ミラノまで8ステージを残して早くもスプリンターたちの出番は終了。つまり翌日からは連日マリアローザ争いが繰り広げられる。総合上位陣にとって最後の平穏な1日となったジロ第13ステージを振り返ります。



先導車はアルファロメオ新型ジュリア先導車はアルファロメオ新型ジュリア
トロフェオセンツァフィーネとマリア像トロフェオセンツァフィーネとマリア像
曇り空にたなびくコロンビア国旗曇り空にたなびくコロンビア国旗
ジロの警備を行っているのは主にポリツィア(国家警察)で、アルファロメオの新型ジュリアが先導パトカーとして導入されている。ここにBMWのモト数十台が加わり、テキパキとローテーションを組んでコースに交通規制を敷いていく。ローリング規制と言うべきか、レースの進行に合わせて順次規制していくため、一般生活への影響は最小限に抑えられている。

ポリツィアと協力してレースの安全を守っているのがカラビニエーリ(国家憲兵)で、他にも地元のポリツィア・プロヴィンチャーレ(地方警察)やポリツィア・ムニチパーレ(自治体警察)も参加。イタリアには警察の種類がいくつもあって、ジロに関係ないところではグアルディア・ディ・フィナンツァ(財務警察)やポリツィア・ペニテンツィアリア(刑務警察)などのパトカーも走っている。

ポリツィアとカラビニエーリの住み分けは分かりにくく、どの組織がどの分野を担当しているのかイタリア人に聞いてもはっきりした答えが返ってこない。ざっくり言うと、内務省所属のポリツィアは交通違反や軽犯罪などの治安維持が主な仕事で、軍事組織の一面もある国防省所属のカラビニエーリは重大事件を担当するとともに海外での平和維持活動を行っている。仮に何かトラブルが起こった場合はポリツィアかカラビニエーリのどちらに連絡しても問題は無い。車上荒らしに遭った時の通報先はポリツィア(番号112)ではなくカラビニエーリ(番号113)だった(経験者談)。

グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)が履くシューズのBOAはオーストリアカラーグレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)が履くシューズのBOAはオーストリアカラー
マリアローザのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)がやってきたマリアローザのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)がやってきた
逃げるパヴェル・ブラット(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)ら3名逃げるパヴェル・ブラット(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)ら3名
平坦路を逃げ続けるマテイ・モホリッチ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)ら3名平坦路を逃げ続けるマテイ・モホリッチ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)ら3名
パルマの旧市街を進むプロトンパルマの旧市街を進むプロトン
パルマの街を通過するマリアローザパルマの街を通過するマリアローザ
この日、ブロックハウス麓で落車したGことゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)がスタートしなかった。モンテファルコの個人タイムトライアルでは2位の結果を残していたが、肩に続いて膝の状態が悪化したためリタイアを決めた。「この先も走り続けることは可能だが、先頭争いに加わることができずにただ後ろで苦しむだけ」とするトーマスは7月のツール・ド・フランスに目標をスイッチした。

チームスカイはジロととことん相性が悪い。2013年はブラドレー・ウィギンズ(イギリス)が第13ステージDNS、2015年はリッチー・ポート(オーストラリア)が第16ステージDNS、そして2016年はミケル・ランダ(スペイン)が第10ステージDNF。マリアローザを狙うエースの途中リタイアが続いている。

その一方で、1年前にミケル・ニエベ(スペイン)がステージ優勝を飾ってマリアアッズーラを手にしたように、エースの離脱によりチームスカイのアシストたちに山岳ステージでの活躍のチャンスが巡ってくる。すでに総合争いが関係ない(最高位ランダは43分遅れ)ため、3週目のアルプスやドロミテでケニー・エリッソンド(フランス)やセバスティアン・エナオ(コロンビア)らが活発に動いてくることは容易に想像できる。ダリオ・チオーニ監督も「このジロにおける目標を一から見直さないといけない」と作戦変更を明言している。

ロット・ソウダル、ウィリエール・トリエスティーナ、クイックステップフロアーズが集団牽引ロット・ソウダル、ウィリエール・トリエスティーナ、クイックステップフロアーズが集団牽引
人垣ができたパルマの街を通過する逃げグループ人垣ができたパルマの街を通過する逃げグループ
曇り空に浮かぶ三色の100曇り空に浮かぶ三色の100
フェンスぎりぎりを突き進むフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)フェンスぎりぎりを突き進むフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)
トルトナでの一番の思い出は2010年ジロ第5ステージ。新城幸也(当時Bboxブイグテレコム)が逃げに乗って3位に入ったステージで、中間スプリントポイントが置かれていた街がトルトナだった。7年前、逃げるユキヤに向かって撮影もほどほどに声いっぱい叫んだことを覚えている。当時の現地レポートを読み返すと、ちょっとグッとくる。自分で書いておいてなんなんですけど。

ジロ公式リリースは「アンストッパブル(誰にも止められない)」という形容詞を用いてガビリアの勝利を讃えた。発射台役のリケーゼからはぐれてしまったため、かなり後方からのスプリントを強いられながら、波に乗るコロンビアンスプリンターのスピードは別格だった。ガビリアは残り380mを21秒間、平均スピード64.8km/hで駆け抜けている。下り基調だったことからスプリントの最高スピードは72.8km/h。出力は平均1,098W、最大1,478Wだった。

22歳でステージ4勝は2004年のダミアーノ・クネゴに続く史上2人目。1つのグランツールでステージ4勝という記録はコロンビア人最多タイ。参考までに、ジロの最年少ステージ優勝は1936年のオリンピオ・ビッズイ(19歳と298日)で、戦後の記録しては1952年のニーノ・デフィリピス(20歳と76日)。地道に中間スプリントでもポイントを稼いでいるガビリアは315ポイントという圧倒的な獲得ポイントでマリアチクラミーノをキープしており、仮にニーバリ(29ポイント)やキンタナ(20ポイント)のどちらかが残る8ステージ全て優勝しても150ポイントしか稼げないので逆転は不可能。ミラノまでたどり着くことができればガビリアが文句なしのポイント賞獲得となる。

最後に、ジロ開幕前夜に発覚したバルディアーニCSFのドーピングスキャンダルのアップデート。GHRPs(成長ホルモン放出ペプチド)の陽性反応が検出されたニコラ・ルッフォニとステファノ・ピラッツィの再検査が行われた結果、Bサンプルも陽性だった。ルッフォニとピラッツィは出場停止処分を受けることになる。そして、12ヶ月間に2人のドーピング違反者を出したバルディアーニCSFには15日から45日間の出場停止処分が与えられる予定。UCIの懲罰委員会が早期にチームの処分を決定した場合、バルディアーニCSFはジロから撤退せざるを得ない状況も十分に考えられる。イタリアに追い風は吹いていない。

フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)がステージ4勝目フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)がステージ4勝目
豪快にスプマンテをあけるフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)豪快にスプマンテをあけるフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)
チーム成績トップの表彰でピーター・セリーを担ぎ上げるフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)チーム成績トップの表彰でピーター・セリーを担ぎ上げるフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)

text&photo:Kei Tsuji in Tortona, Italy