雄叫びを上げ、勝利したタデイ・ポガチャルは「皆の励ましのおかげで走り続けることができた」と喜んだ。勝利を逃しながらも敢闘賞に輝いたピノや、2度目のマイヨジョーヌ獲得を決定づけたヴィンゲゴーなど、ツール第20ステージを選手の言葉で振り返ります。



区間優勝&総合2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)

雄叫びを上げ、フィニッシュを通過したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:A.S.O.

今日、ようやく自分本来の力が戻ってきた。苦しかったあの数日間から一転、スタートからフィニッシュまで調子が良かった。そして掴んだこの勝利が本当に嬉しいよ。最後の登りでアダム(イェーツ)を待ち、彼の兄弟(サイモン)と共に追いついてくれた。最後はアダムのリードアウトのおかげで、余裕を持って最後のスプリントに臨むことができた。そして今日もまた、チームは素晴らしい走り見せてくれたね。

―今大会における最良の思い出を教えてくれ。

なんだろうね。日々のチームバスの中の雰囲気かな。彼らと走った日々の全てが思い出となるだろう。

―反対に最悪の思い出は?

(失速した第17ステージの)ロズ峠でマルク・ソレルが心配そうに僕を見つめた目線だろう(笑)。

ラファウ・マイカと喜びを分かち合うタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

表彰式後インタビュー

彼ら(ユンボ・ヴィスマ)が僕を引き離すことができたのは(第5ステージの)マリーブランク峠だけ。彼らの高速牽引に遅れを取ったものの、翌日は僕がステージ勝利を挙げた。それ以降の遅れは僕自身の調子の悪さが招いたこと。誰も僕を負かしたのではなく、自分自身による不調で遅れたんだ。

調子が良い時は苦しみながら踏み続けることができるが、絶不調の時は力が出ない。それが今大会で得た大きな学びだった。

今大会を通してチームや家族、ガールフレンド、友人、沿道のファン、SNSを通して多くの励ましを得た。そのおかげもあり諦めることなく最後まで走り続けることができた。それにあれほどのバッドデイに見舞われたなかでも、総合2位という順位は良い結果だからね。悪い状態のなかでも良い瞬間を得るために踏み続ける。そうして今日、良い瞬間が訪れたんだ。

区間3位&マイヨジョーヌ ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)

マイヨジョーヌをほぼ手中に収めたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

2度目となった総合優勝も、1度目と同じぐらい素晴らしい。これが現実だと信じられないぐらい。3週間を通してクレイジーにも思える戦いを繰り広げた。観戦するファンにももちろん、走る僕らにとっても面白いレースだった。それに今日も争ったタデイ(ポガチャル)に感謝したい。今日のレースはもちろん、マイヨジョーヌを着て走る一日一日を楽しむことができた。

素晴らしいチームなしでこの結果は不可能で、この3週間に渡り彼らが僕を守ってくれた。一緒に明日走るのが楽しみだよ。明日パリでのレースも愚かなことをせず走りたい。

開幕地ビルバオから素晴らしい戦いができたタデイと、今後も争い合いたい。

区間4位&総合4位 サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)

ステージ4位に入り、総合4位まで順位を上げたサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー) photo:Team Jayco AlUla

ステージ優勝と共に総合順位を上げることを狙っていた。しかし逃げに乗る脚はなく、結局のところUAEが逃げを捉えることとなった。ツールの序盤で愚かな落車によって約40秒ほど総合タイムを失ったものの、それ以外は良い走りができた。もちろん2日ほど暑さに悩まされるステージもあったが、大崩れすることはなかった。

今日は幸運にもアダムと共に先頭集団に追いつくことができ、ステージ優勝を狙ったのだが、スプリントに長けた選手のいるなか勝利することは難しかった。

怪我や体調不良、落車などなく走り終えることのできた久々のグランツールとなった。だから満足しているし、ようやくいつもの自分が戻ってきた気持ちだよ。

区間5位&総合3位 アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)

ヴィンゲゴーと健闘を称え合うアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

タデイのステージ優勝を狙い、レース展開をコントロールした。だが最後の山岳ステージということもあり、全員が100%の力を出すなかでのコントロールは難しさもあった。最後はサイモンと共に先頭集団に追いつき、僕自身の能力を考えれば良いリードアウトだったと思う。

3週間を通してベストなコンディションでいるのは簡単ではない。またタデイは1年を通してプレッシャーにさらされてきたんだ。今大会の彼は最初と最後に良い走りを見せた。これを良い結果と捉えることができるし、来年また挑戦するよ。

総合3位はこれまで走ってきたグランツールで最高の結果。チームとしてマイヨジョーヌを目指していたので悔しいが、僕自身の結果としてはとても嬉しいよ。体調不良などに見舞われずグランツールを走り切ることが長い間できないでいたので、そういった面でも満足だよ。

逃げから勝利に迫ったティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)

最後から2つ目の山岳で単独となったティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) photo:CorVos

どこから仕掛けるべきか考えていたわけではないが、勝利を目指すならば早めにアタックしなければならないと思っていた。多くの観客が詰めかけるなか、ステージ優勝を目指すことができて素晴らしい体験となった。大歓声に鳥肌すら立っていたよ。

(ピノ・コーナーには)知った顔もいて、そんな中を一人先頭で走る幸運な瞬間だった。だがそんな体験もこれが最後の機会なのだろう。あの全てが自分への声援だとはにわかに信じられないほど素晴らしい体験だった。応援してくれた皆に感謝したい。

text:Sotaro.Arakawa
photo: CorVos, A.S.O.