1級山岳で絞られた精鋭集団の中からアタックを成功させたルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ)が独走勝利。落車によって鎖骨を骨折した優勝候補の一角ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)はリタイアを余儀なくされた。


シストロンをスタートしていく選手たちシストロンをスタートしていく選手たち photo:A.S.O.

パリ〜ニース2018第6ステージパリ〜ニース2018第6ステージ photo:A.S.O.終盤に1級山岳コル=シュル=ルー(全長1.8km/平均10%)が登場するパリ〜ニース第6ステージ。コートダジュールに近いプロヴァンスの山岳地帯を走る198kmはアップダウンの連続で、4つの2級山岳をこなしてから1級山岳コル=シュル=ルーにアタックする。

獲得標高差2,700mの山岳ステージに136名の選手たちが挑んだ。ミラノ〜サンレモを見据えるナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)やジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード)が体調不良のためDNS。この日だけで11名がレースを去ることに。

誘導ミスで選手たちがコース外を走るトラブルに見舞われながら、先頭ではアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)やアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)、ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)を含む合計13名が逃げグループを形成。総合で1分しか遅れていないディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシング)を含む逃げは最大2分半のリードを得た。

連続山岳で山岳ポイントを稼いだファビアン・グレリエ(フランス、ディレクトエネルジー)が山岳賞ランキングでトップに立ち、「逃げ屋」デヘントが2ポイント差で続く。アスタナがコントロールするメイン集団が着々とタイム差を詰める中、先頭ではグレリエ、デヘント、トーマス・スクーリー(ニュージーランド、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、カルロス・バルベロ(スペイン、モビスター)、アマエル・モワナール(フランス、フォルトゥネオ・サムシック)の5名が逃げを継続した。

雪の残る山岳地帯を走る雪の残る山岳地帯を走る photo:A.S.O.
クイックステップフロアーズがメイン集団のペースを作るクイックステップフロアーズがメイン集団のペースを作る photo:A.S.O.逃げグループを率いるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)逃げグループを率いるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) photo:A.S.O.
アスタナを先頭に山岳地帯を走るメイン集団アスタナを先頭に山岳地帯を走るメイン集団 photo:A.S.O.

終盤にかけてメイン集団のペースを作ったのはチームスカイ。残り32km地点で総合リーダーのルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)がパンクするも、すぐにオマール・フライレ(スペイン、アスタナ)のバイクで再スタートして事なきを得ている。

ミッチェルトン・スコットがペースアップしたメイン集団は残り24km地点で逃げを吸収し、そのままハイスピードを維持して最後の1級山岳コル=シュル=ルーへ。登りが始まるとバーレーン・メリダやロット・スーダル(グライペルも!)、クイックステップフロアーズがペースアップを開始。急勾配の登りをジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)らを先頭で進んで行く。

総合2位ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)やアレクシ・ヴィエルモーズ(フランス、アージェードゥーゼール)のアタックは決まらず、頂上手前で加速したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)を先頭にハイスピードな下りに突入する。ちょうど1年前の第6ステージで勝利しているイェーツは「チームのおかげで力を使うことなく完璧なポジションから登坂開始。今日はとても脚の状態が良かった。決定的なアタックが生まれない中、タイミングを見つけてアタックした」とコメントしている。

イェーツを先頭に下りを進んだ20名弱の精鋭集団。すると、下りコーナーを見誤ったプールスがオーバーランして激しく落車する。プールスは再スタートすることができずにその場でリタイアとなった。X線検査で左鎖骨の骨折が判明したプールスは「下りのコーナーで踏ん張れずに落車。これも人生といえば人生だけど、とても状態が良かっただけに残念でならない。タイムトライアルで結果を残したことがせめてもの慰め。治療についてドクターと話し合いたい。そしてセルジオ(エナオ)がチームの使命を果たしてくれることを願っているよ」と語っている。

ステージ後半にかけてチームスカイがメイン集団を牽引ステージ後半にかけてチームスカイがメイン集団を牽引 photo:A.S.O.
残り6kmからアタックしたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)にティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が合流残り6kmからアタックしたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)にティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が合流 photo:A.S.O.

フィニッシュに向かう登りで再度アタックしたイェーツにはティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が追いついて2人で先行開始。しかしヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)が献身的に引く精鋭集団によって残り3km地点で吸収される。10名に絞られた精鋭集団の中からルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ)やヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)がアタックを繰り返した。

残り1.5kmを切ると、モラールが3回目のアタックを成功させる。ビッグネームたちが牽制する隙をついてリードを広げたモラールが独走開始。2012年から5年間コフィディスに所属し、2017年からFDJで走る28歳が2秒差で精鋭集団を振り切った。

「グルパマFDJにステージ2勝目をもたらすことができて最高の気分。(15kmほどしか離れていない)アンティーブに住んでいるので、コースを知り尽くしていた。パリ〜ニースのコースが発表された時、しかも自分向きのコースだったので興奮したよ。1級山岳コル=シュル=ルーで自分から動く必要はなくて、ただライバルたちに食らいつけばチャンスがあると思っていた。スプリントでは勝機がないので、フィニッシュ手前でアタックする作戦だったんだ。何回かのアタックの末に飛び出せてよかった」とキャリア初のUCIワールドツアーレース勝利を飾ったモラールは語る。軽量なクライマーとして知られるモラールは2017年のラ・フレーシュ・ワロンヌで8位に入っている。

振り返って後続の位置を確認するルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ)振り返って後続の位置を確認するルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ) photo:A.S.O.
集団を振り切ったルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ)集団を振り切ったルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ) photo:A.S.O.

「今年のパリ〜ニースはチームにとってもフランスにとっても良い大会になっている」というモラールの言葉通り、今大会6ステージ中4ステージでフランス人選手が優勝。グルパマFDJは初日のアルノー・デマール(フランス)に続く2勝目だ。

「バイク交換してくれて、全力でサポートしてくれたチームメイトたちに感謝している」と語るのはリーダージャージを守ったサンチェス。フライレのバイクに乗り、タイムを失うことなくフィニッシュにたどり着いた。重要なクイーンステージを前にサンチェスは「好調だったワウト・プールスのリタイアは残念だ。明日の山頂フィニッシュでは、強いチームとモチベーションをもっているエステバン・チャベスが危険な存在になると思う。自分もヤコブ・フルサングをはじめとする強いチームメイトに守られているので、明日も総合首位を守ってみせたい」とコメント。プールスのリタイアによってアラフィリップが22秒差の総合2位、マルク・ソレール(スペイン、モビスター)が26秒差の総合3位に浮上している。

キャリア最大の勝利を手にしたルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ)キャリア最大の勝利を手にしたルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ) photo:A.S.O.総合首位を守ったルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)総合首位を守ったルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) photo:A.S.O.

パリ〜ニース2018第6ステージ結果
1位 ルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ) 4:40:05
2位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 0:00:02
3位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)
4位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
5位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ)
6位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシング)
7位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
8位 エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)
9位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)
10位 セバスティアン・エナオ(コロンビア、チームスカイ)
個人総合成績
1位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 22:25:33
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 0:00:22
3位 マルク・ソレル(スペイン、モビスター) 0:00:26
4位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) 0:00:34
5位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 0:00:35
6位 ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) 0:00:42
7位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 0:00:45
8位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ) 0:00:46
9位 エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) 0:00:48
10位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:54
ポイント賞
1位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) 31pts
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 28pts
3位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 23pts
山岳賞
1位 ファビアン・グレリエ(フランス、ディレクトエネルジー) 31pts
2位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 29pts
3位 ジェローム・クザン(フランス、ディレクトエネルジー) 25pts
ヤングライダー賞
1位 マルク・ソレル(スペイン、モビスター) 22:25:59
2位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) 0:01:07
3位 フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:01:18
チーム総合成績
1位 ミッチェルトン・スコット 67:19:39
2位 バーレーン・メリダ 0:04:09
3位 モビスター 0:05:50
text:Kei Tsuji
photo:A.S.O.

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