で、MTBの醍醐味を味わうにはこれ以上ないロケーションだ。

当初、7月の開催を予定していたこのスクールだが、新型コロナウィルスの感染再拡大や長雨による影響もあり、この時期に延期されることに。幸いなことに、今回は快晴に恵まれ絶好のコンディションの下で開催された。

タイヤの空気圧もトレイルライドでは重要な要素タイヤの空気圧もトレイルライドでは重要な要素 ホイールがしっかりと装着されているかも要チェックだホイールがしっかりと装着されているかも要チェックだ


ブレーキの握り方も重要事項。基本は1フィンガーで。やっちゃん先生曰く「ブレーキに指を掛けるのはシートベルトをするようなもの」ブレーキの握り方も重要事項。基本は1フィンガーで。やっちゃん先生曰く「ブレーキに指を掛けるのはシートベルトをするようなもの」
スクールは午前と午後の2回。より上手く走りたい!という経験者の方もちらほらいるが、多くの方は初めてのMTBライド、もしくはMTBは持っていてもオフロードは未経験という初心者だ。ちなみに私も似たようなものである。

まず受付前であいさつと自己紹介。そして、スキルアップエリアへ自転車を押して移動するところから既にレッスンは始まっていた!押し歩きながら右ブレーキと左ブレーキを交互にかけて、それぞれの挙動の差を体感する。前ブレーキを掛けたら詰まるけれど、後ろブレーキではタイヤがロックしたまま進んでいく、そんな挙動を体験しつつスキルアップエリアへ。

ブレーキの前後での役割の違いを体験ブレーキの前後での役割の違いを体験
レディポジションの取り方をレクチャー中レディポジションの取り方をレクチャー中 自転車の上に乗った状態でレクチャーしてくれる自転車の上に乗った状態でレクチャーしてくれる


まずは乗車前の確認から。車載してきた人も多いため、ホイールがきちんと装着されているか、ハンドルまっすぐか、確認方法を含めてレクチャーしてくれる。そこからは、ハンドル/ブレーキの握り方にはじまり、基本となるニュートラルポジションとレディポジションを実践方式で練習。

車体の中心に乗るニュートラルポジション、そしてそこから肘や膝の関節を曲げることで、重心や目線を下げつつ車体に加わる衝撃に備えるレディポジションは、トレイルへ走り出す前にしっかり習得しておきたい基本スキル。やっちゃん先生がしっかりとポジションをチェックしてくれ、ちゃんと出来るようになるまで反復練習できる。

やっちゃん先生のお手本をまずは見学やっちゃん先生のお手本をまずは見学
階段を下りるチャレンジも!階段を下りるチャレンジも!
さて、二つのポジションを学んだあとは、最初に実験した前後ブレーキの違いを乗車状態で体験するセッションに。緩めの坂を利用し、前ブレーキのみと後ブレーキのみで速度をコントロールしながら下ってくる練習だ。最後には後ブレーキを思いっきり掛けて、後輪をロックさせた状態を経験することで、タイヤが滑りだしたときの感覚を養う時間も取られた。

スキルアップエリアでのレクチャーを一通り終えた後は、いざトレイルへ。アルプスあづみの公園MTBパークには、初心者向けとなるダブルトラックの「ポタリングコース」、中級者向けにバームやパンプが用意された下りの「フロートレイルコース」、中上級者向けには本格的なシングルトラックの「テクニカルトレイルコース」という3つのコースが用意されている。

一通り基本を身に着けたらいざコースへ繰り出す一通り基本を身に着けたらいざコースへ繰り出す
まずは目線を下げて至近距離だけを見ながら走ってみる体験まずは目線を下げて至近距離だけを見ながら走ってみる体験
まずは初心者向けのポタリングコースで、ライド時の目線の置き方をレクチャー。ずっと遠くを見て走る場合、あえてタイヤのすぐ先だけを見て走る場合を体験し、それぞれのメリットとデメリットを味わうことで、必要に応じた目線の配り方を学んだのだった。それも、しっかりと幅広いコースが整備され安心して走ることができるからこそ。

登りのスイッチバックでは、走りやすいラインどりや目線の送り方などをレクチャー。先ほどの視線の置き方も合わせ、トレイルの状況をしっかりと把握する「トレイルスキャニング」の技術を学ぶのが、今回の大きな目的だ。

スイッチバックを登っていく。前走者のラインをトレースする練習だスイッチバックを登っていく。前走者のラインをトレースする練習だ
中級者向けのフロートレイルへ中級者向けのフロートレイルへ 大人顔負けのダウンヒルを披露する大人顔負けのダウンヒルを披露する


バームを使って走る参加者もバームを使って走る参加者も
さて、ここから先は今日学んだことを生かしつつ、本格的なトレイルライドを楽しむ集大成のような時間だ。午前の部はフロートレイルへ、午後の部はテクニカルトレイルへと針路をとりそれぞれのセクションの走り方のレクチャーを交えつつシングルトラックを楽しんでいく。

自転車の中心に乗ること、肘と膝を使って衝撃を吸収すること、前後ブレーキのバランス、路面状況を常に把握すること。フロートレイルもテクニカルトレイルも、ここまでに学んだこと全てが自然に活用出来るような要素が組み合わせられたコースとなっていて、まさにステップアップに最適。

最後にはこんなロックセクションも登場。一回止まってどうやって超えるかをレクチャー中最後にはこんなロックセクションも登場。一回止まってどうやって超えるかをレクチャー中
荷重を意識しながらロックセクションを越えていきます荷重を意識しながらロックセクションを越えていきます
走っているみなさんもメキメキと上達しており、傍から見ていても楽しそう。オフロードというととかく恐れられがちだけれども、しっかりと基礎から学べば半日でその魅力の本質に触れることができるのだ。

今回初めて本格的にMTBに触れた正真正銘のファーストタイマーの方が、あまりに楽しくて午前と午後、2回分受講してしまうなんてことも。それだけトレイルライドが魅力的ということであるが、なによりもその楽しさを伝えるやっちゃん先生のコーチング力あってこそ。さしずめMTBエヴァンジェリストといったところだろうか。

午後はテクニカルトレイルコースへ午後はテクニカルトレイルコースへ テクニカルトレイルには難しいセクションに注意書きがされているテクニカルトレイルには難しいセクションに注意書きがされている


U字状のセクション。まずは自転車を置いてイメージを作るU字状のセクション。まずは自転車を置いてイメージを作る
一人一人チャレンジ。最初は怖そうにみえたセクションを攻略できた嬉しさはひとしおだ一人一人チャレンジ。最初は怖そうにみえたセクションを攻略できた嬉しさはひとしおだ
今年の豪雨では窪地が池のようになってしまったのだとか。そんなことを教えてもらえるのもガイドツアーらしさ。今年の豪雨では窪地が池のようになってしまったのだとか。そんなことを教えてもらえるのもガイドツアーらしさ。 あづみの公園MTBパークのスタッフの皆さん。一日中温かい笑顔でお客さんを迎えていました。あづみの公園MTBパークのスタッフの皆さん。一日中温かい笑顔でお客さんを迎えていました。


また、この秋の間にもスクールを開催予定とのこと。MTBに興味のある方、買ってみたはいいものの走り方が分からない方。ぜひとも次回は参加してみては?


text&photo:Naoki.Yasuoka