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イタリアンブランドのウィリエールが発表する2024年モデルにフィーチャー。第一弾はUCIワールドツアーチームのアスタナが駆るFilante SLRの弟分としてリリースされる中級モデル Filante SLだ。軽量化とオールラウンド性能を両立したエアロロードをイタリア北部の山岳地帯でインプレッションした。

Filante SLRを駆りジロ・デ・イタリア2023最終ステージで勝利したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン) photo:CorVos

イタリアのロッサーノ・ベネトに拠点を構える老舗ブランドのウィリエールが2021年モデルとしてリリースしたハイエンドロードモデルがFilante(フィランテ)SLRだ。同社のレーシングロードとしては2019年にデビューした軽量モデルのZero SLRと双璧をなすモデルで、Zero SLRが軽量化にフォーカスして開発されたクライミングモデル、そしてFilante SLRが空気抵抗の軽減にフォーカスして開発されたエアロロードとなる。

トタルディレクトエネルジーやアスタナといったトップチームにバイクを供給してきたウィリエール。Filante SLRはデビューしてすぐさまトップカテゴリーのレース界に実戦投入され、輝かしい戦績を収めてきた。

Filante SLRカヴェンディッシュモデルと開発責任者クラウディオ・サロモーニ氏 photo:Makoto AYANO

新しく発表されたFilante SLの説明に入る前に、兄貴分のSLRのテクノロジーを解説しておこう。Filante SLRの特徴は、エアロチュービングやZero SLRで投入した新たなカーボン素材を採用することで、空力特性向上と軽量化を果たしたこと。

Filante SLRの進化のポイントは、エアロと軽量性という2つの要素をバランスよく両立していること。前作Cento10 PROまでのNACAエアロフォイルチューブの形状をブラッシュアップ。Cento10では翼断面の後端部を切り落としたカムテールの切り口部分が直線的なデザインとされていたが、Filante SLRでは切り口部分の角が落とされたラウンドシェイプとなった。

これは真正面からの風だけではなく、ヨー角のついた風(横風)を受けた時に空気を綺麗に流すため。実走行ではありとあらゆる方向から風が吹き付け、コーナーの度に受ける風の方向は変化する。また、集団内で走行していると周りにいるライダーが掻き乱した風を受けてしまう。ウィリエールは様々な状況で空力効果を発揮するために、このエアロダイナミクス設計を行ったという。

カザフ王者、アレクセイ・ルツェンコが駆るウィリエール Filante SLR photo:So Isobe

採用された素材も革新的なものだ。「HUS-MOD(ハスモッド)カーボン」と「液晶ポリマー(LCP/Liquid Crystal Polymer)」という2つの新素材を組み合わせたカーボン素材は、路面の微振動を素材レベルで吸収し、高剛性とともに快適性を高めることに成功。また落車や輸送中の衝撃にも耐えられる耐久性や高耐熱性、耐候性を備えているという。この素材自体に企業秘密が多いが、取材に対して「三菱レイヨンや東レを中心に日本企業3社の超高品質カーボンをブレンドした」と開発者は話している。

フレームワークはさらに独創的だ。シートステーが左右に大きく拡がるデザインとなり、フロントフォークもCento10 PROよりも7mm拡幅したワイドスタンスとなる。ホイールとフレームの空間を大きく取ることでエアフローをスムーズにして乱流発生を抑えるとともに、シートステーとフォークの形状と配置を揃えることでエアロダイナミクスを向上させている。これはトラック界でエアロに対する最先端のデザインだ。

エアフローを最大化するワイドスタンスのFフォークとリアステー photo:Makoto AYANO

フロントフォークはブレーキング時のねじれに対応するべく左側レッグを大口径化しており、コーナリング中のブレーキ操作に対してもアクスル軸が捻れない。左右のチェーンステーが大胆な非対称形状となっている点も同様の理由によるものだ。

チューブの角がとれたラウンドシェイプは重量面でもメリットをもたらした。角張ったデザインよりもレジンのコントロールが行いやすくなり、余分なレジンを除去することが可能になったという。結果としてFilante SLRはフレームで870g、フォークは360gの軽量バイクとなり、オールラウンド性能も手に入れた。プロレースの世界でも多くの選手が登りが多いコースであってもFilante SLRをチョイスするシーンが多く見られたことがそのオールラウンド性能を証明している。

「トップモデルのDNAを受け継いだセカンドグレード」Filante SL 登場

ウィリエール Filante SL ©wilier triestina

SLRの発表から2年。2024年モデルとして今回発表されたのが弟分のFilante SLだ。フレーム製作における金型はSLRと同じものを使用し、カーボン素材のグレードを調整することで性能を高く保ちつつ手頃な価格を実現。フレーム形状は完全に同一となるためエアロダイナミクスについての性能はSLRと同等。カーボン素材についてはHUS-MODと液晶ポリマーは採用されないが、剛性等は同等をキープしている。ちなみにフレーム重量は1010gと、SLRに対して同サイズでわずか140g程度の増加に抑えている(フォーク込みで150g)。

ウィリエール2024モデルで発表されたFilante SL photo:Makoto AYANO

フレームサイズの展開はSLR同様に6サイズ(XS、S、M、L、XL、XXL)。なおSLRは一体型ハンドルのFlanteバーやZeroバーのセットが基本になるが、SL完成車は別体式のSTEMMA SステムとBARRA Sハンドル(ともにウィリエールオリジナルのアルミ製)の組み合わせとなる。

「プロ向けの機能を、受け入れやすい価格で」がFilante SLの開発ゴールだった photo:Makoto AYANO
Filante SLRとSLのターゲットポイント。重量と価格が主な違いだ photo:Makoto AYANO


開発者クラウディオ・サロモーニ氏のコメント

Filante SLと開発者クラウディオ・サロモーニ氏 photo:Makoto AYANO

Filante SLは、SLRとまったくの同じデザイン、そしてライドフィーリングを追求して造られています。違うのはカーボンのマテリアル。HUS-MODと液晶ポリマーなど特殊な素材は使用されませんが、SLR同様の高品質なカーボンと製造方法によってフレームでわずか150g程度の重量の違いで非常に手に入れやすい価格を実現しています。SLRは一体型ハンドルのFlanteバーあるいはZeroバーがセットされますが、SLは別体式ハンドルとステムを採用することでポジション変更や調整が簡単で、誰にでも扱いやすいバイクと言えます。

Filante SL インプレッション

ウィリエール Filante SL photo:Makoto AYANO

イタリア現地で乗ったSLのインプレッションに移る前に、Filante SLRについて触れておきたい。じつは筆者の今の愛車がFilante SLRで、それが「新しいSLの走りを確かめたい」と今回のイタリア発表会に飛んだ理由でもある。SLRと比べて語れる話があると思ったこと、そしてFilanteの開発者と実際に会って直接話をしたいと思ったから。

FilanteSLRを愛車とする綾野真(CW編集部)群馬県碓氷峠にて photo:Yasuo Yamashita

2021年秋に手にれたFilante SLRのことはとても気に入っている。ペダル込みで6.9kg(XS)と軽量なこと、自分が理想とするジオメトリー、リーチやスタックに寸分違わないことでまず身体に完璧にフィットしていること。このあたりはさすが歴史あるイタリアンブランドで、小柄な自分の場合、近年はサイズとジオメトリーを小刻みに選べるイタリアブランドを選ぶことが多い。

なによりFilante SLRの走りは軽く、速い。エアロバイクでありながら上りも得意で、平坦、登り、下り問わずに驚くほど走りが良い。高剛性で踏むことを要求してくるようなカリカリしたレースバイクで、その性能は市場にある中でもトップレベルのものだと思う。

速いと同時に快適で、HUS-MODと液晶ポリマーが謳うとおりの快適性を感じることができる。それはフレームがしなることで得られる快適さとは違い、剛性が高いのにマイルドに微振動を除去してくれ、疲労も少ないのだ。

組み上げたフォルムもバランスよく美しい。ロードレースに出ることはないが、山岳系ロングライドで乗りまくっている。そしてタイヤクリアランスも32mmを余裕で飲み込むため、ワイドリム&ワイドタイヤで荒れた舗装林道系での走りも苦にしないことも気に入っている。若くて速い仲間たちとのビッグライドや快速系のロングツーリングをこなすのに欠かせない相棒だ。

ケーブルはヘッドに内装。左右に張り出すフォークのタイヤクリアランスは32C photo:Makoto AYANO
エアロダイナミクスと重心位置により3つのボトルケージ穴より選べる photo:Makoto AYANO
ホイールと間の乱気流を減少するワイドスタンスのリアステー photo:Makoto AYANO



イタリアでテストライドしたFilante SL。手にした印象はSLRと寸分違わず同じ形状だけに外観形状からは違いが無いこと。それは当然としてフレーム重量もわずか150gの増加なので、マイバイクでない限りその差は感じ取りにくいだろう。

イタリア・アシアーゴの高原地帯でFilante SLを存分にテストライドした photo:Makoto AYANO

テストライドしたコースはアシアーゴの街の外周の高原道路。高低差も大きく、バイクの素性はよく分かるルート。その走りは軽快で、SLRほどカリカリした高剛性でないものの、かなり軽快感のあるものだった。フレームは同じ形状ながら印象では別モノ。SLRの尖った点が削ぎ落とされた感じで、乗りやすさが光り、初級者から中上級者まで幅広い層に勧められる快適な走りだった。スパルタンな鋭さこそないけれど、ロードレースでも十分に通用する走りの良さがある。その点で「ミドルグレード以上」だ。SLRはロードレースモデルだが、SLはエンデュランス系の走りやロングライドも得意だろう。

細身かつ角の取れたカムテール形状でエアロ効果と軽量化をバランスする photo:Makoto AYANO

Fフォーク同様に左右に大きく張り出すリアステー photo:Makoto AYANO

筆者のSLRにはFilanteバーを使用しているが、それはフレームとセットだったためでもあり、よりエアロで軽量になる。Filanteバーの高剛性が特筆モノで、乗り味の硬派さはバーによるものも大きい。そしてステム相当のアングルがホリゾンタルに近く、それにより前傾のキツいポジションになる。それはエアロ効果を高めるためでもあり、それゆえに上級者限定のような攻めたライディングポジションとなる(もしアップライトを望むならコラムスペーサーを高く積むことになる)。

STENNA SステムとBARRA Sハンドル(ともにアルミ製・ウィリエールオリジナル)の組み合わせ photo:Makoto AYANO

Filante SLはノーマルな角度(+6°)のSTEMMA Sステムに別体ハンドルのBARRA Sを組み合わせるため、自然とハンドルは(1.5cmほど)高くなり、優しいポジションになる。ハンドリングもそのステム角の影響で操りやすいものとなるので、その組み合わせが扱いやすい操作感を生み出していると言える。もちろん望めばFilanteバーに組み替えることができるが、ハンドル高が低いアグレッシブなポジションになることに留意したい(つまり後交換ではコラム長が足りないケースもある)。

完成車に採用されるSTEMMA Sステムはケーブルを下部からヘッドに内蔵する photo:Makoto AYANO

また日本代理店のリクエストで70mmのSTEMMA Sステムが用意されるとのことで、今までオプションで0mmオフセットのシートピラーで対応していた低身長のユーザーでも、より短いリーチでXSサイズに乗れるようになるとのことだ。

カムテールの切り口部分の角が落とされたようなラウンドシェイプ photo:Makoto AYANO

Filante SLの適度な剛性感や硬派すぎない乗りやすいキャラクターは好印象。そしてエアロダイナミクスの良さも(SLR同様に)確実に感じることができる。ホイールとフレームの間隔を大きく取ることで乱気流の発生を抑えエアフローをスムーズにするというデザインはロードバイクではFilanteがいち早く採用したもの。追随するメーカーもあるが、複雑なパテントもあるようで、限られたバイクしか登場していない。2次的に得られるメリットとして、ますますワイド化の進むタイヤ&リムの将来性をみても32Cの太さに余裕をもって対応している点も安心感がある。

ダウンヒルや平坦路で感じるエアフローはスムーズそのものだ photo:Makoto AYANO

同じフレーム形状ながらSLRとは乗り心地が大きく違うことに驚いたが、SLも十分に軽快で速く、SLR以上に快適。エアロダイナミクスとスマートさは同等で、扱いやすさに関してはよりレンジが広く、誰にでもおすすめできる。パッケージならシマノ105以上のコンポがふさわしいし、デュラエースで組んでも見劣りしないフレーム性能だ。価格面でSLRより大幅な手頃さが魅力だが、予算に応じてグレードアップしていく楽しみもある。最上級のエアロホイールを組み合わせたとしてもそれに相応しい高性能フレームのエアロロードだ。

ウィリエール FILANTE SL

ウィリエール Filante SL (シルバー) photo:Makoto AYANO

フレーム重量1,010g
フォーク重量370g
フレームサイズXS, S, M, L, XL
完成車重量8.0kg(アルテグラDISC Di2/フルクラム Racing600)
カラーシルバー、ブラック、レッド(受注発注)
価格フレームセット(ステンマS、バッラS付)税込473,000円
シマノ105 Di2、シマノRS171完成車 税込682,000円
シマノアルテグラ Di2、フルクラムレーシング600完成車 税込786,500円
シマノDURA-ACE Di2、フルクラムRacing600完成車 税込968,000円
提供:服部産業、photo&text:綾野 真(シクロワイアード)