優勝候補のアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)が脳震盪により棄権したUAEツアー3日目。名物坂ジュベル・ジャイスで争われた登坂バトルをベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)が制し、区間2位のジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)が総合首位に立った。



ジュベル・ジャイスの頂上を目指すUAEツアー第3ステージ photo:CorVos

リゾートホテルが建ち並ぶアル・マルジャン島を出発し、ジュベル・ジャイスの頂上を目指すUAEツアー第3ステージ。176kmコースの内訳は136kmに及ぶ平坦路から徐々に標高を上げていき、最後は大会の名物であるジュベル・ジャイス(距離21.1km/平均5.4%)を駆け上がる。勝負所となるのは平均勾配が9%に上がるフィニッシュ手前2km地点からだ。

シンプルなレイアウトのレース序盤で飛び出したのは、初日にも逃げたマーク・スチュワート(イギリス、コラテック・ヴィーニファンティーニ)とシルヴァン・ディリエ(スイス、アルペシン・ドゥクーニンク)の2人。一方、前日の個人タイムトライアルでトップスリーを独占したUAEチームエミレーツのいるメイン集団では、残り100km地点で吹き付けた横風で一気に緊張感が増した。

残り100km地点で発生した横風による集団分断 photo:CorVos

ヴィスマ・リースアバイクやスーダル・クイックステップのペースアップにより集団は分裂し、逃げの2人を飲み込んだプロトンは総合勢を含む約80名に絞られる。一時は40秒差をつけられた第2集団だったが、ボーラ・ハンスグローエの先導と風向きが変わったことにより第1集団に合流。直後にスチュワートがこの日2度目のアタックを決め、今度はそれにヨナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が付き合った。

再び逃げとそれを追う構図となったメイン集団では、残り47kmでアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)が落車。大きな外傷はなく本人も「大丈夫だ」と語ったためレースに復帰したものの、記憶の混濁など脳震盪の症状が見られたため残り10km地点でレースを降りた。

総合優勝の最有力が去ったプロトンは残り29kmで最後まで逃げたスチュワートをキャッチ。UAEが牽引をはじめた集団はジュベル・ジャイス(距離21.1km/平均5.4%)に突入し、頂上まで12kmを残しエイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア、モビスター)のアタックから登坂バトルが幕開けた。

集団復帰を果たしたものの、残り10km地点でバイクを降りたアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

昨年の再現を目指し、アタックしたエイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア、モビスター) photo:CorVos

昨年はそのままハイペースで踏み続けバースデー勝利を飾ったルビオだったが、今年はUAEの隊列がそれを許さず捉える。ミッケル・ビョーグ(デンマーク、UAEチームエミレーツ)が40名程度に絞るハイペースに、今度はヤン・ヒルト(チェコ、スーダル・クイックステップ)がアタック。しかしビョーグがこれも引き戻し、フラムルージュ(残り1km)の手前でデカトロンAG2Rラモンディアルのヴァランタン・パレパントル(フランス)とベン・オコーナー(オーストラリア)が飛び出した。

パレパントルの背後から加速し、単独先頭となったオコーナーに総合リーダージャージを着るブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)は反応できない。代わってジェイ・ヴァイン(オーストラリア)が追いかけたものの、抜群のタイミングとその脚力を見せつけたオコーナーがフィニッシュラインを通過。2位に5秒差をつけ、ジュベル・ジャイスを制覇した。

残り1kmから飛び出し、勝利を掴んだベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) photo:CorVos

「長らく山岳レースで勝てていなかったので嬉しいよ。スプリントに持ち込まれたら勝ち目がないと思い、残り1kmで仕掛けようとチームで話し合った。しかしパレパントルの加速が強烈で遅れるところだった(笑)。だが計画通りリードを得て、追い風も味方してくれた」と2月10日にスペインで行われたワンデーレースに続き、今季2勝目を掴んだオコーナーは語っている。

この結果オコーナーは総合で2位に浮上。総合リーダージャージは14秒遅れでフィニッシュしたマクナルティに代わり、チームメイトのヴァインが引き継いだ。

区間2位に入り、総合首位に浮上したジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

UAEツアー2024第3ステージ結果
1位 ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) 4:16:21
2位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) +0:05
3位 レナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー、ロット・デスティニー)
4位 マックス・プール(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)
5位 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
6位 アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、ヴィスマ・リースアバイク)
7位 マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)
8位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)
9位 エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア、モビスター)
10位 サイモン・カー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)
個人総合成績
1位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) 7:39:44
2位 ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) +0:11
3位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) +0:13
4位 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:21
5位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:22
6位 マックス・プール(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) +0:31
7位 トビアス・フォス(ノルウェー、イネオス・グレナディアーズ) +0:33
8位 サイモン・カー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:36
9位 ミッケル・ビョーグ(デンマーク、UAEチームエミレーツ) +0:37
10位 アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、ヴィスマ・リースアバイク) +0:39
その他の特別賞
ポイント賞 マーク・スチュワート(イギリス、コラテック・ヴィーニファンティーニ)
ヤングライダー賞 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos