自転車が国技のベルギーに拠点を構えるリドレーが2024年モデルの展示会を開催した。来期はロードバイクの主要モデルHELIUM、NOAH、FENIXにミドルグレードが登場し、サイクリストの選択肢がより拡がるラインアップとなった。新型のオールロードGRIFNなど会場に集まったバイクを紹介しよう。



トップエンドのNOAH FASTなどもカラーがブラッシュアップされている

ロンド・ファン・フラーンデレンなど名だたる春のクラシックレースを有し、自転車競技が国技とも言われるベルギー。選手や観客のみならず、自転車関連の企業も熱心にレースへコミットし、世界に名を轟かせるブランドを輩出している。

その一つがバイクブランドのリドレーだ。クラシックレースをアイコニックな存在にする石畳でテストを行い、走行性能を鍛えることで、舗装のひび割れなどで不安定な舗装であっても性能を発揮するバイクを実現。そのリドレーの2024モデルが、ミズタニ自転車の主催する展示会で一堂に集結した。

ミドルグレードのNOAH DISCが新たに登場する

NOAHやHELIUM、FENIXという定番ロードが数多く並ぶ会場に足を踏み入れると、ラインアップの充実度合いが一目で伝わってくる。カラーバリエーションが増えたことに加え、NOAH FASTとHELIUM、FENIXにミドルグレードが登場したため、並ぶ台数が増えたのだ。

モデル名はいずれもシリーズ名のみというシンプルな名称となっているリドレー。ミドルグレードはトップエンドと同一のフレーム金型を使い、カーボン素材を変更するアレンジを加えたモデルだ。

定番ロードに待望のミドルグレードが登場

カレブ・ユアンのスプリントを支えるNOAH DISCは、フラッグシップモデルが採用するエアロダイナミクスがそのまま生かされているため、平地を飛ばしたいライダーにはピッタリ。フレームセットの価格は462,000円(税込)で、ミズタニ自転車が展開するバイククラフトにも対応しているため、シマノコンポーネンツでお得に組み上げることが可能となっている。

オールラウンドな性能が発揮されるHELIUM DISC

HELIUM DISCは軽量オールラウンダーのエッセンスをそのままに、価格を抑えた1台となっている。そのため走る場所を定めず、山や平地と路面を選ぶことなくサイクリングを楽しみたい人におすすめ。フレーム価格は352,000円(税込)で、バイククラフトでシマノ105 DI2をチョイスすると535,700円(税込)という価格になる。ここからハンドルやサドル、ホイールなどを買い足す必要があるが、2台目として考えている場合であっても良き選択肢となるだろう。

FENIX DISCは唯一完成車での販売となり、価格は517,000円(税込)。コンポーネントはシマノ 105 DI2で、ホイールはシマノのWH-RS171、タイヤはヴィットリア Rubino Pro、サドルはセッレイタリア XRで構成されている。人気が高いFENIXシリーズのミドルグレードだけあり、ロングライド派ライダーの走りを支えてくれる。

完成車で販売されるミドルグレードのFENIX DISC

これら3モデル(NOAH、HELIUM、FENIX)は定番のトップモデルも揃っており、これまでのリドレーでも珍しい特徴的なカラーリングが施されている。ロゴも刷新されているため、リドレーの最新モデルが気になる方は既存モデルも含めてチェックすると良いだろう。

無限の可能性を秘めたGRIFNが日本上陸

そして本国では発表済みだった新型モデルがついに国内でもラインアップされることに。モデル名はGRIFN(グリフィン)。エンデュランスレーサーであるFENIX、グラベルはKANZOシリーズで手厚くカバーするリドレーが、オールロードに位置付けられたGRIFNを初公開した。

オールロードとして新たにラインアップに加わったGRIFN

その枠はFENIXが担っているかのように思えるが、FENIXのタイヤクリアランスは28Cとレーシングモデルのアイデンティティがそのまま維持されている。レースシーンでも28Cが標準となり、実測30mmに到達する流れの中で28Cという設定はレーシングモデルと言って差し支えはないだろう。

そんな中登場したGRIFNの装着可能なタイヤ幅は、最大38Cまで。いわゆるエンデュランスロードという枠組みにも収まりつつ、グラベルも視野に入るような絶妙な塩梅となっている。かつて「38Cこそグラベル」と言われた時代もあるが、40C以上のタイヤが標準となりつつあるグラベルシーンにおいて、最大38Cはライトグラベルまでカバーできるような設定となる。

シートポストは丸型が採用されている

タイヤクリアランスは最大38Cに設定されている

もちろんタイヤ幅によって走行エリアが決まるわけではないため、38Cでグラベルを楽しみたく、ロードでの走りも犠牲にしたくないライダーには選択肢の一つとなる。またストレージ装着のためのアイレットも多く設けられていたり、ハブダイナモ用のラインを通すホールも用意されているため、アドベンチャー的な走りにも合わせられるようになっている。フロントディレイラーはバンド式になっているため、フロントシングルとダブルどちらにも対応できる。

ジオメトリーもFENIXよりもホイールベースを伸ばしているため、よりリラックスしたポジションが可能となる。自動車で言うところのSUV的なポジションに位置しているため、GRIFNで遊べる場所はライダー次第。ロードライドの可能性を広げてくれるような1台が、この度ついに発売される。

トップチューブストレージ用のアイレットも備えられている

ダウンチューブのアイレットは3つ仕様

モデルチェンジを果たしたKANZO Adventureに注目

グラベルバイクもラインアップが若干変更されている。レーシングモデルとしてスピードを追求したKANZO FASTはそのままで、カタログから落ちたKANZO SPEEDの位置を新登場したGRIFNが担う形になっている。そしてKANZO Advebtureは全く新しいモデルとなり、昨年までラインアップされていた同名バイクはKANZO Adventure 1.0と名称が変更され、そのまま展開し続ける。

つまりKANZO Adventureは実質2.0ということになり、モデルチェンジを果たしたことになる。新型はマウンテンバイクのようなジオメトリーを採用し、テクニカルなグラベルでのコントロール性を強化したことが特徴。砂利道が続くようなシチュエーションではなく、林間を走りぬけることの多い日本のグラベルライドにはうってつけだろう。

マウンテンバイクのようなジオメトリーとなったKANZO ADVENTURE

2.1インチのタイヤを飲み込むクリアランスに設定されている
チェーンステーは大きくオフセットしている



タイヤ幅も53mmまで対応しており、29erホイールの場合では2.1インチのタイヤまで装着が可能。またアイレットが非常に多く設けられているため大荷物を積載することができ、その仕様でもワイドなタイヤによって安定性が保たれるよう作られている。

他にもKANZO Aはフロントフォークがアイレット付きの物に差し替えられるなど、リドレーのブランド全体で荷物を積載したサイクリングへの適用が窺える。またシクロクロスのX-NIGHT SLはプロ選手が使用する軽量トップエンドのみが展開され、ヨーロッパのレースで結果を残すバイクがフレームセットで販売される。

KANZO ADOVENTURE 1.0として継続してラインアップされる

フォークがアイレット装備モデルに差し替えられたKANZO A(アルミモデル)

シクロクロスバイクにも定評のあるリドレーのX-NIGHTは軽量モデルの展開となる

リドレーの新型バイクといえば、ツール・ド・フランスでその姿を見せたプロトタイプのロードバイクとTTバイクが注目された。残念ながら今回の展示会での実車チェックは叶わなかったが、世界最大の自転車レースに投入されたということは即ち完成間近という意味。つまり、今後もリドレーからの情報は見逃せない。

text&photo:Gakuto Fujiwara
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