カーボンスポークや新設計ハブなどを採用し、ペア重量1270gという驚異的な数字を達成した究極のグラベルホイール、カデックス AR35をインプレッション。同時発表された超高品質なTLRタイヤ2種もあわせてグラベルライドで実走テストした。



CADEX AR35 DiscホイールCADEX AR35 Discホイール photo:Makoto AYANO
「頂点のプロダクツの追求」をキャッチフレーズに、究極とも言えるレーシングパーツの開発を続けるカデックス。世界最大のスポーツバイクメーカーであるジャイアントが展開するカーボンホイール、パーツ等のブランドだ。2019年のブランドローンチ以来、プロ選手のニーズに応えられる製品を、スペック上の制限が無いかのように開発、ハイパフォーマンスな製品群を続々と世に送り出している。

35mmハイトにグロス調のCADEXロゴがプリントされる35mmハイトにグロス調のCADEXロゴがプリントされる エアロ効果に優れる形状のリムエアロ効果に優れる形状のリム


今回紹介するのはカデックスがグラベルバイク向けの超軽量ホイールとしてリリースしたCADEX AR 35 discとグラベル用のチューブレスレディタイヤ2種。AR35ホイールはフックレスリム、カーボンスポークなどロードホイールでも採用された技術をグラベルホイールにも使い、前後セットで1,270gという驚くべき軽さを実現したことが最大の特徴だ。

ロードホイールで培ったカデックスのノウハウを余すこと無く投入したカーボンファイバーのレイアップ技術により、登坂時の軽快さや加速時の俊敏性を身に着けながらもMTB XC用ホイールと同等の耐衝撃性を確保したというAR35ホイール。

内幅25mmのワイドプロファイルリムを採用内幅25mmのワイドプロファイルリムを採用
リム内幅は25mmに設定し、28~45mmのロードタイヤからグラベルタイヤまで対応。フックレスリムと相まって、幅広タイヤ装着時でもタイヤ形状を適切な形に保ち、グリップ力、転がり抵抗、衝撃吸収性などを発揮できる設計のリムに仕上がっているという。

フロントハブにはハブと同じ長さの一体型軸受が備えられ、アクスルのサポート力を強化フロントハブにはハブと同じ長さの一体型軸受が備えられ、アクスルのサポート力を強化 軽量な新開発ハブ R2-C60をアセンブル軽量な新開発ハブ R2-C60をアセンブル


新開発の軽量ハブ、R2-C60をアセンブル。セラミックベアリング、DLCコーティングを施した60Tの面ラチェットドライバー、耐久性に優れるフラットスプリング、再設計されたダストシールが搭載されたことで、優れた反応性とグラベル用ホイールには欠かせない耐久性を実現。

フロントハブにはハブと同じ長さの一体型軸受が備えられ、アクスルのサポート力を強化。カデックスホイールのアイコンとも言えるカーボンスポークをもちろん採用し、前後セット重量1270gという超軽量を達成。コンセプトである“Effort in. Speed out.”を体現した意欲作だ。

CADEXオリジナルのカーボンスポークCADEXオリジナルのカーボンスポーク ホイール回転時にスポークが最適なテンションになるダイナミック・バランスド・レーシングホイール回転時にスポークが最適なテンションになるダイナミック・バランスド・レーシング


また同時発表されたグラベル用チューブレスレディタイヤ"CADEX AR"と"CADEX GX"は、170TPIという超高密度織りのケーシングを採用。しなやかな乗り心地と路面追従性を追求しつつ、ビードとビード間の全面を保護するDual Shield耐パンクレイヤーを採用し、優れた走行性能と耐久性を確保したタイヤだ。

CADEX AR&GX TUBELESS READY TIRECADEX AR&GX TUBELESS READY TIRE photo:Makoto AYANO
モデル「AR」はトレッドの中央部をダイヤモンド型の低いノブとし、舗装路やグラベルを高速で駆け抜けられる低転がり抵抗を実現。対してサイドには高さのある台形ノブを配置し、コーナリンググリップを確保している。コンパウンドもAR用のものが採用されており、様々な路面で優れたスピードとコントロール性を発揮してくれそうだ。

サイズは700×40Cの1種類で、重量は425gと軽量に仕上げられている。長距離のグラベルレースや、アップダウンが激しいルートではアドバンテージとなってくれるだろう。

「GX」はルーズなグラベル、軽い泥などグリップ力が必要な時に活躍してくれるモデルだ。タイヤ全面にブロック状のノブを配置しグリップ力を確保しつつ、中央部のノブは背を低め、サイド部分のノブは大きく作ることで、転がり抵抗とコーナリング中の安定性のバランスを整えている。デュアルコンパウンドが用いられる。

ARのエンブレム。タイヤはフックレス対応であることを謳うARのエンブレム。タイヤはフックレス対応であることを謳う CADEX AR&GX TUBELESS READY TIRECADEX AR&GX TUBELESS READY TIRE photo:Makoto AYANO


こちらもサイズは700×40C。重量は445gと軽量に仕上げられ、AR、GXともにカデックスホイールと組み合わせることでさらなる軽量性の追求が可能となる。

インプレッション

カデックスARホイール&タイヤをセットしたグラベルロード Chapter2AOでテストカデックスARホイール&タイヤをセットしたグラベルロード Chapter2AOでテスト photo:Makoto AYANO
筆者は以前からCADEXロードホイールの有効性に着目していて、今回はグラベルホイールとしては異例のスペックということもあり、リリースされてすぐ製品版を借り受けて長期テストした。タイヤ2種も自分でリムへの装着から行い、嵌合性をチェックした。まずはホイールの使用感から綴っていこう。

カデックス AR 35 Discホイールカデックス AR 35 Discホイール photo:Makoto AYANO
CADEXロードホイールは四国一周1200kmツーリング300km超えロングライドで使用し、いずれもその軽さからくるメリットの大きさを感じていた。しかしグラベルホイールともなれば強度が求められることから、実際にオフロードを乗り込み、房総でのグラベルツーリングやホームコースの湖畔のジープロード系グラベルにおいて連日チェックした。

やはりまず顕著に感じるのは軽さ。アルミホイールは言うに及ばず、他社のカーボンリム採用の「軽量な」上級グラベルホイールに比べても300g近く軽く仕上がっており、かつタイヤも軽いことで総重量ならざっと400gほど軽くなる計算だ。初級〜中級グレードからなら500g以上の軽量化が十分に可能だ。

CADEXホイールによってバイク全体が軽く操れるようになるCADEXホイールによってバイク全体が軽く操れるようになる photo: Naoki Yasuoka
車体全体が軽くなり、取り回しが軽くなる。乗ってすぐに感じるバイクの扱いの軽さは衝撃的で、かつ走りに影響が大きな足回りであるホイールの軽さはペダリングするたびに感じ取れる。加速が素早く、少し鈍重だったグラベルバイクがまるでシクロクロスレーシングバイクに化けたような感覚になる。

カーボンスポーク採用のホイールはたわみが少なく、ペダリング力の伝達がダイレクト。軽快に進み、軽快に登り、路面のギャップを避けたりする際のタテ・ヨコの動きともに軽くなる。つまりバイクの運動性能が著しく向上する。エアボリュームの大きさもあいまって、浮遊感のある独特なライドフィーリングを味わえる。速いだけでなく、愉しさにつながる。

CADEXカーボンスポークは交換も可能だCADEXカーボンスポークは交換も可能だ photo:Makoto AYANO
カーボンスポークは硬すぎない印象で、動きの反応性がいいのに乗り味自体はマイルドで、気になる路面の微振動を消し去ってしまうような感覚。これは、タイヤのシルキーな特性もあるのかもしれないが、ロードホイールでも同様に感じたことであるので、おそらく錯覚ではなさそうだ。適度にしなやかなカーボンスポークだが、横方向には良く粘り、たわみやブレは少ない。イメージからくる過度の剛性は持ち合わせていない。

フックレスリム対応を謳うカデックス AR TUBELESS READY TIREフックレスリム対応を謳うカデックス AR TUBELESS READY TIRE photo:Makoto AYANOフロントフォークぎりぎりまで拡幅され横剛性を上げる工夫がされるハブフロントフォークぎりぎりまで拡幅され横剛性を上げる工夫がされるハブ photo:Makoto AYANO


新構造のハブはノッチが細かく、すぐに噛み合うためペダリングへの反応性が良い。面で噛み合うクラッチはDTのスターラチェットと同じような構造だが、CADEXオリジナルということ。コースティング時はDLCコーティングによって素晴らしい滑走感が味わえるが、気になったのはラチェット音。硬く乾いた音質でかなり大きなボリュームのため、結構気になってしまう。並走した仲間も指摘するほどで、周囲にかなり響き渡る。これは塗布するグリースの選択などによって音量を下げることができるのかもしれない。

フリーボディにはDLCコーティングを施した60Tの面ラチェットドライバーを採用フリーボディにはDLCコーティングを施した60Tの面ラチェットドライバーを採用 photo:Makoto AYANO
フリーボディは手で抜くことができ、グリスアップやメンテナンスも容易だフリーボディは手で抜くことができ、グリスアップやメンテナンスも容易だ ワイドリムによってタイヤの踏ん張りが大幅に向上するワイドリムによってタイヤの踏ん張りが大幅に向上する


リムの内幅25mmといえばクロスカントリー系MTBリムと同程度の幅広であり、22mm程度がグラベルリムの標準となっている現在において、各社がこれから採用していく、おそらくは標準となりそうなサイズだ。40mm幅のタイヤではタイヤサイドが無理なくに立ち上がり、空気量が増えることで振動吸収性が良くなり、かつタイヤのサイドノブまで有効に使え、コーナーでグリップがよく粘るようになるなど、いいことづくめだ。

CADEXホイールの軽量さが舗装路ではロードバイクのような走りを可能にするCADEXホイールの軽量さが舗装路ではロードバイクのような走りを可能にする photo: Naoki Yasuoka

超高密度ケーシングを誇るAR、GXチューブレスレディタイヤ


カデックス AR TUBELESS READY TIREカデックス AR TUBELESS READY TIRE photo:Makoto AYANO
AR、GXともにしなやかで軽いタイヤ。もちろん他社のホイールにも使えるがカデックスARホイールと同時開発のタイヤだけに、ホイールの装着は簡単そのものだった。手だけで装着が可能で、ビード上げも携帯ポンプで可能なほど完全マッチをみせてくれた。シーラントはビード脇から注入し、サイドからエア漏れ、シーラントにじみ等もなく安定してエアを保持した。

タイヤ内側はコーティングされ、エア漏れが少ないと思われるタイヤ内側はコーティングされ、エア漏れが少ないと思われる カデックスのホイールとタイヤの組み合わせは嵌合が極めて簡単だったカデックスのホイールとタイヤの組み合わせは嵌合が極めて簡単だった


今回はフロントにAR、リアにGXを装着。これは筆者の好みでもあるのが、シクロクロスのようにフロントのサイドノブを積極的に刺してコーナリングするようなアグレッシグな走りと違い、グラベルライドはどちらかといえばリアのトラクションを高めたい嗜好がある。砂利の登りなどでリアタイヤがスリップするロスが気になるからだ。空気圧を低くすればトラクションは増すが、石へのヒットによるリム打ちパンクを避けたいため、なるべく高めの圧で走りたいこともある。

カデックス GX TUBELESS READY TIREカデックス GX TUBELESS READY TIRE photo:Makoto AYANO
現時点では40Cは700Cなら標準的な太さだ。ガレ場での走破性を上げるために45C等にボリュームアップしたい時もあるが、漕ぎの軽さと太さによる重量増のデメリットを無くすためにリアは極力40Cまでに留めたい、というのがレースなど速く走ることを考慮したタイヤチョイス。カデックスはあくまでレース用ということで、太さをこの1種のみとしているのだろう。

170TPIというケーシングは、シクロクロスのハイエンドレーシングタイヤ以上の高密度織りだ。細い糸で織られたケーシングは軽く、強く、しなやかにでき、タイヤとしては理想的となるというのが理論上のこと。そうしたタイヤはシクロクロスレースで使用経験があるが、いざ太いグラベルタイヤに採用され、太くなると、その乗り心地の良さはより顕著になる。

極めてしなやかなタイヤは弾むように路面のギャップをクリアしていく極めてしなやかなタイヤは弾むように路面のギャップをクリアしていく photo: Naoki Yasuoka
エアボリュームが多くしなやかなタイヤは弾むように振動を吸収してくれ、オフロードではサスペンション代わりとなる。しなやかということはより空気圧を高めることができることにもつながり、軽い走りも可能になる。圧を低めにセットすればもちろん振動吸収は良くなり、グリップ力が増す。

体重約60kgの筆者で1.8気圧を基準に、石や岩の多いガレた道ならパンクリスクを減らすために圧を高めていくような使い方に落ち着いた。他社のタイヤに比べて0.2程度高めにするのが良いような傾向があったのは、変形量が多くしなやかだからだろう。

ノブはAR、GXともに低めなので急コーナーではアンダーステアとなりがち。フロントにGXをセットしたほうがコーナーグリップの安心感は出せるが、レース的に速く軽く走ることを優先するならARで良いと思う。このあたりはTPOに応じて組み合わせたい。

フックレスリム対応を謳うカデックス AR TUBELESS READY TIREフックレスリム対応を謳うカデックス AR TUBELESS READY TIRE photo:Makoto AYANO
カデックスホイールとカデックスタイヤのマッチは最高に良く、あえて他社製品の組み合わせの必要は感じない。タイヤ製造はおそらく関係の深いタイヤメーカーが担っているはずだが、品質、精度とも最高レベルの製品だ。

現在のカデックスは今や世界のチューブレスレディタイヤを認定する側で、ETRTO規格以上に精度や品質への要求レベルが非常に高く、フックレスリム対応タイヤのお墨付きを与える存在になっているのは、カデックスタイヤの高精度・高品質を裏付ける余談だ。

AR35ホイール、2種のタイヤともに高価ではあるものの、その完成度や軽量化による得られるメリットを考えれば十分にバリュー・フォー・マネーだと感じる。しかも決してリスクがある危うい製品ではなく、破損の際はスポーク交換も可能で、ジャイアント製品ならではの品質保証やアフターサポートが受けられることは大きな安心材料だ。(インプレッション:綾野 真/CW編集部)

カデックス AR 35 Disc
リム素材:carbon
リムタイプ:Hookless (Tubeless Ready)
推奨タイヤサイズ:CADEX Tubeless System(専⽤リムテープとバルブ付属)
リムハイト:35mm
リム外幅:31mm
リム内幅:25mm
フロントハブ:CADEX R2-C60 Hub, Centerlock
リアハブ:CADEX R2-C60 Hub, Ratchet Driver,Centerlock
対応カセット:Shimano 11 / SRAM XDR 12 / Campagnolo N3W
ベアリング:CADEX Ceramic Bearings
スポーク:Aero Carbon Spoke
重量:1270g (Shimano freehub)
税込価格 :154,000円(フロント)、198,000円(リア)

カデックス AR TUBELESS READY TIRE
サイズ:700x40C
ケーシング:170 TPI supple casing
コンパウンド:AR-S Dual Compound
重量:425g
価格:11,000円(税込)

カデックス GX TUBELESS READY TIRE
サイズ:700x40C
ケーシング:170 TPI supple casing
コンパウンド:GX-S Dual Compound
重量:445g
価格:11,000円(税込)

text&photo:Makoto AYANO

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