スプリンターが争うマリアチクラミーノ(ポイント賞)、クライマーのマリアアッズーラ(山岳賞)、25歳以下によるマリアビアンカ(ヤングライダー賞)。2021年ジロ・デ・イタリア各賞を狙う注目選手を紹介します。



マリアチクラミーノ ポイント賞

ステージ4勝目を挙げ、2020年大会のマリアチクラミーノを獲得したアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)ステージ4勝目を挙げ、2020年大会のマリアチクラミーノを獲得したアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) photo:LaPresse
最強スプリンターたちによって争われるのが、2018年より赤から紫のシクラメンカラーに戻ったマリアチクラミーノ。コース途中に設定されたスプリントポイントとフィニッシュラインの合計ポイントで争われ、平坦ステージは山岳やタイムトライアルよりも配点が高いことから、スプリンターたちによる戦いとなる。

今大会の集団スプリントで最も勝利に近いのは、今年3大グランツールへの出場を宣言しているカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)。ミラノ〜サンレモに向けて登坂力を高め、「登れるスプリンター」へと進化を見せたユアンは、ジャスパー・デブイスト(ベルギー)やロジャー・クルーゲ(ドイツ)など手練のリードアウトから勝利を狙う。しかし前述したように、タイトなスケジュールから2度目の休息日を待たずにレースを去る可能性が高いだろう。

UAEツアーで1勝を挙げているカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)UAEツアーで1勝を挙げているカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) (c)CorVos
ツール・ド・ロマンディでステージ優勝し、復調の兆しを見せているペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)ツール・ド・ロマンディでステージ優勝し、復調の兆しを見せているペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) (c)CorVos
マリアチクラミーノの最有力は復活の兆しが見えるペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)。昨年大会でステージ初勝利を収め、今年は新型コロナウイルス感染のためシーズンインが遅れたものの、直近のツール・ド・ロマンディで勝利を挙げるなどさすがの調整を見せている。

そこに挑むのはコフィディスに移籍後いまだワールドツアーでの勝利がないエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)。母国で行われるジロは通算ステージ5勝と相性はよく、弟アッティリオ・ヴィヴィアーニ(イタリア)の力も借りて再起のきっかけを掴みたい。

エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス) photo:LaPresse
別の意味でも注目度が高いのがディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)だ。昨年8月のツール・ド・ポローニュの危険走行により9ヶ月間の出場停止処分を受け、今大会が復帰後初レースとなる。だが2019年は15勝(チームTTを除く)、2020年も3勝とその実力に疑う余地はなく、それまでの力を発揮できればポイント賞でも間違いなく上位に入ってくる存在だ。

また地元イタリアの期待を背負うイタリア&欧州王者のジャコモ・ニッツォーロ(クベカ・アソス)や、2度のコロナ感染から快気したフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)、トップスプリンターの仲間入りを果たしたティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス)たちも虎視眈々と勝利を狙っている。
歴代ポイント賞受賞者
2020年 アルノー・デマール(フランス)
2019年 パスカル・アッカーマン(ドイツ)
2018年 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)
2017年 フェルナンド・ガビリア(コロンビア)
2016年 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)
2015年 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)
2014年 ナセル・ブアニ(フランス)
2013年 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
2012年 ホアキン・ロドリゲス(スペイン)
2011年 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)
2010年 カデル・エヴァンス(オーストラリア)
2009年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2008年 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2005年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2004年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 マリオ・チポッリーニ(イタリア)
2001年 マッシモ・ストラッツェール(イタリア)
2000年 ディミトリ・コニシェフ(ロシア)
マリアアッズーラ 山岳賞

2020年大会で山岳賞に輝いたルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFプロサイクリング)2020年大会で山岳賞に輝いたルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFプロサイクリング) photo:CorVos
総合順位の動向によって狙う選手も変動するマリアアッズーラ争い。2020年大会でステージ1勝と共に山岳賞を獲得したルーベン・ゲレイロ(ポルトガル)が今年も登場するが、総合上位を狙うヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションNIPPO)のアシストを担うため、昨年のように自由に動けるかは分からない。

一方、2019年の山岳賞ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)は、総合エースを予定していたヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)が右手首骨折が完治しないまま強行出場し、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)もステージ狙いと見られている。自身2度目の山岳賞獲得に動いてくるかもしれない。

また、マリアローザ狙いのサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)はもちろんのこと、2016年に山岳賞を獲得しているミケル・ニエベ(スペイン、バイクエクスチェンジ)もイェーツの成績状況で動く可能性がある。ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)、アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション)などもチャンスがあれば狙ってくるだろう。

ミラノ〜サンレモのポッジオでアタックするジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)ミラノ〜サンレモのポッジオでアタックするジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:CorVos
歓喜の表情でフィニッシュするゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ)歓喜の表情でフィニッシュするゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ) (c)CorVosアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション)もチャンスがあれば山岳賞を狙うだろうアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション)もチャンスがあれば山岳賞を狙うだろう (c)CorVos

歴代山岳賞受賞者
2020年 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル)
2019年 ジュリオ・チッコーネ(イタリア)
2018年 クリストファー・フルーム(イギリス)
2017年 ミケル・ランダ(スペイン)
2016年 ミケル・ニエベ(スペイン)
2015年 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア)
2014年 ジュリアン・アレドンド(コロンビア)
2013年 ステファノ・ピラッツィ(イタリア)
2012年 マッテーオ・ラボッティーニ(イタリア)
2011年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
2010年 マシュー・ロイド(オーストラリア)
2009年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
2008年 エマヌエーレ・セッラ(イタリア)
2007年 レオナルド・ピエポリ(イタリア)
2006年 フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン)
2005年 ホセ・ルハノ(ベネズエラ)
2004年 ファビアン・ウェーグマン(ドイツ)
2003年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2002年 フリオ・ペレスクアピオ(メキシコ)
2001年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2000年 フランチェスコ・カーザグランデ(イタリア)
マリアビアンカ ヤングライダー賞

マリアビアンカもテイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の手にマリアビアンカもテイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の手に photo:LaPresse
ゲイガンハートを引き離すべくアタックするジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ)ゲイガンハートを引き離すべくアタックするジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ) photo:LaPresse昨年は15日間、マリアローザを着用するホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)昨年は15日間、マリアローザを着用するホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos


25歳以下の選手を対象にしたマリアビアンカは、1996年1月1日以降に生まれた選手の中で最も総合タイムが良い選手に与えられる。若手の活躍が著しい近年は総合優勝者がそのままヤングライダー賞を獲得することも多く、昨年も総合優勝を果たしたテイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が獲得している。

今年の最有力候補は24歳のエガン・ベルナル(コロンビア)だろう。そこに昨年総合2位のジャイ・ヒンドレー(オーストリア、チームDSM)や、総合4位の22歳ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)、21歳レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)などとマリアローザの候補者たちが名を連ねる。

また25歳アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック)や23歳パヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)、成長著しい22歳のクレモン・シャンプッサン(フランス、AG2Rシトロエン)なども対象選手。若い力がイタリアの舞台でぶつかり合う。

総合とともに最有力候補のエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)総合とともに最有力候補のエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) (c)CorVos
頭角を現すアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)も注目だ頭角を現すアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)も注目だ (c)CorVos
歴代ヤングライダー賞受賞者
2020年 テイオ・ゲイガンハート(イギリス)
2019年 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)
2018年 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)
2017年 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)
2016年 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)
2015年 ファビオ・アル(イタリア)
2014年 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
2013年 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア)
2012年 リゴベルト・ウラン(コロンビア)
2011年 ロマン・クロイツィゲル(チェコ)
2010年 リッチー・ポート(オーストラリア)
2009年 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー)
2008年 リカルド・リッコ(イタリア)
2007年 アンディ・シュレク(ルクセンブルク)
1995年〜2006年 ジャージ未設定
その他の特別賞

ジロには中間スプリント賞(ステージ&総合)、10名以下のグループで5km以上逃げた距離で争われる逃げ賞(ステージ&総合)、ステージ成績と中間スプリントと山岳ポイントの合計で争われる敢闘賞(ステージ&総合)、チーム総合成績で争われるスーパーチーム賞、警告や罰金など処分の少ないチームを対象にしたフェアプレー賞が設定されている。

text:Sotaro.Arakawa

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