レーサーを中心に、厚い支持を受けるカナディアンブランド、サーヴェロ。オールラウンドロード「R」、エアロロード「S」に続くカテゴリーとして新たにデビューさせたエンデュランスロード「Cシリーズ」のハイエンドモデル「C5」をインプレッションした。



サーヴェロ C5サーヴェロ C5 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
フィル・ホワイト氏とジェラルド・ブルーメン氏によるタイムトライアルバイク開発を起源とするサーヴェロ。レーシングバイクとしてのエアロダイナミクス、そしてレーシングバイクとしての軽量性を追求した設計は同社の大きな特長であり、オールラウンドロード「R」、エアロロード「S」、タイムトライアルバイク「P」、トラックバイク「T」らは、いずれもレーシング志向の強い高級マシンとして高い支持を集めてきた。

そんなサーヴェロが「#ConquerEveryRoad(全ての道を征服するために)」というコンセプトの日の本に、あらゆるコンディションの路面に対応した高い走破性を持ったエンデュランスロードとして2015年にデビューさせたのが「C」シリーズである。同社のこれまでの競技にフォーカスしたストイックな方向性とは全く異なるバイクとして誕生している。

前方を円形、後方を角形としたスクオーバル形状が如実に現れたシートチューブ前方を円形、後方を角形としたスクオーバル形状が如実に現れたシートチューブ シートチューブはBBに近づくにつれて広がるフレア形状とされパワー伝達を高めるシートチューブはBBに近づくにつれて広がるフレア形状とされパワー伝達を高める 長めに設定されたヘッドチューブはくびれもなくストレートな形状長めに設定されたヘッドチューブはくびれもなくストレートな形状


その中でも、同社のトップグレードカーボンをフレーム素材に使用したハイエンドモデルが今回インプレッションを行った「C5」。ギミックを用いることなくカーボン積層と造形の工夫によって振動吸収性、そしてディスクブレーキに対応した剛性も確保しているあたりは流石サーヴェロと言える部分であり、その上でフレーム重量は850g(塗装/小物パーツ込み)と、ディスクエンデュランスロードの中では驚異的な軽さを達成している。

直進安定性と快適性を高めるために、各チューブには円形と角形を融合したサーヴェロ独自の「スクオーバル」形状をより扁平化したものを採用した。薄くデザインされたトップチューブもさることながら、特徴的な細くアーチを描くように緩く湾曲したシートステーは、左右でその形状を変えることで最適化され、よりリアの振動吸収性を高めている。

ワイヤー、ケーブル類はダウンチューブ上部に集約しフレームに内装されるワイヤー、ケーブル類はダウンチューブ上部に集約しフレームに内装される 細身のシートステーはアーチを描くように湾曲したデザインで振動吸収性を高める細身のシートステーはアーチを描くように湾曲したデザインで振動吸収性を高める

140mmディスクローターに12mmスルーアクスルの組み合わせ140mmディスクローターに12mmスルーアクスルの組み合わせ モデル名が記されたチェーンステー。チェーンによる傷つき防止のカバーが装備されるモデル名が記されたチェーンステー。チェーンによる傷つき防止のカバーが装備される


ディスクブレーキ用にしては異常に細いフロントフォークも大きなポイント。サーヴェロが誇る最先端エンジニアリングチーム「プロジェクト・カリフォルニア」が開発に協力しており、プロトタイプを150本も作成したという逸話も興味深いもので、細く軽量でありながら振動吸収性と剛性、ディスクブレーキに対応する強度を非常に高いレベルでミックスすることに成功している。

加えて、53mmもの大きなオフセット量を持たせたフォークのベンド形状は、アングル角71.1°と寝たヘッドチューブと組み合わせることで、直進安定に振ったハンドリングが追求されている。ロードバイクとしては他に類を見ない75mmに設定された低いBB下がりもバイクの低重心化に貢献し、フロントセンターは同社R3 DISCとの比較で23mm、リアセンターは15mmも延長されたジオメトリーとともに安定性を高める要因となっている。

ダウンチューブ裏にも石跳ねによるダメージを防ぐ樹脂製のプロテクターが配されるダウンチューブ裏にも石跳ねによるダメージを防ぐ樹脂製のプロテクターが配される 最大で31mmの太いタイヤ幅に対応した広いクリアランスを確保最大で31mmの太いタイヤ幅に対応した広いクリアランスを確保


BB位置が下がったジオメトリーにより相対的にハンドル位置が高くなり、ポジションの幅を広げるとともに、長めに設定されたトップチューブによりアップライトな乗車姿勢となり、あらゆる路面に対し体に負担なく操作しやすい乗り味も実現。

未舗装路走行でのフレームの傷つきを防ぐため、ダウンチューブ下部と右チェーンステーに装備された樹脂製のガードの存在も大きな特徴と言えるだろう。タイヤクリアランスに関してもグラベル走行を見据え、最大31mm幅まで対応するよう工夫されている。完成車パッケージは28mm幅タイヤがデフォルトでセットされる。

フロントブレーキのケーブルはフォークの肩より内装されるフロントブレーキのケーブルはフォークの肩より内装される 細身のブレード形状を採用したフォークは軽量性と快適性に貢献細身のブレード形状を採用したフォークは軽量性と快適性に貢献 前後ともにエンド部にはフェンダー装着用のダボが設けられている前後ともにエンド部にはフェンダー装着用のダボが設けられている


ディスクブレーキはフラットマウントかつ前後12mmスルーアクスルを採用。固定方法には独自の「セミフローティングシステム」を投入。これはエンドの左右の穴にわずかな遊びを持たせることで、アクスルのよりスムーズなセッティングを可能とし、レバーを締めると全てが固定されるという構造であり、ホイール脱着時の煩わしさを解消し、同時にブレーキパッドとローターの接触の原因となる僅かなズレも防止するという。

今回のテストバイクはコンポーネントにシマノ9000系デュラエースを搭載し、HEDのホイールをアッセンブルした完成車販売モデル。サーヴェロの新たな歴史を作った1台をインプレライダーはどう見るのか。早速インプレッションに移ろう。



ー インプレッション

「舗装路からグラベルまで自転車遊びの幅が広がる1台」渡辺勇大(GROVE港北)

元々私はマウンテンバイクから自転車歴をスタートさせているためダート走行に対するこだわりが強いのですが、このバイクはそんなオフロード畑の人でも満足できる楽しさがあります。荒れ地では路面追従性の高さが際立ってグリップ力が強く、とても気持ち良い走行フィールも特徴だと感じます。

「舗装路からグラベルまで自転車遊びの幅が広がる1台」渡辺勇大(GROVE港北)「舗装路からグラベルまで自転車遊びの幅が広がる1台」渡辺勇大(GROVE港北) フレームの剛性感はサーヴェロの昔のRシリーズから受け継がれたような、しなやかだけども、グッと力を込めると気持ちよく反応してくれる感覚。そこに独特な形状のリアセクションが加わることで、適度なしなりを発生させ、荒れた路面でも路面追従しパワーを効率よく路面に伝えてくれます。Rシリーズにあるような脚への反発は少ないので、非レース派の方でも乗りこなしやすいでしょう。

ボトムブラケット部には剛性を十分に感じますし、BBドロップが77.5cm(51サイズ)と低重心に設定されているため、バイクの安定感が高まり荒れ道の走破性向上に貢献しています。それによってエンデュランスロードにありがちな漕ぎ出しの重さもありませんね。

また乗り心地に関しては、柔軟性のあるシートステーがしなることによりサドルの上でも快適性をしっかり感じられます。歩道から車道に降りる10cmくらいの高さであったら、漕ぎながらでもクリアできてしまう程のストローク感があるように感じます。この部分はグラベルロードとして使った場合のグリップ感に通じる部分です。

ハンドリングに関しては380mmハンドルバーが装備されていることもあってか、少しクイックだと感じました。グラベルを走るのであればもう少し幅広で、できれば下ハンドルの方がワイドになっているものを使用するとより安定感が増すでしょう。

ベンドがかかった細身のフロントフォークとしなやかな構造のリア三角ですが、ディスクブレーキの制動力にしっかりと対応しており、ハードブレーキでもビビるような感覚はありません。28cというタイヤの太さも非常に良く、ダートでフルブレーキしてもしっかり路面に食いついてる感覚がありますね。

サスペンション無しでここまでのトラクションを実現しつつ、ペダルを一踏みすればロードバイク然とした反応性を感じる事ができるのは、凄いの一言です。オンロードはもちろん、グラベルも、場所をいとわず遊びたくなるバイクですね。フィールドが倍になるので、より自転車遊びの幅を広げてくれることでしょう。

「しなりを活かした高い走破性で枠にとらわれない走りが可能に」恒次智(サイクルショップフリーダム)

しっとりと柔軟性がある乗り味に対して、踏み込んでいくとレーサーのような乾いた加速をもたらしてくれる、しっかり走るコンフォートバイクといった第一印象ですね。グラベルのような荒れた路面を踏んでいく時には、シートステーの柔軟性による路面追従性が高く作用し、後ろから押されるように進んで行きます。

「しなりを活かした高い走破性で枠にとらわれない走りが可能に」恒次智(サイクルショップフリーダム)「しなりを活かした高い走破性で枠にとらわれない走りが可能に」恒次智(サイクルショップフリーダム)
見た目がコンフォートバイクのようなフォルムをしていますが、漕いだ時の反応性も良く、レーシーな味付けがなされています。特にベンドがかかり一見柔らかそうに見えるフロントフォークは、コーナリングでもよれることが無く、レースバイクらしいハンドリングで不安はありません。

踏み味はフレームのバネ感と硬さのバランスがちょうど良く仕上がっているため、踏み込むと適度なしなりを生みながら加速してくれます。登坂ではケイデンス高めでクルクルとペダルを回転させて登っていくスタイルの方が合っていると思います。

アップライトなジオメトリーは平地や登りを走る場面ではとても楽。反面、舗装路を高速で下るようなシーンに対しては少しふわっとした浮遊感を感じる事があるかもしれませんが、、それもハンドル部分のセッティングで解消出来る範囲なので、ポジションを煮詰めていけば問題ないでしょう。

タイヤクリアランスも広く設定されており、太めのタイヤを嵌めてグラベルで遊ぶような走りもできますし、もちろん25c程のタイヤを嵌めてロードバイクらしくオンロード走行も楽しめます。枠にとらわれない自由度の高い走りができるのは魅力的ですね。

プライスだけで見れば非常に高価かと思うかもしれませんが、その上質な乗り味やバランスの良い反応性、特にリアセクションの柔軟性能はこの金額に見合うだけの価値をしっかり秘めていますので、予算が許すなら購入して損はないと感じました。

サーヴェロ C5サーヴェロ C5 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
サーヴェロ C5
フレーム:フルカーボン
フォーク:Cervelo All-Carbon, Tapered C5 Fork for Disc
サイズ:48、51、54、56
価格:C5 デュラエースDi2完成車:1,400,000円(税抜)
   C5 デュラエース完成車:1,100,000円(税抜)
   C5 フレームセット:680,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

渡辺勇大(GROVE港北)渡辺勇大(GROVE港北) 渡辺勇大(GROVE港北)

横浜市港北区に店舗を構えるGROVE港北の店長。元MTBのダウンヒルプロライダーであり、20年以上に渡ってレース活動を行ってきたベテラン。その経験を活かしトータルとしての乗りやすさを求めるフィッティングやバイクセッティングに定評がある。ロードやMTBなど幅広くスポーツバイクをお客さんと一緒に遊びその楽しさを伝えていくことを大切にしている。愛車はスペシャライズドTarmac S-Works。

CWレコメンドショップページ
GROVE港北HP

恒次智(サイクルショップフリーダム)恒次智(サイクルショップフリーダム) 恒次智(サイクルショップフリーダム)

岡山県岡山市に店舗を構えるサイクルショップフリーダムの店長。速さやスタイルに囚われることなく自由に自転車を楽しむのがショップのコンセプト。MTBから自転車を始め、クロスカントリーレースやロードの実業団レース等にも参加、自転車歴は20年以上。最近はツーリングやトレイルライドにも力を入れる。愛車はキャノンデールのSUPERSIX EVO HI-MOD。そしてホンダS2000やロータスエリーゼ、エキシージなどなど。

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サイクルショップフリーダムHP

ウェア協力:Pandani
ヘルメット&アイウェア協力:KASK

text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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