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喧騒のパドックを歩き、各チームのバイクセットアップを見ていて気づくことがある。それは、コンチネンタルタイヤを使っているチームが多いことだ。主力のチューブレスはもちろんチューブラーを使う選手まで、GP5000の各バリエーションを数えれば、そのチョイスは多岐に渡る。世界最高峰のロードレース、ツール・ド・フランスの現場からお届けする。

プロチームから厚く信頼されるコンチネンタルタイヤ

バスクで開幕した2023年ツール・ド・フランス。UAEチームエミレーツなど、複数のトップチームがコンチネンタルタイヤを使う photo:CorVos

自転車ロードレースにおける世界最大・世界最重要レース、ツール・ド・フランス。そして、7月のフランス全土を駆け巡る3週間の戦いにおいて、大きなプレゼンスを誇るのがドイツのプレミアムタイヤブランドであるコンチネンタルだ。

歴史を振り返れば、コンチネンタルは100年以上前に自転車用タイヤ製造を開始した時点から、ツール・ド・フランスと密接に関わってきた。今も昔もドイツの小都市コルバッハで開発製造されたタイヤはトップチームに供給され、そのフィードバックをもとにより良い製品が形作られている。

クリストファー・フルーム(イギリス)のマイヨジョーヌ獲得を支えたのも同社タイヤだったし、2018年のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)による世界選手権制覇も、リチャル・カラパス(エクアドル)のオリンピック優勝も、マテイ・モホリッチ(スロベニア)やトーマス・ピドコック(イギリス)のダウンヒルを支えるのもコンチネンタルタイヤだ。

僅差のマイヨジョーヌ争いを繰り広げているタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:So Isobe

コンチネンタルとともにグランツール制覇を繰り返してきたイネオス・グレナディアーズ photo:So Isobe

優勝候補タデイ・ポガチャル(スロベニア)擁するUAEチームエミレーツを筆頭に、グランツール常勝チームであるイネオス・グレナディアーズ、伝統と格式あるグルパマFDJといったトップチームがこぞって使い、第110回ツールでも22チーム中6チーム、スポンサー外も含めれば8チームが使用中だ。

リムブレーキからディスクブレーキへ。チューブラーからチューブレスへ。リム幅の拡大とタイヤのワイド化。ロードバイクを取り巻く環境はここ5年で目まぐるしく変遷しているが、コンチネンタルもプロ供給専用品の「COMPETITION PRO LTD(チューブラー)」から「Grand Prix 5000(チューブレス)」と時代の波に素早く対応し、かつプロ選手の細かいニーズに応え続けてきた。

時を同じくしてプロレースの舞台から姿を消したブランドがある一方、確実にコンチネンタルタイヤを使うチームは増えており、その高い使用率、そしてスポンサー外チームがロゴを消してまで使う事実からは、いかにコンチネンタルタイヤが選手から支持されているのかを窺い知ることができる。

ツールのオフィシャルパートナー6年目 安全性とロードシェアをアピール

ツール名物のキャラバン隊にも宣伝カーを走らせる。コンチネンタルのテーマである安全性をアピールする photo:So Isobe

ステージ優勝者に贈られるメダル。ここにもコンチネンタルのロゴが入る photo:So Isobe
スタート地点のヴィラージュに設置されるコンチネンタルブース photo:So Isobe


そして何よりも「ツール=コンチネンタル」というイメージを強めているのが、同社が2018年から務めているツールオフィシャルパートナーシップだ。「ロードバイクを含めたすべての乗り物の安全性とロードシェア」を強く打ち出すために、レースを盛り上げるキャラバン隊には何台もの宣伝カーが走り、ヴィラージュ内の特設ブース設置や、選手のゼッケンプレートや、ステージ優勝者のメダルにも同社ロゴが光る。

ツールを取材する中で、ちょっとくすんだイエローカラーと、特徴的な跳ね馬ロゴを見ない日はゼロ。ちなみにレースに随行するオフィシャル車両のタイヤも全てコンチネンタル製(開幕前にフランスのA.S.O.ガレージで履き替えられる)であり、時に100km/hを超えるダウンヒルや、危険を避けるための咄嗟の回避運動といった過酷な状況下で、選手のみならず、レースに帯同するドライバーの安全も支えているのだ。

チューブレス時代のプロトンを支えるGrand Prix 5000シリーズ

スタンダードモデルS TRに加え、軽量モデルTT TRのシェアも上昇中

Grand Prix 5000S TR。チューブレス化の切り札となったタイヤだ photo:So Isobe

コンチネンタル採用チームが愛用するのがフラッグシップチューブレスレディタイヤである「Grand Prix 5000(以下GP5000)」シリーズだ。チューブラータイヤ全盛期にはプロ供給用のCOMPETITION PRO LTDが100%を占めていたが、近年のチューブレス化とともに主役の座に座り、選手たちの走りを支えている。

中でも使用率の高いスタンダードモデル「Grand Prix 5000S TR」は、チューブレス移行への切り札となったタイヤだ。2018年に14年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたGP5000のアップデート版として開発され、泥で歴史的なサバイバルレースとなった2021年のパリ~ルーベや、同年の世界選手権タイムトライアルなど大舞台を相次いで制覇した。それは、それまで転がりの軽さを狙ってTTステージに活躍の場を見出されてきたチューブレスタイヤが、通常の、それも特に機材性能が求められる舞台で信頼される証となった。

UAEのバイクたち。全体的にTT TRの使用率が高い photo:So Isobe

イネオス・グレナディアーズはS TRとTT TRの使用率がおおよそ半々 photo:So Isobe
バーレーン・ヴィクトリアスもサポートチームのひとつだ photo:So Isobe


その一方で興味深いのが、軽量モデル「Grand Prix 5000TT TR」のシェア率が急速に高まったことだ。そもそもTT TRは、S TR比較で40kmのタイムトライアルで17秒速く、かつ25cで25g軽い「Grand Prix 5000TT TdF」として昨年ツールで実戦投入され、その後フィリッポ・ガンナ(イタリア)のアワーレコード新記録樹立にも貢献したタイヤ。それをもとにサイズバリエーションを増やし、今年3月に正式ラインナップ追加となったものだ。

例えばポガチャルは基本的に全ステージを通じてTT TRを使うほか、第1ステージで勝利し、マイヨジョーヌを獲得したアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)やエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)らも常用するなど、「タイムトライアル決戦用」という従来のイメージを覆す使われ方をしている。

レース前に忙しなくセットアップする各メカニックから聞いた話をまとめれば、耐久性にほぼ問題はなく、特に山岳ステージが多い今年のツールではTT TRを選ぶ選手が多い。メーカー資料によればS TR同様ベクトランブレーカーを採用し、耐パンク性能を損なっていないとのことで、それが証明されている事実とも言えそうだ。

グルパマFDJは選手やステージによって複数のタイヤを使い分ける photo:So Isobe

前後にエンデュランスモデルのAS TRを装着したピノ。山岳路でのパンク防止を狙ったと思われる photo:So Isobe
ケヴィン・ゲニエッツ(ルクセンブルク、グルパマFDJ)はチューブラーのCOMPETITION PRO LTDを常用する photo:So Isobe


AS TRで難関山岳を登るヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ) photo:So Isobe

2023年大会においては少数派となったものの、チューブラータイヤを求める声もまだ根強い模様。グルパマFDJでは一部選手がCOMPETITION PRO LTDを常用するほか、普段チューブレスを使うティボー・ピノも第13ステージでCOMPETITION PRO LTDに変更。さらにグルパマはピレネーを駆けた第6ステージでは、ピノとフランス王者のヴァランタン・マドゥアスがエンデュランスモデルのAS TRに変更するという、ほかチームと一味変わったセッティングだったことも興味深い。

また、3週目初日の個人タイムトライアルでは、ほとんどの選手がTT TRを装着して最後に登坂が待ち受ける難関コースに挑んでいた。

激しい総合争いを繰り広げているヴィンゲゴーとポガチャル photo:CorVos

迎えた最終週初日の個人タイムトライアル。ポガチャルが登坂を駆け上がる photo:So Isobe

個人タイムトライアルではUAEを筆頭に、すべてのコンチネンタルチームがTT TRを装備した photo:So Isobe

今ツール最大の焦点は、マイヨジョーヌを着るヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)とポガチャルの総合一騎討ち。1週目でリードを奪ったヴィンゲゴーに対し、ポガチャルが少しずつ、しかし確実に追い詰め、たったの10秒で3週目を迎えた。迎えた個人タイムトライアルではヴィンゲゴーが圧倒的な力を見せたものの、ポガチャルも「まだ勝負は終わってない。2分差を取り返すのは難しいけれど挑戦する」と話している。彼らのタイヤチョイスにも注目しつつ、レースの行方を見守りたいと思う。

コンチネンタル Grand Prix 5000シリーズ

GRAND PRIX 5000S TR

GRAND PRIX 5000S TR (c)ミズタニ自転車

650×30B280g
650×32B300g
700×25C250g
700×28C280g
700×30C300g
700×32C320g
カラーBlack、Transparent skin
価格13,000円(税込)

GRAND PRIX 5000TT TR

コンチネンタル Grand Prix 5000 TT TR (c)ミズタニ自転車

700×25225g
700×28(28-622)240g
カラーBLACK / BLACK
価格17,000円(税込)

GRAND PRIX 5000AS TR

コンチネンタル Grand Prix5000 AS TR (c)ミズタニ自転車

700×28335g(CREAM:340g)
700×32385g(CREAM:395g)
700×35425g(CREAM:430g)
カラーBLACK / BLACK、BLACK/CREAM
価格15,700円(税込)
提供:ミズタニ自転車 text&photo:So Isobe