フルモデルチェンジを果たし5代目へと進化を遂げた、コルナゴのレーシングバイク「CLX」をインプレッション。ハイエンドモデルのV2-rを踏襲したデザインをミドルグレードに落とし込み、使い勝手にも配慮したアップデートを加えた1台を紹介しよう。



コルナゴ CLX(マットブラック)コルナゴ CLX(マットブラック) (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
60年以上続く老舗イタリアンブランドの歴史と伝統を現代まで引き継ぐコルナゴ。溶接工であったエルネスト・コルナゴ氏が自身の名を冠し興した同ブランドは、創業当初からロードレースシーンと深い関わりを持ち幾人もの世界王者を輩出。クローバーマークでお馴染みのブランドロゴには、その輝かしい歴史を主張するかのように虹色のアルカンシエルがあしらわれているのも特徴だ。

近年で言えばBboxブイグテレコムやユーロップカーで走った新城幸也、ウィグル・ハイファイブに所属した萩原麻由子や與那嶺恵理など、世界トップレベルのサーキットを駆けてきた日本人もコルナゴバイクを使用してきた。2017シーズンからはワールドチームのUAEチームエミレーツをサポートし、ファビオ・アルやアレクサンドル・クリストフといった一流選手の走りを支えている。

細身のシートステーはエンド付近で外側にベンドしたデザインに細身のシートステーはエンド付近で外側にベンドしたデザインに エアロ効果も高いカムテール形状のダウンチューブ。ブランドロゴも2019モデルから一新したエアロ効果も高いカムテール形状のダウンチューブ。ブランドロゴも2019モデルから一新した フロントフォークはコルナゴ伝統のストレート形状。フルカーボンモノコック製で剛性を確保フロントフォークはコルナゴ伝統のストレート形状。フルカーボンモノコック製で剛性を確保

そんなコルナゴのラインアップで10年以上に渡って展開されているミドルグレードカーボンバイクが「CLX」だ。2007年にデビューした初代は、トップチューブからシートステーにかけて大きくアーチを描いたデザインや縦方向に扁平させたリーフ形状のチェーンステーなどを採用し、快適性にも配慮したグランフォンドレーサーとして登場した。

その後アップデートを加える度にCLX2.0、3.0と数字を更新したモデル名へ変更。2016年モデルでは形状を一新し、当時のハイエンドモデルV1-rのデザインを引き継いだ軽量レーシングバイクへと変容を遂げている。そして今年、新たにV2-rの登場に伴いCLXもついに5代目へとフルモデルチェンジを果たすことに。

V2-rを踏襲したチューブ集合部のデザイン。シートクランプは内蔵式で空力性にも配慮V2-rを踏襲したチューブ集合部のデザイン。シートクランプは内蔵式で空力性にも配慮 ヘッドチューブにはクローバーマークのブランドロゴを入れる。シフトケーブルはフレーム横から内装されるヘッドチューブにはクローバーマークのブランドロゴを入れる。シフトケーブルはフレーム横から内装される

BB規格はコルナゴ独自のスレッドフィット82.5で、音鳴りやフレームへの負荷も抑えるBB規格はコルナゴ独自のスレッドフィット82.5で、音鳴りやフレームへの負荷も抑える リアエンドまでカーボンの一体成形とし剛性と軽量性を追求リアエンドまでカーボンの一体成形とし剛性と軽量性を追求

基本的なフレームデザインは上位モデルであるV2-rをベースとし、細身でシンプルなアウトラインとプロ選手の要求を満たすレーシングジオメトリーを採用することで優れた軽量性と走行性能を両立。カムテール形状のダウンチューブやフレーム内蔵式のシートクランプなども引き継いでおり、エアロダイナミクスを高める設計も盛り込まれる。

その上で使用するカーボングレードを変更することで剛性を抑え、より幅広いライダーが扱いやすい快適性もバランスしたフレームに仕上がる。細身のシートステーが振動吸収性を、コルナゴ独自のスレッドフィット82.5を採用したボリュームあるBBがパワー伝達性を高め、フレームエンドまでカーボンモノコック成形されることで軽量化にも繋げている。

トップチューブ上部にあしらったモデルロゴ。グレー、シルバー、ホワイトのライングラフィックを各所に配置トップチューブ上部にあしらったモデルロゴ。グレー、シルバー、ホワイトのライングラフィックを各所に配置 内装されたケーブルはBB下の樹脂パーツを通るルーティングだ内装されたケーブルはBB下の樹脂パーツを通るルーティングだ

またV2-rでは専用のエアロシートポストを採用したが、今作では汎用性の高い27.2mm径のラウンドタイプへ変更。アルミ製のヘッドを持つオリジナルのカーボンシートポストがアセンブルされる。加えてV2-rではエアロ効果の高いダイレクトマウントとしていたブレーキも、シングルボルト式のノーマルマウントへ変更されており、各所で使い勝手に配慮したグレード相応の最適化が進められている。

ヘッドからフォークにかけては新設計とし、オリジナルのデザインとした点もポイントだ。コルナゴ伝統のストレートフォークが高いハンドリング性能を担保するとともに、最大28Cまで対応したタイヤクリアランスを確保。ヘッドチューブはフォーククラウンと一体化したインテグレートデザインを新たに採用し、両サイドからケーブルが内装されるインターナルルーティングも実現している。

ブレーキはV2-rとは異なりノーマルマウントタイプを採用するブレーキはV2-rとは異なりノーマルマウントタイプを採用する 汎用性の高いラウンドタイプのカーボンシートポストをアセンブル汎用性の高いラウンドタイプのカーボンシートポストをアセンブル ヘッドチューブはCLXのために新設計。フォークとシームレスに繋がったインテグレートデザインを採用ヘッドチューブはCLXのために新設計。フォークとシームレスに繋がったインテグレートデザインを採用

ラインアップはフレームセットとシマノULTEGRA完成車の2種類を用意。完成車はR8000系ULTEGRAの機械式コンポーネントで組まれ、ハンドルとステムはデダのZERO1を、ホイールはシマノWH-RS11がアセンブルされる。フレーム自体は電動式/機械式コンポーネントに両対応のため、後々のアップグレードも可能となっている。

また2019年モデルよりコルナゴの全てのモデルでロゴの字体が変更されており、よりモダンな雰囲気を醸すルックスにも注目だ。今回はコルナゴオリジナルパーツとシマノDURA-ACEで組み上げた試乗用仕様のバイクでテスト。ハイエンドモデルの性能を引き継ぐ、コルナゴのミドルグレードレーサーの実力とは。それでは、インプレッションへ移ろう。



― インプレッション

「コルナゴらしい安定感のあるハンドリングが光る1台」藤岡徹也(シルベストサイクル)

CLXと言えば私も選手時代に乗っていた馴染みのあるバイクです。元々よく走る良いバイクでしたが、今作はさすが最新版という仕上がりで重量の軽さや快適性が増して進化しているなという印象でした。ジオメトリーがトップモデルと同じとあって、コルナゴのレーシングバイクの走りはこのグレードであっても引き継がれていると感じます。

最も特徴的なのはハンドリングの安定感ですね。代々受け継がれてきたフレームの設計やストレートフォークがコルナゴらしい挙動を生み出しており、コーナーでも下りでも優れたコントロール性を見せてくれます。コーナーを抜けたときに自然とバイクが安定してくれるので、体重移動やハンドル操作など微調整をしなくても気持ちよく走ってくれるんですよね。

「コルナゴらしい安定感のあるハンドリングが光る1台」藤岡徹也(シルベストサイクル)「コルナゴらしい安定感のあるハンドリングが光る1台」藤岡徹也(シルベストサイクル)
レーサーからするとかなり下りを攻められるバイクに仕上がっています。旧モデルのCLXを使用していたときの話ですが、ツール・ド・熊野のレースで登りで遅れた1分のタイム差を下りで追いつくことができたんです。高速のダウンヒルからガツンとブレーキをかけても思ったとおりに曲がってくれますし、その後も勝手にバイクの方から安定してくれるようなイメージで、シリアスなレースシーンでもアドバンテージとなってくれますね。

もちろん高い安定性はライダーの安全や快適性にも繋がる部分で、あらゆる人に恩恵のある性能だと思います。ゼロ発進の気持ちよさや漕ぎ出しの軽さはあまり感じませんが、BBとフロント周りの剛性感がしっかりしており、パワーをかけて踏み込んでいった時の加速感や高速域からのひと伸びといった走りで真価を発揮してくれるでしょう。

V2-rをベースにしたレーシングな走りはそのままに、汎用性の高いパーツ規格に変更している点は使いやすさがあって良いですよね。身長が小さめな人であればゼロオフセットのシートポストに変えても良いでしょう。スレッドフィット82.5のBBは整備性もよくレースでバイクを酷使する人もトラブルなど対処しやすいと思います。

価格やラインアップの位置付けだけで見てしまうとミドルグレードになってしまいますが、走りの性能は全くそんなことはなく、至って高性能なレーシングバイクだと感じました。アップダウンのあるロードレースなどで踏み返しが多くても最終局面までペースを維持できる、そんな粘りのある走りがイメージできますね。実業団レースなど落車を嫌ってハイエンドモデルを使用したくないライダーに非常にオススメです。このCLXでもレースを十分に戦えるパフォーマンスを持っていると思います。

「踏んだ時の加速が気持ち良いBB周りの剛性感が特徴」遠藤誠(GROVE港北)

「踏んだ時の加速が気持ち良いBB周りの剛性感が特徴」遠藤誠(GROVE港北)「踏んだ時の加速が気持ち良いBB周りの剛性感が特徴」遠藤誠(GROVE港北) コルナゴの中でも最軽量のV2-rをベースにしたと聞くと、軽さが押し出たモデルなのかなと想像しましたが、それ以上に印象的だったのがフレームの剛性感ですね。幅広のBB規格とその周りのフレームのボリュームも相まって、入力したパワーを受け止めてグイグイ進んでくれる加速感が非常に気持ち良いバイクに仕上がっています。

ただ、ガチガチに硬さを感じる乗り味ではなく、華奢なリア三角やベンドを加えたシートステーによって振動吸収性も確保されている様子で快適性は損なわれていません。芯に硬さを残しつつ優しさで包んだようなイメージで、剛性と快適性のバランスが絶妙。高い走行性能を備えつつ、あらゆるライダーに乗りやすい味付けが施してあると感じました。

加えて好印象だった点が直進安定性の高さですね。フレーム設計のおかげなのか車体のブレがなく、コーナリングも下りのシーンも安心してこなすことができます。バイクを倒した後も起き上がってくる挙動がマイルドで、ハンドリングを意識していなくてもキレイに思った通りのラインを描いて進んでくれました。平坦であれば手放しでもバイクがふらつかず、走りながらのウェアの脱ぎ着もしやすそうです。

高速域に関しては、昨今エアロを重視したモデルが多く出ているのでスピードの伸びなどはやや劣る部分もありますが、40km/h以上で巡航などタフなレースペースでもなければ不満は全くないと思います。登りの軽快性も十分でオールラウンドにどのコースもこなしてくれる性能だと感じました。

今回アセンブルされたDURA-ACEの軽量ホイールでもヒラヒラとした不安定感はなく、むしろフレームから来る安心感が大きく感じられました。剛性の高いDURA-ACEのクランクもフレームとベストマッチで、ハイエンドパーツで組んでも満足度の高い走りを見せてくれるでしょう。個人的にはカーボンのセミディープホイールなどを合わせると、もっとレーシーで魅力的なバイクに化けるのではないかなと期待してしまうほどです。

1台目のバイクをある程度アップグレードしていて、そこからパーツを載せ替えると考えたときにぜひ選択肢に入れて欲しいフレームですね。ハイエンドまでは手が届かないけど良く走るバイクが欲しいという人にぜひオススメです。完成車の価格もバイクの性能を考えれば魅力的で、さらにフレームの性能を引き出す上位モデルのホイールに交換してもらえるとより満足度の高い仕上がりになると思います。

コルナゴ CLX(マットブラック)コルナゴ CLX(マットブラック) (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
コルナゴ CLX
カラー:ホワイト、ブラック/レッド、マットブラック、グレー(フレームセットのみ)
サイズ:420S、450S、480S、500S、520S、540S、560S、580S
価格:
フレームセット 250,000円(税抜)
シマノULTEGRA完成車 390,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

藤岡徹也(シルベストサイクル)藤岡徹也(シルベストサイクル) 藤岡徹也(シルベストサイクル)

大阪府箕面市にあるシルベストサイクルみのおキューズモール店で店長を務める。マトリックスやNIPPOに所属した経歴を持つ元プロロードレーサーで、ツール・ド・フクオカ優勝、ツール・ド・熊野の個人TT2位などの実績を持つ。現在は実業団レースやロングライド、トライアスロンなど幅広く自転車を嗜みスタッフとして「自転車の楽しさを伝える」ことをモットーに活動している。

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遠藤誠(GROVE港北)遠藤誠(GROVE港北) 遠藤誠(GROVE港北)

神奈川県横浜市のプロショップ、GROVE港北の店長。元々はMTB乗りとして自転車を嗜む内に現在の系列店舗スタッフとして働くように。自転車歴は10年以上でロードバイク、MTB両方に精通する豊富な知識と経験から、メカ・ポジション・乗り方まで幅広いアドバイスを提供する。”初心者にもわかりやすく”を常に心がけ、お客さんと一緒に自転車を楽しむことを重視している。

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ウェア協力:Funkier(ファンキアー)

text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO