スイスのホイールブランドであるDTスイスが手掛けるロード用チューブレスカーボンホイール"ARC1400 DICUT 50"。優れた空力性能を備えつつ、軽さも備えたオールラウンドに使用できるレーシングホイールをインプレッション。



DTスイス ARC 1400 DICUT 50mmDTスイス ARC 1400 DICUT 50mm photo:Gakuto Fujiwara
高精度なスポークやハブ、リムの生産で知られるDTスイス。多くのホイールブランドが同社のパーツの供給を受けるほど、その性能と品質には高い信頼を寄せられているメーカーだ。

そんなDTスイスは個々のパーツだけでなく、コンプリートホイールもラインアップしている。オンロードからオフロードまで幅広いカテゴリーをカバーする中でも、豊富なバリエーションを誇るのがロードバイク用のラインアップだ。

オールラウンドモデルの"P"シリーズ、エンデュランスモデルの"E"シリーズとならび、エアロダイナミクスに着目したレーシングモデルが"A"シリーズ。今回紹介するARC 1400 DICUTは、Aシリーズの中でもセカンドグレードに位置するモデルだ。

ARC 1400 DICUTでは、50mmがラインアップの中ではもっとも低いリムハイトとなるARC 1400 DICUTでは、50mmがラインアップの中ではもっとも低いリムハイトとなる
リム形状は優れた空力性能を備えるリム形状は優れた空力性能を備える ハイエンドモデルにも採用されているDTスイスのエアロスポークハイエンドモデルにも採用されているDTスイスのエアロスポーク

240 DICUTハブを採用240 DICUTハブを採用
最高のエアロダイナミクスを目指し、DTスイスは空力のスペシャリストであるスイスサイドとタッグを組んだ。トライアスロンにおいて多くの実績を残すスイスサイドとの協業によって開発された"AERO+"テクノロジーに基づく断面形状のリムを採用することで、様々な角度の風に対して優れた空力性能を発揮する。穏やかな横風の条件であれば、空気抵抗の低減だけでなく、セイリング効果によって推進力を生み出すほどのエアロ効果を備えているという。

AERO+テクノロジーによってもたらされるのは空気抵抗の減少による直接的な速さだけではない。あらゆる角度の風を受けても、リムにかかる横力を均一化することでハンドリングへの影響を最小限に抑えることができると、DTスイスは言う。ふらつくことによる様々なデメリットを排除し、安定してロスの無いライディングを実現することもまた、速さに繋がる要素だといえるだろう。

リムハイトは80mm、62mm、50mmという3種類での展開。どのハイトもAERO+テクノロジーに基づく形状とされており、それぞれのライダーの脚質や想定コースによって使い分けることが可能だ。今回のテストホイールはラインアップ中最軽量の50mmハイトモデル。山岳も視野に入れつつ、高い空力性能を確保したオールラウンドホイールだ。

工具なしでフリーボディーを外せるため、メンテナンス性に優れる工具なしでフリーボディーを外せるため、メンテナンス性に優れる
スラム XDRやシマノ、カンパニョーロのフリーボディーを展開スラム XDRやシマノ、カンパニョーロのフリーボディーを展開 バルブのコア外しができるキャップが付属バルブのコア外しができるキャップが付属

DTスイスのデザインのチューブレステープDTスイスのデザインのチューブレステープ
前述したようにセカンドグレードとなるARC1400だが、ハイエンドモデルのARC1100とリムは共通となり、ハブおよびスポークがグレードごとの差となっている。ハブについても軽量かつ空力性能に優れたDICUTハブボディや、ベアリング間の距離を7mm拡幅しつつシンプルな構造に仕上げたラチェットEXPといったDTスイスの誇るテクノロジーはハイエンドモデルと同様。

唯一異なるのがベアリングで、ARC1400はスチールベアリングを採用(ARC1100はセラミックベアリング)しているのが大きな違いとなる。スポークについては、エアロライトIIとエアロコンプIIを使用しているARC1100に対し、ARC1400はエアロコンプを採用することでコストダウンを図り、ARCシリーズの優れた性能をより身近なものとしている。



―編集部インプレッション

今回、インプレッションするのは普段からディスクロードに乗り、レースやトレーニングを行っているCW編集部員の高木。これまで、シマノ DURA-ACEとULTEGRA、カンパニョーロのBORA、スコープ R3~R5など、多種多様なホイールを試してきたが、DTスイスのホイールをテストするのは今回が初めて。

デザインがシンプルなため、どんなバイクとも相性抜群デザインがシンプルなため、どんなバイクとも相性抜群
ARC 1400 DICUTホイールはリムハイトは50mmと62mm、80mmという、ディープリム寄りの展開とされている点からもエアロに主眼を置いたシリーズだということが察せられる。今回は、レースやサイクリングなどでオールラウンドに使用できるであろう50mmを選択し、テストすることにした。タイヤはマキシスのチューブレスタイヤラインアップの中で最軽量のHigh Road SLの25Cを装着し、テストを行った。

50mmハイトのチューブレスホイールということである程度重さに関しては覚悟していたが、いざ取り付けて走り出すと想像以上に漕ぎ出しが軽くて驚いた。重量は1,458gとハイトの割に軽いスペックではあるが、決してハブによる軽量化ではなく、リム自体の軽さによるものだと実感する。この漕ぎ出しの軽さと高い剛性感、そしてチューブレスタイヤ特有の転がり感が相まって、ゼロ発進でも軽快にスタートできるため、レースだけではなく信号が多い街中のサイクリングでもこの高性能を実感できる。

登りでも軽快なダンシングが可能登りでも軽快なダンシングが可能
ディスクロードの普及もあってか、登りが多いレースでは35mmや40mmといったミドルプロファイルホイールを使用する選手が以前より増えているが、ARC 1400 DICUTの50mmモデルはそれらのホイールと比肩しうるほど登りが速い。

ホイールのエアロ性能もあり、緩斜面ではとにかくペースが安定して、ハイペースを維持しやすかった。また、先述した反応性の高さはヒルクライムでも活きており、急勾配区間でも軽快にダンシングでクリアすることができる。登りの距離や質を問わず高いレベルで走ることができるため、多くのコースにこれ一本で対応できそうだ。

連続コーナーでも切り返しが軽快である連続コーナーでも切り返しが軽快である
コーナーリングに関しては、クイック過ぎずニュートラルなハンドリング。しっかりとしたハブの剛性感と適度なスポークテンションによって生み出される安定感が、狙ったライントレースを容易にしてくれる。

ただ一点注意点があるとすれば、速すぎるというところ。ここ最近使用していたローハイトホイールの感覚でコーナーへ向かうと、想像よりもスピードが乗った状態でコーナーに進入してしまい、少し焦るシーンもあった。とはいえ、これは慣れの範囲内。ただ、履き替えたばかりの方は、これまでより意識的に減速したほうが良いだろう。

安定感があり、攻めたコーナーリングができる安定感があり、攻めたコーナーリングができる
さて、このホイールの核心と言えるのは平坦での高速性能だろう。レースやトレーニングで常用される30~40km/h台の速度域での巡航の容易さは明らかで、優れたエアロ性能を感じ取れる。そして、その上の速度域への加速感こそがこのホイールの真骨頂だ。

低速から高速、どの速度域においても加速性能に優れたホイールではあるが、特に30~50km/hという中速から高速域にかけてのスピードの伸びは特筆に値する。高剛性で捻じれの少ないハブ、空気抜けが良く軽量なリム、そして適度なスポークテンションが合わさることで、ペダルを踏み込んでから一瞬タメが入り、縮こまったバネが伸びるように爆発的な加速を見せてくれた。

40km/hの速度域からのスピードの伸びが良かった40km/hの速度域からのスピードの伸びが良かった
このスポークテンションのおかげで、ホイールの剛性感も硬すぎることがなく、脚あたりは良い印象。高いエアロ性能による出力削減効果もあり、普段よりも体力をセーブできるため、ロングライドなどにも向いているだろう。

非常にバランスの取れた性能で、高剛性なレースフレームからしなやかなエンデュランスフレームまで、どんなバイクとも相性が良さそうだ。シンプルなグラフィックもそんな性格を表しているかのようで、多くの完成車にスペックインしている理由も納得できる。とにかく快適に速く走りたいサイクリストにおすすめしたいホイールだ。

トータルバランスに優れるためオールラウンドに使用できるトータルバランスに優れるためオールラウンドに使用できる


DTスイス ARC1400 DICUT 50
重量:1458g
フリーボディ:スラム XDR、シマノ、カンパニョーロ
価格:133,100円(税込、フロント)、183,700円(税込、リア)

text&edit:Naoki Yasuoka
impression:Michinari Takagi
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