プロロゴの新型グローブENERGRIPに続き、サドルのSCRATCH M5(スクラッチM5)、DIMENSION(ディメンション)のCPCバージョンもテスト。自然なフィーリングのままペダリングできるオールラウンドなSCRATCH、腰をしっかりと据えたペダリングをサポートするDIMENSIONというショートノーズモデルの使用感をお届けしよう。



プロロゴ SCRATCH M5 PAS CPC

プロロゴが誇る高機能テクノロジーCPC(Connected Power Control)。弾性ポリマーを吸盤のように形づくり、特定部位に敷き詰めることでグリップ力、衝撃吸収性、通気性を向上させるテクノロジーだ。サドルに搭載されることでお馴染みのこの技術は、ENERGRIPというグローブにまで波及し、ライダーとバイクの接点で扱われるプロロゴのメインテクノロジーまで発展した。

ENERGRIPのテストと同時にサドルを試す機会を得たので、タデイ・ポガチャルが使用するSCRATCH M5のCPC版と、プロロゴの超ショートノーズモデルとして多くのライダーが使用するDIMENSION CPCの使用感をお届けしよう。サドルをテストしたのはENERGRIPに続きCW編集部の藤原だ。

SCRATCH M5 CPCは程よいグリップ力を備えている

サドル個別の使用感の前にCPCテクノロジーを手と腰のどちらにも採用した印象を記したい。サドルとグローブはライダーとバイクの少ないコンタクトポイントであり、ライドポジションに大きく関わる部分。そこにハイグリップのテクノロジーを採用することで、意図したポジションにホールドしやすいというメリットがまず挙げられるはずだ。

そのメリットを最も享受できるのはDIMENSIONだ。超ショートノーズモデルはサドルを前に突き出した前乗りポジションを出しやすいサドルであり、その通りにポジションを出した場合体幹で体を支えるとはいえ、コックピットに荷重はかかりやすい。ハンドルに体重を乗せてしまうと、肩まわりの筋肉は強張り、衝撃などのストレスを直接受けてしまう。そこでENERGRIPのグリップ力を活かして優しい荷重のままエアロポジションをとれることがCPCを手と腰に使う恩恵だ。

プロロゴ DIMENSION CPC

プロロゴ SCRATCH M5 CPC

なぜDIMENSIONとSCRATCH M5で差をつけたのかというと、DIMENSIONの方がCPCの吸盤サイズが大きいのに対し、SCRATCH M5のCPCは現在のCPCエアリングではなく、登場当時のような非常に細かい円筒状吸盤が敷き詰められたタイプで、手で触ってみても明らかにグリップ力の差があるから。それぞれのCPC設計からも各モデルが輝くシチュエーションが異なることが明らかだ。

実際にDIMENSIONでややきつめの前傾姿勢のポジションで腰に大きく荷重をかけても、スリップしない上に滑らないという安心感のあるグリップ力を発揮する。それはスタンダードの着座位置はもちろん、ノーズ先端に座るようなポジションでもCPCが腰を掴んでくれるため、腰を据えたペダリングで魅力は発揮する。例えば集団を牽引する選手がエアロポジションを取る時、急坂が多く登場するマウンテンバイク・クロスカントリー競技にピッタリだ。

SCRATCH M5のサイドビュー

ラウンドするSCRATCH M5の座面

対してSCRATCH M5のグリップ力は穏やかで、サドル上での腰位置の前後移動がストレスなく行えるほど。予想以上に普通のサドルとして使えることには正直驚いた。もちろんCPCモデルのためグリップ力は高めなのだが、滑り止め仕様から受ける"動かせない"というイメージは持たなくても良く、サドルの上でポジションを変えながらライドする方でも受け入れられそう。

個人的な印象で言うならば、SCRATCH M5は自分自身にフィットしすぎて非の打ち所が見つからない。大抵のサドルは座面形状が特徴的であったり、特定のポジションでは違和感があるものなのだが、SCRATCH M5は座面形状、パッドの硬さどこの要素を確認しても自然なフィーリングのまま。

プロロゴ SCRATCH M5

具体的にはベースポジションから後ろ気味に座っても太ももは当たらないし、ノーズ部分に座っても腰を据える安定感があるし、どこに座っても気持ちよくペダリングが行える。ノーズが太いサドルは苦手であり、可能な限りサドルの中央部はカットオフされていて欲しいのだが、SCRATCH M5は何故か大丈夫という驚きにも似た不思議な感覚を受けている。ちなみにこのサドルはベースのみ穴が開けられており、表面のパッドで塞がれているという設計が採用されているので、その影響も間違いなくある。

座面形状から考えるとSCRATCH M5はT型(ノーズ部は細く、後方が広がる。Tの縦線がノーズというイメージ)という形状かつ、若干ラウンドしている設計となっている。さらにMSS(マルチセクターシステム)というパッドを5つのエリアに分割し、それぞれで異なる密度のフォームを採用することでペダリングへの最適化を行なっていることが特徴だ。自然な感覚でペダリングが行えるというのはこの全体の設計がマッチしていたということだろう。

DIMENSIONのノーズ部分は前下がりとなっている

フラット座面のDIMENSION

対してはV型(ノーズから広がるような座面)でフラットな座面のDIMENSIONは、やや後方に着座すると太ももが座面と干渉してしまった。これまで様々なショートノーズサドルを試す機会があったが、ショートノーズサドルの誕生直後に多くリリースされたフラットで大きな座面のモデル(POWERやARGOなど)は似たような感覚を受けてきており、DIMENSIONも近しい形状と言える。

DIMENSIONの最大の特徴は腰のサポート力が高いことだ。SCRATCH M5はパッドの存在を感じないほどニュートラルに動くのに対して、DIMENSIONはどのような力がかかってもパッドは動じない。そこにCPCが加えられることで、ガッチリとポジションを固定したペダリングで魅力を発揮するサドルに仕上げれられている。

DIMENSIONは前乗り気味でもしっかりとサポートしてくれる

ノーズ部分も幅が広く前方に着座しても腰のサポートはほぼ変わらない印象だ。急勾配の坂道でノーズに荷重をかけながらペダリングを行うときのサポート力とずり落ちない安心感は特筆すべき魅力と言っても過言ではない。これはロードライディングだけではなく、マウンテンバイクライドでも性能は発揮されるため、オフロードライダーにもチェックしてもらいたいサドルだ。

プロロゴはオフロードチームへのサポートも精力的に行なっており、MTB XCO U23ワールドチャンピオンのシモーネ・アヴォンデットを擁するウィリエール・ピレリや、アブソリュート・アブサロン、キャノンデール・ファクトリーレーシング、サンタクルズ・FSAなどワールドカップ表彰台でお馴染みのチームがプロロゴ製品を使用している。

自然なフィーリングでペダリングが行えるプロロゴのSCRATCH M5

ロードではUAEチームエミレーツ、バーレーン・ヴィクトリアスら6つのUCIワールドチーム、エオーロ・コメタらプロチームは7チーム、女子チームは5つもサポートを行なっている。現在はツール覇者タデイ・ポガチャルら、過去にはアルベルト・コンタドールやペテル・サガンらチャンピオンたちが使用してきたプロロゴの製品は、世界最高峰の舞台で鍛え上げられ、全世界のユーザーに届けられている。今回のテストではどちらのモデルも完成度が高く、おすすめしたいと感じるサドルだった。

このように数多くのプロチームとの関係を築けるのは、プロロゴのGMサルバトーレ・トゥルーリオ氏の手腕によるものだと、プロロゴ販売代理店の服部産業に勤めるキット北村氏は言う。キット北村氏は今春、3年ぶりのイタリア出張を行い、そこでプロロゴ最新の情報を得てきたのだとか。キット北村氏によるプロロゴ最新情報をお届けしよう。

プロロゴ本社訪問記 by キット北村

プロロゴを率いるサルバトーレ・トゥルーリオGM photo:Kitto Kitamura

プロロゴオフィスの外観はプロロゴ本社だとは分かりません!一番近くの地下鉄駅からプロロゴオフィスに向かう道中には巨大なFSAオフィスやコルナゴオフィスがあります。自転車産業が密集しているエリアなんですね。プロロゴのオフィスの壁に掲げられたBigオー(O)は、実はストップウォッチのデザインです。なぜかというと、プロロゴの名前の由来であるツール・ド・フランスのプロローグがタイムトライアルレースである事が多いからです。

そして典型的な南イタリアの陽気な性格のトゥルーリオ氏が率いるプロロゴには魅力的なスタッフが集結しています。2020年から2022年までアンドローニ・ジョカトリからジロ・デ・イタリアに出場し完走を果たしたシモーネ・ラヴァネッリさんがプロロゴにジョインしており、イタリアからの製品発送を担当します。ジロを完走した若手選手が就職先にプロロゴを選ぶところに、トゥルーリオGMの人脈を感じる。

マッティア・リボーニ&シモーネ・ラヴァネッリ photo:Kitto Kitamura
アリアンナ・ザッパ&グロリア・ルペルカリとキット北村 photo:Kitto Kitamura



発送業務はマッティア・リボーニさんも担当しており、シモーネさんはえらぶることなく『発送業務のエースはマッティアだよ!僕はアシストだからね。』と好印象な青年でした。そんな彼に『今度、一緒に走りに行こう!』と誘われたが、丁重にお断りしました。

プロロゴにはアンジェロおじさんという名番頭さんがいたのですが、定年延長再雇用期間も終わり昨年退職され、現在は若い女性2人がアンジェロおじさんの後を継いで四苦八苦しています!筆者・キット北村も輸入通関の件でアリアンナさんとグロリアさんには多大なる負担をかけております。

オフィスに掲げられるビッグO(オー)はストップウォッチデザインだ photo:Kitto Kitamura
プロロゴの倉庫は新しい倉庫管理システムの導入を始めた photo:Kitto Kitamura


新しいサドルフィッティングシステムを開発中 photo:Kitto Kitamura

そしてプロロゴの倉庫はコロナ以前よりも広く、新たな倉庫管理システムが導入されていました。まだ1棟しかありませんが、写真左奥に見える天井まで伸びたものが管理システムです。商品ナンバーと数量をシステム画面に打ち込むと、下から商品が出てきました。

また、プロロゴでは新しいサドルフィッティングシステムを開発中です!北村のアイディアも少し入れてもらうつもりです。

タデイ・ポガチャルをフィーチャーしたエリアも用意されている photo:Kitto Kitamura
ペテル・サガンもプロロゴを使っていた選手だ photo:Kitto Kitamura


オフィスには歴代チャンピオンのジャージと専用サドルが! photo:Kitto Kitamura

オフィスにはEFエデュケーション・イージーポストのジャージが! photo:Kitto Kitamura
EFエデュケーションの特別デザインジャージも飾られていた photo:Kitto Kitamura



プロロゴのオフィスには、語る必要の無い、歴代チャンピオン達のサイン入りジャージとチャンピオン専用のサドル達が並んでいます。実はキット北村現在、日本チャンピオンのUさんの専用サドルをデザイン中です。アジア人初のシグネチャーサドル、乞うご期待です!



プロロゴ SCRATCH M5 CPC
サイズ:250x140mm
レール:Tirox
重量:207g
価格:25,300円(税込)

プロロゴ DIMENSION CPC
サイズ:245x143mm
レール:Tirox
重量:195g
価格:25,300円(税込)

impression:Gakuto Fujiwara
photo:Michinari Takagi

Prologo Office Report:Kitto Kitamura
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