スペシャライズドがエンデュランスロードのRoubaixをフルモデルチェンジ。フロントのコラム内蔵サスペンション"Future Shock"が3世代目にバージョンアップ。更にスムーズな乗り心地を実現すると同時に、より軽く、エアロになり、速く遠くへどこまでも走っていけるバイクへと進化した。



スペシャライズド Roubaix SL8 (c)スペシャライズド・ジャパン

スペシャライズドのエンデュランスバイク、いやエンデュランスバイクというカテゴリーそのものの象徴的な存在として君臨し続けてきたRoubaix。世界一過酷なワンデーレースとして知られるパリ~ルーベをルーツに持つエンデュランスバイクが、更なるキャパシティを持つオールロードとして進化を果たした。

スペシャライズド初のフルカーボンバイクとして生まれた初代Roubaixから20年。Smoother is Faster(スムースさ=速さ)というコンセプトを掲げ、振動吸収性を高めるための様々なメカニズムを盛り込み、常にカテゴリーに新たな風を吹き込んできた。

スペシャライズド初のフルカーボンバイクとして生まれた初代Roubaixから20年目。あらゆる性能に磨きをかけた最新作が登場した (c)スペシャライズド・ジャパン

中でも大きな転換点となったのが2016年。ステアリングコラムに内蔵されたサスペンションの"Future Shock"やシートクランプを下げることでシートポストのしなりを大きくする"ドロップド・クランプデザイン"という2つのテクノロジーを搭載し、快適性を圧倒的に向上させることに成功した。

第3世代へと進化したFuture Shock

Roubaixを一段上の存在へと押し上げたFuture shockが3世代目へと進化した (c)スペシャライズド・ジャパン

そんなRoubaixが、1度のモデルチェンジを挟みつつ最新世代のSL8へとフルモデルチェンジを果たすことに。全方位に進化した今作だが、最大のポイントとなるのが近代RoubaixのコアテクノロジーでもあるFuture Shockのバージョンアップだ。

ついに3世代目へと進化したFuture Shock、その最大の特徴は調整機能の拡大だ。初代には一切調整機構は無く、油圧ダンパーがついた2世代目にはロックアウト機構が搭載され、その機能を拡充してきたFuture Shockだが、今世代ではスプリングレートを調整可能となった。

ケーブルは外装式となる。ステムを外しやすく、スプリングへのアクセスも容易だ (c)スペシャライズド・ジャパン

ハード、ミディアム、ソフトという3種類のスプリングを交換することで、自分のライディングスタイルやコースの特徴に応じて最適な動きを実現できるように。より機敏な反応性を求めるライダーやスムーズな路面が多いコースであればハードを、より快適なライドを求めるライダーや荒れた路面やグラベルを目指すのであればソフトを、というように、スプリング交換によってバイクのキャラクターを調整可能となった。

スプリングの交換は、ステムを外すことで容易にアクセス可能となっているので、コースに合わせたセッティングも行いやすいはずだ。ストロークは20mmとなるが、ワッシャーを追加することでプリロードを5段階調整できる機能も追加されている。プリロードを掛けることで、動き出しにかかる初期の入力量を調整することが可能となり、より細かなセッティングが可能となった。更に前作から耐久性を大きく向上させたことも大きな特徴だ。ブーツの厚みを増やし、シールを追加することで、Future Shock史上最も耐久性に優れたショックへと進化した。

石畳をもものともしない衝撃吸収能力を発揮する (c)スペシャライズド・ジャパン

3世代目のFuture Shockには、"3.3"、"3.2"、"3.1"という3グレードが用意される。それぞれ搭載されるグレードが異なり、3.3はS-Works および Proに、3.2はExpert および Compに、3.1はSport 105 および ベースモデルとなるRoubaix SL8にアセンブルされる。

3.3と3.2には油圧ダンパーが搭載される一方、3.1はダンパーレスとされる。3.3と3.2の違いとなるのはダンピングの調整機能の有無。3.3ではFuture Shock初となるコンプレッション(圧縮方向)ダンピングの調整が可能となり、走行中に路面に合わせた減衰特性のコントロールが可能となった。

ライダーへのインパクトをライバルバイク比で53%に減衰 当代きってのスムースバイクに

リアセクションの突き上げをいなすAfter Shock (c)スペシャライズド・ジャパン

フロントのFuture Shockと並び、Roubaixの優れたライドクオリティを担保するのがリアセクションの突き上げをいなすAfter Shock。これは、後方へとしなりやすいようにカーボンの積層を調整された"Pave"シートポストと、通常のフレームデザインから65mm以上下方にシートクランプを設ける"ドロップド・クランプデザイン"という2つの要素から成り立つテクノロジ―で、一言で言えばシートポストのしなり量を積極的にコントロールすることでシッティング時にライダーを突き上げから切り離す役割を担っている。

この、シートポストを大きくしならせるというアイディアは、同社のグラベルロードであるDiverge STRにも受け継がれているもの。ただ、オンロードをメインターゲットとするRoubaixにおいては、ダンパーが必要になるようなDivergeレベルのストロークは必要ではなく、ペダリング効率と快適性をバランスさせたしなり量に設定されている。

一般的なデザインから65mmもシートクランプを下げたドロップドクランプデザイン (c)スペシャライズド・ジャパン

この2つのテクノロジーがもたらす振動吸収性は世界でトップレベルにあると、スぺシャライズドは胸を張る。社内のライドサイエンスチームによって実施されたテストでは、サイクリング中によく遭遇するような荒れた路面を再現した高さ22mmの連続するバンプを32km/hで走り、ホイールとハンドルに伝わる衝撃を計測。重力加速度で表現すると、ライバルバイクの中で最も優れたバイクでも24Gだったのに対し、Roubaixは10G程度、つまりライダーに伝わる衝撃は53%ほどに減衰されるということを示す結果が出たという。

スムースネスだけでなく、より軽く、エアロに。

TarmacやAethosの開発で得た知見をフィードバックされている (c)スペシャライズド・ジャパン

世界最高レベルのスムースネスを実現したRoubaixだが、スぺシャライズドはそれで満足することは無かった。世界最速のレーシングバイクとしてTarmacを開発した際のアプローチから、バイクの形状を最適化することで、よりエアロなバイクへと進化した。

最初に風に当たるバイクの先端形状を改良すると同時に、フォークやダウンチューブ形状をブラッシュアップ。そしてシートステーをさらに低い位置に配置することで、前作から空気抵抗を4W低減できたという。これは、パワーウェイトレシオ3W/kgで160kmを走った際に17.7秒、100kmだと11秒速くなるとスぺシャライズドは言う。

先代から多くの要素を受け継ぎつつ、細部をブラッシュアップしている (c)スペシャライズド・ジャパン

更に、Aethosで得た経験をフィードバックし、フレームの圧倒的な軽量化を実現。フレーム形状が力の伝達に及ぼす影響へのより深い理解をもとに、多くの剛性レイヤーを省くことに成功した。ダウンチューブの形状や、シートチューブおよびヘッドチューブとの接合部から材料を大幅に削減。シートチューブやBB周辺の重量を削減しFact12rカーボンを用いることで、より軽く優れたライドクオリティを実現した。

具体的な数値としては、このカーボンレイアップの最適化により、フレームセットで50g以上のダイエットを果たした。完成車として見ると、S-Worksグレードでは7.3kgと、エンデュランスバイクというカテゴリーの中では非常に軽量なバイクに仕上げられている。

よりワイドなタイヤ、多彩なマウントが拡げる可能性

よりワイドなタイヤを装着可能となった (c)スペシャライズド・ジャパン

今回のモデルチェンジは、ライドクオリティという縦軸だけでなく、より多用途なマルチロールバイクとして、その役割を広げるアップデートも施されている。最もわかりやすいのが、タイヤクリアランスの拡大だろう。今作では38c/40mm幅のタイヤを装着できる空間を確保。スぺシャライズドのタイヤでいえば、32mmのMondoタイヤを念頭に設計されているが、更に走破性に優れた38cのPathfinderとの相性も抜群。

一方で、ロードタイヤであるTurbo28cを組み合わせても、違和感なくキビキビ走る俊敏性も発揮する。これまでのエンデュランスロードとしての立ち位置から脱皮し、オールロードバイクとして舗装路だけではなくオフロードですら走破出来るキャパシティを身に着けた。

3つのボトルケージ台座、トップチューブマウント、フェンダーマウントを備える (c)スペシャライズド・ジャパン

より太いタイヤに対応すべく、ジオメトリも改良されている。太いタイヤを履いたときもつま先がぶつからないようにフロントセンターを約10mm延長。エンデュランスジオメトリ―として、手や腕、肩の圧迫を経験する一体感の高いポジションを可能としている。より短いリーチ、高いスタック、より寝たヘッドチューブやロングホイールベース、そしてより大きく取られたBB下がりと、安定感に優れたジオメトリーは前作から受け継いでいる

バイクが想定するフィールドの拡大は、マウント類の増加という形でも表れている。通常のダウンチューブとシートチューブに加え、BB裏という3か所にボトルマウントを備えるうえ、トップチューブマウントも設置。悪天候でも走れるようにフェンダーも装着可能。アドベンチャーバイクと十分に名乗れる拡張性を手に入れた。

国内展開は5種の完成車とフレームセットで。30万円を切るモデルも登場
スペシャライズド Roubaix SL8 (c)スペシャライズド・ジャパン

現代のエンデュランスロードとして、正統進化を果たしたRoubaix SL8。国内では、S-WORKS ROUBAIX SL8を筆頭に、ROUBAIX SL8 EXPERT、ROUBAIX SL8 COMP、ROUBAIX SL8 SPORT 105、ROUBAIX SL8の5つの完成車、そしてS-WORKS ROUBAIX SL8のフレームセットが展開される。

フレームはS-WORKSグレードのみFACT12r、それ以外はFACT10rカーボンを採用。Future shockは、S-Worksにコンプレッションダンピング調整が可能な3.3が、ExpertおよびCompには油圧ダンパー搭載の3.2が、Sport 105 およびRoubaix SL8にはスプリングのみの3.1がアセンブルされる。価格および搭載パーツなどは下記表を参照してほしい。

Roubaix SL8は、貴方の世界を拡げてくれるだろう (c)スペシャライズド・ジャパン
モデル名 Future shock フレーム コンポーネント 価格
S-WORKS ROUBAIX SL8 FS3.3 FACT 12R スラム Red eTAP AXS 1,738,000円 (税込)
S-WORKS ROUBAIX SL8フレームセット FS3.3 FACT 12R 737,000円 (税込)
ROUBAIX SL8 EXPERT FS3.2 FACT10r スラム Rival eTAP AXS 770,000円 (税込)
ROUBAIX SL8 COMP FS3.2 FACT10r シマノ 105DI2 R7170 495,000円 (税込)
ROUBAIX SL8 SPORT 105 FS3.1 FACT10r シマノ 105メカニカル R7100 385,000円 (税込)
ROUBAIX SL8 FS3.1 FACT10r シマノ TIAGRA 297,000円 (税込)