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福本さんは「従来のピナレロに無い軽快感」と評価し、小西さんは「今、これ以上のモノは存在しない」と言い切った。ピナレロを知り、DOGMAを愛するプロショップスタッフ2人が注目のDOGMA Fに乗り、その走りを評価した。注目のインプレッションをお届けする。

DOGMA Fを、エキスパート2人がインプレッション

注目集まるDOGMA F。ピナレロを知り尽くした2人に登場頂き、テストを行なった注目集まるDOGMA F。ピナレロを知り尽くした2人に登場頂き、テストを行なった photo:Kenta Onoguchi
前作DOGMA F12のデビューから、僅か2年という短スパンでフルモデルチェンジを遂げたDOGMA F。イネオス・グレナディアーズに愛されたグランツール常勝血統の最新鋭機であり、ピナレロ開発陣が心血を注いだその走りにはいやが応にも注目が集まるというもの。

しかし、DOGMA F12から256gものシェイプアップを果たしたとは言え、それは主にフレームではなくハンドルやフレーム、フロントフォークを中心としたもの。使用素材も含め、新世代ONDAデザインを継承するフレームそのものに大きな見た目上の変化は無い。

しかし、果たして新世代のDOGMAの走りは、F12から飛躍的進化を遂げていたのだ。ペダルを1回転させただけで、歴代DOGMAを所有し乗り込んできた小西裕介さん(なるしまフレンド)と、ピナレロ専門店の店長を務める福本元さん(ペダリストピナレロショップ青山)の二人をして驚かせ、唸らせてしまった。ピナレロを知り尽くした二人を瞬時に高揚させたDOGMA Fの走りを以下に読み進めていってほしい。

インプレッションライダー プロフィール

小西裕介(なるしまフレンド)小西裕介(なるしまフレンド) photo:Kenta Onoguchi小西裕介(なるしまフレンド)

なるしまフレンド神宮店メカニックチーフ。長年実業団登録選手として活躍し、国内トップレベルのレーサーとしてホビーレースで数多くの優勝経験を持つ。レース歴は20年以上に及び走れるスタッフとして信頼を集めながらもメカニックの知識も豊富で、走りからメカまで幅広いアドバイスをお客さんに提供する。歴代DOGMAに乗り、マイバイクは細部までカスタムしたF12 DISK。

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なるしまフレンド


福本元(ペダリスト ピナレロショップ青山)福本元(ペダリスト ピナレロショップ青山) photo:Kenta Onoguchi福本元(ペダリスト ピナレロショップ青山)

東京都港区に構えるペダリスト ピナレロショップ青山の店長。中学生からロードバイクを楽しみ、高校に上がるとともに競技生活をスタート。実業団レースでE1まで昇格し、富士ヒルクライムでゴールドを獲得したレーサー。その経験を活かし、ショップではスクールなども担当。愛車はDOGMA F10。

ペダリスト ピナレロショップ青山
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CW:さあ、お二人のお話を聞かせて下さい。率直に、DOGMA Fはいかがでした?

小西:いやぁ驚きました。どこまで違うんだろう、と思ってたらすごく違いました。5m乗っただけでその違いは明らかです。一言で言うと、軽快で速いんです。F12は重厚感ある走りだったんですが、Fはすごく走りに軽快感が加わった。

「正直言って、今まで乗った中で一番良いバイク」「正直言って、今まで乗った中で一番良いバイク」 photo:Kenta Onoguchi
正直言って、今まで乗った中で一番良いバイクです。店舗でもたくさんのバイクに乗る中で「これはすごい!買い換えたい!」と思うバイクってほぼ無いのですが、これはそう思えました。 F12からの2年間でよくここまで素晴らしいモノを造ったな、と思います。この試乗車をこのまま乗って帰りたいくらいです。

福本:全く同感ですね。DOGMAらしい走りは根本にありながら、ガラッと変わりました。F12のDISCはパワーのある人が本質を引き出せるような雰囲気がありましたが、Fは持って軽いし、走っても軽い。軽量バイクに近い挙動ですから、長い登りを目指して走りたくなってしまうな、と。クルマで言う「バネ下が軽くなっている感じ」があって、それが全体的な加速感に繋がっていると思うんです。

小西:ハンドルも軽いし、フォークも軽い。そしてリアバックの挙動は同じDOGMAとは思えないほど軽さを感じます。リムモデルが必要かと思うくらい軽快感があるし、やっぱり今のディスクロードとして当然ながらダンシングなど左右差はありません。F12とそこまで見た目上の差がありませんし、この時代になっても自転車ってまだまだ進化するんだなと思います。単純に、ここまで違う良いモノを出してきたことに驚いています。

「長い登りを目指して走りたくなってしまいます」「長い登りを目指して走りたくなってしまいます」 photo:Kenta Onoguchi
CW:「軽くなった」とだけ聞くと、扱いが難しいのでは?という意見も出るかと思います。そのあたりはいかがでしょう?

福本:例えばコーナリングで安定感を欠くような危うさは一切ありません。そこが損なわれなかったのは凄いなと思います。F12が出て2年くらい経ちますが、研究が進んでいるんだな、と乗っていて感じます。一般的に軽くなれば下りでの不安感が出るものですが、Fは怖くない。ヘッドのベアリング規格が共通だからフィーリングが近い、ということもあると思うのですが...。

小西:いわゆる「ピナレロハンドリング」って、安定するときは安定して、クッと曲がるときは曲がってくれる。そのバランスが素晴らしいんです。F12と比べると車体の軽さなのかよりヒラヒラ感が増しているんですが、あくまでピナレロハンドリングの中での差です。ダンシングの振りは軽いですし、乗っていて気分がいいバイク。

軽くなっても「ピナレロハンドリング」はそのまま。意のままに操れるという軽くなっても「ピナレロハンドリング」はそのまま。意のままに操れるという photo:Kenta Onoguchi
CW:歴代DOGMAはずっと「オールラウンダー」を標榜してきました。その点に関してはどう感じましたか?

小西:軽快で速いし、上りの軽やかさが加わったので、誰にとっても「オールラウンド感」は体感できるようになったと思いますね。先ほども話しましたが、F12はあくまでも脚力のあるレーサーが乗った上でのオールラウンドレーサーという印象でしたが、ちょっと違います。私は基本的にソロで走ることが多いんですが、ソロって言い換えれば長時間個人タイムトライアルだから、エアロは効いていた方が良いですよね。「同じ時間でもっと遠くに行くことができますよ」あるいは「もっと早く帰ってこれますよ」って。

福本:モデルチェンジのサイクルが早いとは思いますが(笑)、F8からF10、F10からF12にモデルチェンジした時も走りの根本は変わっていませんし、F12からFになって軽快感は加わったものの、それはあくまで「ピナレロらしさ」の中の話であって、やはり間違いないな、と。値段も高くなって驚いたのですが、それ相応の理由を今回実際に試して理解できました。安心ですし、満足です。改めて自慢できるバイクになったな、と思います。買えるなら、買うべきだな、と。

「F8、F10、F12、そしてF。短スパンなのに確実に進化していることがすごい」「F8、F10、F12、そしてF。短スパンなのに確実に進化していることがすごい」 photo:Kenta Onoguchi
「価格に見合う走りは絶対にある。自慢できるバイクです」「価格に見合う走りは絶対にある。自慢できるバイクです」 photo:Kenta Onoguchi
小西:スポーツバイク、特にハイエンドになればなるほど、ここ最近はエアロと軽さのせめぎ合いですよね。私の個人的主観ですが、F12はエアロをとったために少し軽さが犠牲になっていた。F10(リムブレーキ)から乗り換えた時にあまり軽快感は感じなかったんです。ただしそれでも、同じ峠でパワーメーターの数値を揃えて走るとF10よりもF12の方が速かった。それはエアロしかり、リアバックのトラクション向上だったりと様々な要因があるのですが、Fはさらに走りを高めてきたので、単純にすごいバイクだなと思います。

福本:ここまで良いとリムブレーキ仕様も試してみたくなりますね。ライトウェイトのホイールだったら簡単に6.8kgを下回ってしまいそうですし。メーカーがX-LIGHTは必要ない、というのも納得です。

CW:どのようなユーザーにマッチするバイクでしょうか?レーサーはもちろんだと思いますが...。

福本:価格的にもそれなりに余裕がある方からオーダーを頂くことが多いのですが、Fになって忖度なしに勧めやすくなりました。乗りこなそうとするならばフィジカルがあることが前提となってきますが、脚力やスキルを問わずこのバイクは楽しめる。世界最高レベルの価格ではありますが、それに見合ったものは確実にある。

「脚力やスキルを問わず楽しめるバイクだと思います」「脚力やスキルを問わず楽しめるバイクだと思います」 photo:Kenta Onoguchi
フロントフォークは58gダイエット。ベアリング規格はF12と共通だフロントフォークは58gダイエット。ベアリング規格はF12と共通だ photo:Kenta Onoguchi25g軽くなったというヘッドセットを確認。当然ながら安全性を削ぐような作りは見受けられない25g軽くなったというヘッドセットを確認。当然ながら安全性を削ぐような作りは見受けられない photo:Kenta Onoguchi

小西:これまでDOGMAって、強い人ほど高い評価をつけるバイクだったんですよね。でも、このFはそうでありながら俊敏さが加わった、本当のハイエンドバイク。今の技術でこれ以上の物はない、と言えます。ここまで来るとダメなところなんて一切ありません。価格的にも金銭的に余裕のあるホビーユーザーが購買層の中心となるはずですが、これなら絶対的に勧められる。ちょっとサイクリングに出かけるだけでも素晴らしさが分かりますし、その時間をすごく特別なものにしてくれるはずですから。Fに乗り、何の不満もなく走りを楽しんで欲しいと思いますね。

福本:そもそもの走りのレベルが高いので、例えば安定感や乗り心地を高めるために太めのチューブレスタイヤを入れたり、そういうカスタマイズの方向でも全くもってアリですよ。脚力や運転スキルを持ち合わせた経験者であれば、このバイクの走りはすぐに理解できると思います。

「今の技術でこれ以上の物はない、と言えます」「今の技術でこれ以上の物はない、と言えます」 photo:Kenta Onoguchi
小西:ピナレロは走りや戦績だけで語られがちですが、工業製品としての仕上がりも素晴らしいんですよ。精度が出ているからディスクブレーキの調整が簡単に出せるし、ケーブルルーティングもしっかり考えられていて組む際のストレスがありません。フォークエンドの剛性があるから僕のF12もダンシングでブレーキが鳴るなんてことはありませんし、剛性と精度はほかブランドと全然違います。そういうブランドの「質」に関わる部分も完璧です。非常に高価ですが、ちょっと無理しても良いのでは?と思える素晴らしいバイクでした。
提供:ピナレロジャパン 
制作:シクロワイアード編集部,photo:Kenta Onoguchi